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2017年2月19日 (日)

『国家の品格』 ――諸悪の根源は「論理」と「合理的精神」――  


『国家の品格』

――諸悪の根源は「論理」と「合理的精神」――  

 

最初にお詫びです。217日は「2016原水禁学校の最終日」で、福島から福島平和フォーラムの代表で福島県教職員組合の委員長をなさっている角田政志さんを迎えてフクシマの現状について学びました。広島県原水禁常任理事の中谷悦子さんが、詳しく報告して下さっているのですが、アップするのが遅くなってしまいました。まだお読みでない方には、是非御一読頂きたく、再度御案内致させて頂きます。

 

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マイケル・ムーア監督が、トランプ大統領の当選を予言したことは良く知られていますが、実はもう一人しかも10年以上前に、こんな動きが起るべきだと熱く説いていた人がいます。藤原正彦氏です。ベストセラーになった彼の著書『国家の品格』の中で、氏が諸悪の根源として糾弾していたのが「西欧流の論理」そして「近代的合理精神」です。この二大悪が昨年のアメリカ大統領選挙でどう捨てられていったのかを見ることで、アメリカ社会が藤原氏の理想に近付いていることが分るはずなのですが、果たしてそれが人類の目指している方向に沿うものなのかどうか、考えて見たいと思います。。

 

トランプ大統領が「論理」と「合理性」を捨てていることについては信頼するに足る証言者がいます。2015年から選挙の時までトランプ候補に密着取材をした『ローリング・ストーン』誌の記者マット・タイビ氏です。彼の記事を集めた『Insane Clown President (狂気のピエロ大統領)――2016年のサーカスからの報告』 (Spiegel & Grau社刊) が秀逸です。そこから、大切なポイントをいくつか拾っておきましょう。

 

                 

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 選挙中 (そして選挙後、大統領就任後も続いていますが) のトランプ候補の言動の内、誰にとっても明らかだったのは、トランプ氏が嘘を言う、あるいは矛盾した内容を臆面もなく言い続ける、前に言ったことを平気で否定する、しかもそれに対する説明や謝罪は一切ない、ということです。マスコミを通じて私たちもそのことは良く知っていたはずです。例えば、就任式の会場に何人の人が集まったのかについて、マスコミ報道ではオバマ大統領の最初の就任式では180万人、それに対して今回は70から90万人とのことでした。トランプ大統領の反応は、マスコミは嘘をついている、自分には150万人くらいに見えたと報道されています。

 これまでの大統領選挙の報道では、これほど明白な嘘が並べられれば、マスコミが一斉に叩き、その結果、候補は陳謝に追い込まれ選挙戦から撤退するというシナリオしか想定されていなかったのだそうです。しかし、トランプ候補は自分の嘘は認めずマスコミに対する反撃をすることでさらにマスコミから注目されるというパターンを繰り返してきただけではなく、マスコミはそんなトランプ氏をさらに取り上げ、注目度を上げることに貢献してきたということなのです。

 つまり、政治という重要なトピックの当事者としての扱いではなく、あくまでも視聴率を稼げる「エンターテインメント」としてトランプ候補を取り上げ続けたということです。

 自分でコマーシャル代は出さずにマスコミに取り上げられ、その結果支持率が上がる現実を見て、共和党の他の候補もトランプ候補の真似をし始めます。その結果、選挙戦の実質的内容はなくなり、いかにセンセーショナルなことを言ってマスコミに注目して貰えるかの競争になりました。最終的にはマスコミの操縦術に長けたトランプ氏が勝利を収める結果になったことは、皆さん御存知の通りです。

 嘘が罷り通ったということは、論理を捨てたということですし、マスコミに取り上げられるために広く社会全体そしてその構成員である市民の立場を尊重するのではなく、また歴史を謙虚に振り返ることもなく、どれほど突飛な発言ができるのかに走ってしまった共和党候補だけが残ったということは、アメリカ政治に残されていた合理性を捨て去ってしまったことでもあります。より広く捕らえれば、知性まで捨ててしまったのです。

 

しかし、それでもトランプ候補の演説に涙し、就任式で感涙に咽んでいた人が多かったのは何故なのでしょうか。

 

次回は『国家の品格』とそれに対する見事な反論である『「国家の品格」への素朴な疑問』(吉孝也/前川征弘著・新風舎刊)を取り上げて、この問に答えるのと同時に、これからどうすべきなのかについても考えて見たいと思います。

 

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