二冊以上持っている本 ――最初は、リアン・アイスラーの『ゼロから考える経済学』――
二冊以上持っている本
――最初は、リアン・アイスラーの『ゼロから考える経済学』――
自慢ではありませんが、かなり多くの本を持っています。(これって「自慢」なのですが、でも持っている本全てを棺の中には入れて貰えませんからどこかで整理しておかなくてはなりません。その手間を考えると、とても自慢にはならないのも事実なのです。)
仕事柄必要な本、純粋に楽しむための本、貰った本、義理があって購入したもの等、とにかく冊数ではそんじょそこらの本屋さんには負けないかもしれません。冊数は数えたことがありませんが、万の単位にはなると思います。
それに、これも仕事に関連した多くの書類も取ってあります。捨てるべきものと取っておくべきものをいつか選別したいのですが、そのための時間がなかなか取れません。
沢山の本がある理由の一つは、かなりの本について同じ本を何冊かずつ所有しているからです。整理が悪くて、必要な時に必要な本が見付からず、それならもう一冊買ってそれを使おうという切羽詰まって再度買ってしまった場合もありますし、この本はできるだけ多くの人に読んで貰いたいという気持から、贈呈用に何冊か買っておいた本もあります。もちろん、前に買ったことを忘れていて、面白そうだと思ってまた買ってしまったものもあります。
このシリーズでは、たくさんの人に読んで貰いたいと思って何冊か買い込み、機会があると友人たちに配っていた本の何冊かを御紹介して行きたいと思います。中でも、『The Better Angels of Our Nature』は、一番熱心に勧めてきましたが、何しろ大部ですので買って配るより、内容を様々なところで紹介することが中心になりました。これから御紹介するのは、ボリュームも内容もそれよりもう少し手頃な本なのですが、何度かお付き合い下さい。
今回御紹介するのは、リアン・アイスラー著の『ゼロから考える経済学』です。原題は『The
Real Wealth of Nations』、直訳すると、「本当の国富論」です。内容は経済学の範疇を超えていますので、直訳のタイトルの方が好きですが、内容は、これまでの経済学の依って立つ枠組みを見直して、新しい経済学を創ろう、それは「caring economics」つまり、人に優しい、さらに人を中心にした枠組みの中での経済学だ、という随分ラディカルなものです。
まず、これまでの経済学が、縦社会構造という枠組みの中で考えられ、その枠組み自体は変革の対象にはしてこなかったこと、その結果として、社会を捉える視野が限られたものになり、社会の持つ複雑さや多様さ、そして未来を創り出す上で大切になるエネルギーの源等を対象にできなかった事実が説得力を持って示されます。これまでの経済学にはいくつかの流派があります。例えば資本主義、社会主義、共産主義ですが、これらの全てが、「支配-被支配」という関係性だけに注目していることがその限界だという指摘がなされています。
それに対して、人間社会を、パートナーシップという関係を元に見直し、その全体像が浮び上るような経済学を構築する必要性が説かれます。その経済学の特徴は「caring」あるいは「care」という言葉で表されますが、「優しい」「思いやりのある」「世話をする」といった姿勢を人間関係の基本的な価値として認めている点が特徴です。
それだけではなく、新たな経済学が、これまでは無視してきた、しかし大切な人間活動のどのような分野を対象にするのかについても具体的な提案をしています。
新しい経済学は次のような人間的活動についての学問になる。
中核分野 家事経済
第二分野 無報酬の地域(コミュニティー)経済
第三分野 市場経済
第四分野 違法経済
第五分野 政府経済
第六分野 自然経済
現在の経済学が対象にしているのは第三分野の市場経済だけなのですが、人間社会全体を視野に入れると、その他の五つの分野がとても大切だということがデータとともに提示されています。
この本の中でもう一つ感動的なのは、そのデータの多くが市民たちの手によって集められまとめられたものであること、さらに、国連の専門機関がルーチンとして集めているものだということです。
つまり、国連そのものが既に「caring economics」の価値観を自分たちの組織の運営原則として採用しているに等しい活動を行っているということです。毎日のニュースだけを見ると、絶望的になりかねない昨今ですが、どっこい、人類全体としては素晴らしい未来のための地道な活動もしっかり行われているということなのです。
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 4.26チェルノブイリデー その2 | トップページ | 引き戸が滑らかに動くようになりました ――引き戸の下部のねじを調整するだけです―― »
「学問・資格」カテゴリの記事
- #アリストテレス と #トマス・アキナス に #激励されました ――#昔 #国会議員 の #勉強会 で―― (2024.01.25)
- #政治と政治学のあいだ #出版記念トーク ――#1月27日 #県民文化センター5階 #サテライトキャンパスひろしま #14時から―― (2024.01.19)
- 姉妹公園協定のために投下責任を「棚上げ」? ――「棚上げ」して、誰が得をするのか?―― (2023.09.26)
- 大学のブラック・ビジネスはいつ終わるのか ――入学しない人から入学金を取るのは止めるべきでは―― (2023.03.28)
- 免許証の更新をしてきました(2022.10.21)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- #モンブランインク ――#奥が昔のデザイン #手前が新しいもの―― (2024.07.12)
- #眼鏡を新調しました ――#フチなしをやめて #ボストン型にしました―― (2024.07.11)
- #ダメなものはダメ ――#社会には #最低限の常識 #というものがあります―― (2024.06.12)
- #青梗菜 の #収穫 と #料理 ――#農薬を使っていませんので #虫食いです―― (2024.06.11)
- #抜き取った雑草の量はどう量るか? ――#10リットルバケツ、そして米袋です。―― (2024.06.10)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- #コロンブス問題 (その5) ――#板坂元氏の #無知論―― (2024.06.20)
- #コロンブス問題 (その4) ――#広い視野から #コロンブスを見よう―― (2024.06.19)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #定説でも #憲法99条 は #法的義務 ではない ――#法の支配 は #空文化 されているのでは?―― (2024.03.02)
- #加藤友三郎 #英文冊子 #完成記者会見 を #中国新聞が記事に してくれました ――友三郎を理解する人の輪が広まります―― (2024.02.29)
« 4.26チェルノブイリデー その2 | トップページ | 引き戸が滑らかに動くようになりました ――引き戸の下部のねじを調整するだけです―― »
コメント