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2017年3月 2日 (木)

民主主義の再生に向かうアメリカ ――トランプ危機が「隠された祝福」かも――  


民主主義の再生に向かうアメリカ

――トランプ危機が「隠された祝福」かも――  

 

昨年の夏、ヒラリー候補が当選することが既定事実だと考えている人も多かった時期に、敢えてトランプ候補が当選すると予言し、その根拠を5項目にまとめたマイケル・ムーア氏が、今度は「この10項目を実行しよう。そうすればトランプをやっつけられる」を発表しました。

 

まずは、その10項目です。説明の部分からも掻い摘んで引用しています。

 

1. 毎日電話しよう

毎日、連邦議会に電話するんだ。そう、そこの君!

1.起床。

2.歯磨き。

3.犬の散歩(それか猫を見つめる)。

4.コーヒーを入れる。

5.議会に電話する。

覚えておいてほしい。11回の電話でトランプ政権を倒せるんだ。

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(版権: 123RF 写真素材)

2. 月に1回訪問しよう

連邦議会の上院議員・下院議員の地元事務所を訪ねること、それと、地元の州議会の下院、上院議員の事務所を訪問することも忘れないでほしい。

3. 個人で「すぐやる」チームを作ろう

友達や家族520人くらい集めて、個人による「すぐやる」チームを作る。

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4.とにかく参加して参加して参加しまくろう!

今こそ俺たち全員が、もっと大きな団体に参加するべきだ。だから、実際にオンラインでメンバー登録をして、ちゃんとした全国組織に参加しよう。

5. ウィメンズ・マーチは終わらない

重要なのは、トランプにはっきりと見えるように、俺たちがマーチやデモ、座り込みを続けることだ。

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6.民主党を乗っ取ろう

7. ブルーステート(民主党が優位の州)のレジスタンス開催に協力しよう

8. 選挙に出馬しよう

9. 君自身がメディアになるべきだ

FacebookTwitterInstagramSnapchat、いろんなSNSを使って、ニュースや情報を拡散しよう

10. 喜劇の部隊に加わる

トランプの弱点は、とっても神経質なところだ。トランプは笑い者にされるのが我慢ならない。だから、みんなでトランプのことを思う存分笑ってやろう

 

とても具体的で、誰でもすぐできることがいくつもありますので必ず結果に結び付くはずなのですが、太平洋に向こう側の話ですので、状況の深刻さが十分に伝わっていないかもしれません。トランプ大統領を辞めさせるだけで解決しないほど問題は深刻化しているのですが、逆に考えるとトランプ大統領なら、必ずどこかで襤褸を出すから「辞めろ」運動が成功する確率は高いはずなのです。この運動を広げるプロセスで、より深刻な問題について多くの市民が学び内面化して、次の解決策を生むことにつながる、というシナリオをマイケル・ムーア監督は考えているのではないでしょうか。トランプ大統領の誕生は極めて不幸な出来事なのですが、その結果が次の希望につなげられれば、それは「隠された祝福」だと考えることも可能です。

 

これまで何度も言い続けてきたのでもうお分りだとは思いますが、念のため、トランプ候補が共和党候補になり、ヒラリー候補を破った背景を再度お浚いしておきましょう。そして、日本でもマイケル」・ムーア作戦と同じようなことをすれば政治が変るという主張も付け加えたいと思います。

 

マット・タイビ氏の現場からの報告『狂気のピエロ大統領』で描かれていたマスコミの体たらくとは、大統領選挙以前の予備選挙の段階から、トランプ候補を政治的に意味のある対象として扱うのではなく、「エンターテインメント」を提供する存在として扱い、結果としてトランプ候補の提灯持ちの役割を果してしまったということですした。この点をもう少し一般化して総括すると、マスコミは、自分たちの都合の悪いメッセージには耳を閉ざしてしまったということになります。

 

しかもそれは、マスコミに限られたことではなく、共和党のエスタブリッシュメント、さらには民主党の本流でさえ見られた傾向だということなのです。

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こんな悲惨な状態でも、市民が頑張れば何とかなるというメッセージが、9.の「君自身がメディアになるべきだ」です。しかし、それ以上に時間の掛かる問題もあります。

 

それが顕著に表れたのは、2010年の中間選挙そして2012年の選挙です。コーク兄弟の作ったネットワークが社会全体を大きく変えてきた結果が、「ラスト・ベルト」の4州、ウィスコンシン、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニアにおける政治的な色合いの激変として顕在化しました。これら工業地帯の州は労働者人口の多いことから戦後の長い間民主党が力を持っていました。つまり民主党の色である青を冠して「ブルー・ステート」と呼ばれていました。

 

それが2010年以降、ペンシルバニアを除いた3州の知事は皆共和党、そして、4州とも州議会の上院も下院も共和党が多数派になってしまったのです。

 

それには訳があります。アメリカの選挙区の範囲は10年毎の国勢調査の結果に従って調整されるのですが、その調整を自分たちの都合の良いように恣意的に線引きを行うことを「ゲリマンダー」と言います。そしてコーク・ネットワークが金の力にものを言わせて2010年に意図的に行ったのが正にこのゲリマンダーだったのです。特に、ノース・カロライナ州に注力したことも分っているのですが、その結果が選挙結果に如実に反映されています。

 

しかも、これを修正するためには次の国勢調査が行われる2020年まで待たなくてはりません。それまでの間に、まず民主党を乗っ取り、党の力をさらに大きくしながら州単位で民主主義を復活させようというマイケル・ムーア作戦に幸あれと祈っています。同時に、応用問題として、日本の民主主義を復活させるために何ができるのかも考えたいと思います。

 

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