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2017年4月12日 (水)

かき船問題を考える―その4

「かき船かなわ」は、建築物

   なぜか「船」と主張する広島市

 

広島市が、「景観審議会は必要ない」とする根拠として「『かき船』は建築基準法による建築物ではない」という理由を挙げています。今回は、本当に「『かき船』が建築物でない」と言えるのかを検証してみたいと思います。

 

広島市も言っていますが、旧建設省(現国土交通省)は、2度にわたって「従来より、建築基準法第2条にいう『土地に定着する』状態とは、単に陸地で土地に強固に結合された状態のみならず、水面、海底等に定常的に桟橋や鎖等で定着された状態を含むものであるとする判断が確立しており」とする「海洋建築物の取り扱いについて」という通達を出しています。

これを素直に読み取れば、問題となっている「かき船」が、建築物であることは明らかだと思います。

 

ところが広島市は、次のような理由を挙げて、「かき船は建築物でない」と言い張っているのです。

「事業者が提出して計画によって『随時かつ任意に移動することが可能」だとし、さらに「業者から提出された計画内容」として次の三つを挙げています。

 

 ロープ、碇が容易に取り外し可能

 

 給排水等のインフラ設備等は、容易に着脱可能

 

 随時かつ任意可能な状態を確保するため、定期的(年1回程度)に離岸させ、その報告を行う。

 

Photo                        建築物にしか見えない

この広島市の理由を検証してみたいと思います。

 

まず「随時かつ任意に移動可能」ということに大きな?がつきます。そもそもこの「かき船」は、浮揚した状況でなければ、移動できないのですから、「随時」(いつでも)というのには無理があります。さらに「かき船」が浮揚している時間は、ごく限られています。残念なことに広島市は、どういう条件になったら浮揚するかに関心がないようです。私たちの問いに答えないのですから、あきれてものも言えないきもちです。

 

1                             この状態では、動かない

私たちの調査によれば、広島湾の潮位が、330cmを越えなければ「かき船」は浮揚しません。広島市は言葉を濁していますが、国土交通省海事局検査測度課は、「提出された図面及び現物の検査結果から、水面が船底から約1.85メートル程度の高さで浮揚することがわかる」としており、私たちの調査とほぼ合致しています。

 

広島湾の潮位表をご覧になればわかりますが、満潮時であっても潮位が330cmを超えることは、ひと月の満潮時(1日に2回ある)でも、10回をわずかに超える回数で、しかも1回の満潮時でもそれを超えるのは、2~3時間程度です。このことからもとても「随時」と言えないことは明らかです。

 

 

次に「業者から出された計画内容」を検証してみます。①,②の計画は、その通りの構造になっています。問題は、③の「定期的(年1回程度)の離岸」です。

 

業者は、広島市に対し2014年8月29日に「『かき船』係留レストラン船 離岸作業に関する説明書」を提出しています。そこに示された「離岸作業の手順」は、次のようになっています。

 

31

                            前後の係留用鋼管杭が抜けますか

①離岸のため、曳航用ボートを準備②ライフラインを取り外す③係連橋を取り外す④係留チェーン(4本)を取り外す⑤係留用鋼管杭を取り外す⑥ボートによる離岸及び曳航作業

 

繰り返すようですが、これは業者が提出した「離岸作業に関する説明書」です。

 

「業者が提出された計画内容」が、「かき船は建築物でない」という根拠ですなら、この計画書通りの作業が行われるのは当然のことです。ところが、かき船が営業を始めて1年半以上が過ぎましたが、そして私たちが広島市と業者に対し「る計画の実施」を要望したにもかかわらず、上記の離岸作業は一度も実施されていません。

 

それどころか広島市は、最近では「インフラ設備等が着脱可能であることが確認できればよい」というのです。なぜか通達でいう「桟橋」には触れていないのです。

Photo_2                            強固につながれた桟橋で定着している

 

「定期的に離岸させる」という約束はどこにいってしまったのでしょうか。この「定期的な離岸」は、市議会でも答弁しています。そこでは「インフラの着脱が確認できれば良い」とことは、一度も示されていません。ところがいつの間にか「離岸作業」が「インフラの着脱の確認」だけで済むことになっています。公(議会答弁、市民への情報公開)に示していたことを、説明がつかなくなったからと言って勝手に変更することは許されません。

 

業者がしめした「離岸作業説明書」に対して、さらに条件を厳しくすることがあっても、条件を緩やか(というよりいい加減)にすることなど、行政の仕事として普通には考えられないことです。今話題の例の問題ではありませんが、どこかから大ちな力が働いたのでしょうか。

 

この二つだけでも、広島市が言う「『かき船かなわ』は建築物でない」という主張に問題があることは、明白です。

 

もちろん「かき船」の基本的な問題は「世界遺産原爆ドームのバッファゾーンにふさわしくない」ということです。

 

しかし私が、それと同等はむしろそれ以上に問題だと思っていることは、「かき船移転・新設」問題の経過の中に、国やとりわけ広島市が、もあまりにもずさんな手続きによってこの計画を進めてきたことです。それも市民の声が全く無視され続けてです。

 

それぞれが少し長くなりましたが、今回4回にもわたって「かき船問題」の問題点を訴えたのは、このことが理由です。

 

これを機会に一人でも多くの皆さんにこの問題に関心を持っていただければ幸いです。

 

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