高校同窓会での講演 ――毎月一度、濃い内容の話を聴く機会があるのは羨ましい限りです――
――毎月一度、濃い内容の話を聴く機会があるのは羨ましい限りです――
十日は、高校同窓会の関東地方に住む人たちのグループが月に一度開催している交流会での講演でした。数年前にも話をさせて頂きましたが、講演後のコメントやその後の個人的な交流も刺激に満ちていてとても勉強になりました。
今回の出席者は50人ほどで、タイトルの「日米の憲法を軸に『核なき世界』を展望する」、特にオバマ、トランプ両氏の比較も含めたことに関心を持って頂けたのではないかと思います。同窓会と言っても、一学年だけあるいは一クラス毎の同窓会ではなく、全学年共通の組織ですので、10日の出席者の最高齢は92歳、そして一番若い世代の代表は34歳のカップルでした。
オバマ大統領の広島訪問の意味を手短にまとめ、「原爆投下が正しかった」というアメリカの世論が大きく変った理由の一つとして、大統領の持つ「絶対性」を指摘しました。
そしてその「絶対性」は何に由来しているのかを考えると、一つには大統領が直接有権者の投票で選ばれること、強大な権力を持っていることに加えて、就任の際に国民に向かって、憲法を遵守する旨の「宣誓」を行うことが挙げられるのではないかという問題提起を行いました。その点については既に触れていますので、再度お読み頂ければ幸いです。ここで鍵になっているのは、「宣誓」すること、そして「宣誓」の言葉も憲法で定められていることです。
日本の場合、憲法99条は憲法遵守を義務として課しています。念のため99条の条文を引用しておきましょう。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
さらに我が国の総理大臣にはそれほど大きな権威がないように見えますが、それは総理大臣が就任時に国民に対しての「宣誓」をしないことにも関係があるのではないかと考えてきました。それは天皇が即位の際に、国民に対して憲法遵守をします、という「宣誓」をしていることと対照的です。「即位礼正殿の儀おことば」(1990年11月22日)を引用します。下線の部分に注目して下さい。
さきに、日本国憲法及び皇室典範の定めるところによって皇位を継承しましたが、ここに即位礼正殿の儀を行い、即位を内外に宣明いたします。
このときに当り、改めて、御父昭和天皇の六十余年にわたる御在位の間、いかなるときも、国民と苦楽を共にされた御心を心として、常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓い、国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。
では、なぜ総理大臣は国民に対して「宣誓」をしないのでしょうか。その理由を次回考えたいと思います。
もう一つ報告しておきたいのは、講演の後、同じ学年だった10人ほどの同級生と一緒に、講演についてまた政治や社会の問題について話をする機会があったことです。大学生になる息子も参加させて貰いましたが、とても良い勉強の機会になったように思います。
同級生たちです
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コメント
秋葉さん
昨日は講演や会食でお忙しい中、千葉にも来てくださって嬉しいです。
オバマ大統領の権威が憲法の遵守を宣誓することによっているということは納得できました。
ただ、日本の総理大臣が憲法を守る宣誓をしないということを、同じまな板にのせる形で比較することはどうなのでしょうか?少し違和感を持ちました。
「根井洋子」様
コメント有り難う御座いました。日本の総理大臣が国民に向かって宣誓をしないことについて今日、続きの説明をしましたが、気持としてはやはりアメリカの大統領のように、国民に向って「憲法を守ります」という宣誓をすべき立場だと言いたいのです。
実は、「宣誓」その物をどう捉えるのかについても、かなり考え方が変りました。その辺りも説明して行きたいと思います。
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秋葉さん
昨日は講演や会食でお忙しい中、千葉にも来てくださって嬉しいです。
オバマ大統領の権威が憲法の遵守を宣誓することによっているということは納得できました。
ただ、日本の総理大臣が憲法を守る宣誓をしないということを、同じまな板にのせる形で比較することはどうなのでしょうか?少し違和感を持ちました。
投稿: 根井洋子 | 2017年3月12日 (日) 10時24分
「根井洋子」様
コメント有り難う御座いました。日本の総理大臣が国民に向かって宣誓をしないことについて今日、続きの説明をしましたが、気持としてはやはりアメリカの大統領のように、国民に向って「憲法を守ります」という宣誓をすべき立場だと言いたいのです。
実は、「宣誓」その物をどう捉えるのかについても、かなり考え方が変りました。その辺りも説明して行きたいと思います。
投稿: イライザ | 2017年3月13日 (月) 01時20分