ジョン・ハーシー氏の孫 ――20世紀を代表するジャーナリスト――
――20世紀を代表するジャーナリスト――
第3世代、つまり歴史的な人物の孫たちの中で、私がたまたまお会いすることになり、しかも強烈なインパクトを受けた三人を御紹介していますが、今回は、20世紀を代表するジャーナリストであるジョン・ハーシー氏の孫、キャノン・ハーシー氏です。今広島に来られていますので、精力的に共同事業を進めている西前拓氏とともにお会いしました。
キャノン氏と西前氏
私たちの世代に取って「ジョン・ハーシー」という名前は彼の著書『ヒロシマ』とともに、大きな存在なのですが、若い人たちの中には彼の名前を聞いたことのない人もいるかもしれません。簡単に紹介すると、ハーシー氏が1946年に広島を訪れ多くの人をインタビューし、その中から6人の被爆者を選んで彼らの体験と人間性を淡々と、しかしその結果、驚くほどの感動とともに描きました。そのレポートは1946年8月31日号の『ニューヨーカー』という雑誌全頁を割いて掲載され、一日で30万部が売り切れたという記録が残っています。その後、そのレポートが一冊の本にまとめられたのですが、それが『ヒロシマ』です。
ハーシー氏1985年に再度、ひろしまを訪れ、6人の被爆者のその後を調査した上で、『ヒロシマ』に追記を加えています。その時に、広島国際文化財団等とともに取材のお手伝いをしたのですが、ハーシー氏の広島レポートは、20世紀最後の時代に、国際的なジャーナリストたちの投票によって、20世紀で最も重要なジャーナリストの仕事に選ばれています。
その縁でキャノン・ハーシー氏とお会いすることになりました。
私たちが、大切なことを人に伝えるときに、使えるあらゆる手段に頼るのは自然ですが、それが「全て」であることを強調するために、しばしば「情理を尽くして」という表現が使われます。知性と感性と言って良いと思いますが、言葉を使い克明にしかも感動的に被爆体験を伝えるのは「知性」の領域に入ります。
キャノン・ハーシー氏はアーティストですので、彼の仕事は「情」の部分、つまり「感性」に訴える仕事です。キャノン氏の活動の一部は、次のウェブサイト、そして1future.comのページで御覧頂けます。
彼の作品展示のレセプションのビデオも御覧下さい。
ここ数か年、キャノン氏の柱の一つになったのは、元々、黒田征太郎氏が手掛けていた「Pikadon Project」です。黒田氏を師と仰ぐ映像作家そして広範なメディア・プロデューサーとしても活躍してきた西前拓氏との共同作業です。その全体像は、クラウド・ファンディングの説明ページが分り易いのではないかと思います。
次のプロジェクトのキックオフは今年の4月にニューヨーク、また10月頃には広島で始まる予定ですが、世代や国境を越えた、「核なき世界」実現のための「平和円卓会議2020 Peace Round Table」を今後4年間にわたって開き、2020年までに実行可能なことを積極的に推進する予定です。
この円卓会議では、4つのテーマを決めて、できるだけ多くの人々それも、年齢・男女・国籍・専門のあるなし・宗教・職業等々、様々な点で違いを持った人々が一堂に会し、未来づくりのために知恵を出すことが目的です。企画書の一部を引用します。
平和円卓会議 2020 Peace Round
Table 4つのテーマ 平和円卓会議では、国境を超えて、教育、行政、NPO、企業、メディアなど各界の有識者そして若者や市民が集まり、原爆投下75周年となる2020年に向けてこれから4年間にわたって我々に何ができるのか 、どのようなプロジェクトが考えられるか、またどのような手段があるか、 知恵を出し合います。その上で広島、長崎からどのように世界に発信していくか、また世界からの視点をどのように受け入れるか、以下の4つのテーマにそって具体的に協議していきます。
☆人権 Human Rights for Peace 核の問題は人権問題でもあり、各国の核被害者との連携の重要性 例;核被害者フォーラムや世界各地の被爆者との交流事業
☆環境 Healthy environment for Peace 核の問題は環境問題でもあり、地域社会、国際社会がいかに共同で取り組むべき問題 例;被爆樹木プロジェクトなど
☆コミュニティ Community for Peace 自分たちの住むコミュニティ、町や村から平和を広げていくことの重要性 例;Mayors for Peace 平和首長会議
☆イノベーション Innovation for Peace テクノロジーの力で核問題に関する新たなコミュニケーションを生む。 例;オンラインソフトやアプリの開発、Hiroshima Archive
芸術を通じて、先人たちの遺産を次の世代につなげて行くのも私たちの大切な仕事です。それぞれの分野で才能のある、そして志を持つ多くの人々、特に(私より)若い世代の皆さんに期待しています。
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