多作多捨
「一年の計」の追加項目として「一日一句」、つまり一日に一句は俳句を詠む、という目標を掲げようとも考えたのですが、日記もあり、ブログもある中でとてもそこまでは手が回らないだろう、という消極的な結論になっていました。
しかし、1月5日のプレバトで、夏井いつき先生が「多作多捨」の大切さを強調されていましたので、易きに付く結論を出してしまったことを少し後悔しています。俳句の世界ではこの言葉が広まっていることは初めて知ったのですが、「良いアイデアを出す方法」として、授業の中でも講演等でもこの点を繰り返してきていましたので、少し恥かしい気持にもなりました。
拙著『顔を持ったコンピュータ』にも登場するコンピュータ科学者の一人がエドワード・フレドキン教授です。結構変わった人の多いMITの中でも目立つほどの人なのですが、学歴不詳、というより通常の教育はあまり受けていないにもかかわらず、コンピュータの世界では天才的な閃きで、多くの新分野を開拓した人です。
彼に、「それほど素晴らしいアイデアをたくさん生み出す秘訣は何なのでしょうか」と聞いてみたのですが、返ってきた答えに最初はびっくりし、後で納得しました。そしてそれは私の座右の銘にもなりました。「私は良いアイデアを生もうと努力している訳ではなくて、良くても悪くても、いや悪いアイデアをたくさん考えることにしている。その中から、たまに素晴らしいアイデアが顔を出すのだ」。これを密かに「フレドキンの法則」と呼んできました。
最初から良いアイデアを生み出そうとすると、何かに気が付いても、まずはそれを評価する気持になって、多くの場合は「つまらない」方のゴミ箱に入れてしまいます。そのアイデアに関連したことはいくつかあるはずなのですが、それらも次の候補としては顔を出すことはなくなり、私たちの限られた記憶の倉庫の中はすぐ空になってしまいます。そこから良いアイデアはまず出てこないでしょう。4字熟語としては、「多捨少作」でしょうか。
その反対に、とにかくアイデアが閃いたら、良くても悪くてもそれをしっかり育ててみる、その上で、拾うべきかどうかを考える、という順序にすると、仮に駄目なアイデアであってもそのアイデアから派生する全く別の畑への道が見えてきたりするということなのです。
「フレドキンの法則」が実は日本でも「多作多捨」として俳句の世界に独立して生きていたことを発見して、2017年がますます充実してきました。そして今年も「多作多捨」で頑張りたいと思います。その中から珠玉の真珠が見付かると素晴らしいのですが――。
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 2017年1月5日アップ 「一年の計」の修正と追加 | トップページ | 夜書いたラブレターをそのまま彼女に送るな 推敲で目を覚ませ »
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 縦型マウスは、二個とも返品しました(2022.10.11)
- 縦型エルゴノミクス・マウス(2022.09.06)
- Facebookを再開しました(2022.06.15)
- 親友の80歳誕生日 ――お祝いのビデオを送りました―― (2022.02.28)
- デュアル・ディスプレーを使っています ――仕事が捗ります―― (2022.02.21)
「学問・資格」カテゴリの記事
- 免許証の更新をしてきました(2022.10.21)
- 観光船事故は防げたのか ――政府は国民の生命を最大限尊重しなくてはならない―― (2022.04.30)
- 署名運動にも力があります ――変化は起こせます。希望も創れます。―― (2022.04.01)
- 「明日の法律家講座」で講演しました ――良い質問も沢山頂きました―― (2022.02.19)
- 7月22日に、「数学月間」の懇話会で話をします ――関東地方の皆さん是非お出で下さい―― (2019.07.16)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- [追悼] 大江健三郎さん ――「先生」なのですが、それ以上の存在でした―― (2023.03.14)
- H君を偲ぶ会 ――没後3年、80人が集いました―― (2023.02.27)
- 『老害の人』と『すぐ死ぬんだから』 ――最高に面白い内館牧子さんの小説―― (2023.02.13)
- 明けましておめでとうございます(2023.01.01)
- 『元気です、広島』 ――「市長日記」と合わせて週一の発信―― (2022.06.05)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 成田発言のおぞましさ検証 (3) ――1,000万人もの人をどう殺すのですか?―― (2023.02.28)
- 非暴力社会を目指す(2022.06.13)
- The World Financial Review に掲載されたインタビューの和訳をアップします。(2022.05.01)
- 日本のテレビは「いじめ」を助長している ――みんなで声を上げましょう―― (2019.07.19)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「成田プラン」の反論は米谷ふみ子さんがしていました ――芥川賞受賞作家が14年も前に―― (2023.03.15)
- [追悼] 大江健三郎さん ――「先生」なのですが、それ以上の存在でした―― (2023.03.14)
- H君を偲ぶ会 ――没後3年、80人が集いました―― (2023.02.27)
- 『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?―― (2023.02.22)
- 日本が壊れて行く? (x) ――192ページの教科書に1200もの誤り、そして車中閉じ込め事故の新たな事実判明―― (2023.02.19)
「言葉」カテゴリの記事
- 歴史は生きている ――杉並区のイベントで人生を振り返ることになりました―― (2023.03.21)
- 杉並区の岸本聡子区長にお会いしてきました ――69年前も今も杉並から新たな動きが始まっています―― (2023.03.20)
- 「成田プラン」の反論は米谷ふみ子さんがしていました ――芥川賞受賞作家が14年も前に―― (2023.03.15)
- [追悼] 大江健三郎さん ――「先生」なのですが、それ以上の存在でした―― (2023.03.14)
- 「記憶が不確かだから記録を残す」の意味を葬り去った自民党政治 ――それでも過去の記録を忠実に残す努力をし続けよう―― (2023.03.11)
「アメリカ」カテゴリの記事
- 英文毎日 (The Mainichi) への投稿がアップされます ――「核の先制不使用」実現のため、海外に拡散して下さい―― (2023.03.22)
- Responsibility of Prime Minister Fumio Kishida, elected from Hiroshima, On the occasion of the G7 Summit in Hiroshima (2023.03.16)
- 「成田プラン」の反論は米谷ふみ子さんがしていました ――芥川賞受賞作家が14年も前に―― (2023.03.15)
- ロンドンに着きました ――ロシア上空は飛べないので14時間掛かりました―― (2023.03.03)
コメント
私も同じ番組のその場面で「多作多捨」と云う言葉を初めて聞き
感銘、いや、勇気を貰いました。
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたします。
記事も楽しみにしてます。
プレバトを見られているとは、ちょとビックリしました。笑
広島でも、年配方で俳句をされている人は少なくないようですね。
「⑦パパ」様
自分が感じていることを短い表現で的確に言い表している言葉や作品に出会うのは嬉しいですね。「多作多捨」がその一つでしたし、結局俳句も、そういうことなのではないでしょうか。これをブログで真似しようとすると、ちょっと難しいかも知れませんね。オッと、これは明日のテーマです。
「やんじ」様
こちらこそ本年も宜しくお願い申し上げます。老若男女、誰でも簡単に楽しめるのが俳句でしょうが、芭蕉のイメージから「お年寄りの趣味」的な影も漂いますね。プレバトの良いところは、詫びとか寂とは対極にあるとさえ思われている芸能人に、俳句の良さを伝えていることなのではないでしょうか。
こんな形で芸能人の感性が研ぎ澄まされることで、底の無い下品さしか目にできないテレビの質が少しは向上するのでしょうか。
なんて読むのですか?
« 2017年1月5日アップ 「一年の計」の修正と追加 | トップページ | 夜書いたラブレターをそのまま彼女に送るな 推敲で目を覚ませ »
私も同じ番組のその場面で「多作多捨」と云う言葉を初めて聞き
感銘、いや、勇気を貰いました。
投稿: ⑦パパ | 2017年1月 7日 (土) 10時22分
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたします。
記事も楽しみにしてます。
プレバトを見られているとは、ちょとビックリしました。笑
広島でも、年配方で俳句をされている人は少なくないようですね。
投稿: やんじ | 2017年1月 7日 (土) 17時50分
「⑦パパ」様
自分が感じていることを短い表現で的確に言い表している言葉や作品に出会うのは嬉しいですね。「多作多捨」がその一つでしたし、結局俳句も、そういうことなのではないでしょうか。これをブログで真似しようとすると、ちょっと難しいかも知れませんね。オッと、これは明日のテーマです。
投稿: イライザ | 2017年1月 7日 (土) 20時50分
「やんじ」様
こちらこそ本年も宜しくお願い申し上げます。老若男女、誰でも簡単に楽しめるのが俳句でしょうが、芭蕉のイメージから「お年寄りの趣味」的な影も漂いますね。プレバトの良いところは、詫びとか寂とは対極にあるとさえ思われている芸能人に、俳句の良さを伝えていることなのではないでしょうか。
こんな形で芸能人の感性が研ぎ澄まされることで、底の無い下品さしか目にできないテレビの質が少しは向上するのでしょうか。
投稿: イライザ | 2017年1月 7日 (土) 20時57分