DVD『風よ吹け!未来はここに!!』上映会・講演会報告
DVD『風よ吹け!未来はここに!!』上映会・講演会報告
昨12月17日(土)午後1時から4時まで広島県情報プラザで開かれた、DVD『風よ吹け!未来はここに!!』の上映会と講演会の報告です。できるだけ多くの方に参加して頂きたいという思いから昨日、「お知らせ」をアップしたのですが、150人入れる会場は一杯で、主催者の皆さんが急遽、追加の椅子を並べなくてはならないほどでした。
3時間という長丁場でしたが、会場は熱気に溢れて、あっと言う間に終りの時間を迎えていました。一時間ずつの3部構成でしたが、最初は、今年完成したDVDの上映です。人工呼吸器とともに生きている6人の子ども・若者の日常生活の紹介、そして彼ら/彼女らの家族や保育園・学校の先生や同級生等、彼ら/彼女らとともに生き活動している方々の姿が「感動的」に「楽しく」描かれていることに感動しました。
出演者は6人ですが、会場でいただいたパンフレットを元に出演順に紹介したいと思います。
l 中島環君(4歳)――中枢性低換気症候群により、生後1か月から人工呼吸器を使用し3歳から広島市の吉島保育園に通っている。
l 巽康祐君(11歳)――ダンディウォーカー症候群により1歳から人工呼吸器を使用、現在は箕面市立豊川北小学校に通っている。
l 諾浦綾乃さん(11歳)――出産時の低酸素脳症により、出生直後から人工呼吸器を使用、滋賀県内の支援学校に通う小学生。スクーリングの回数を増やし自分の世界を拡大中。(なお、「諾浦」は「なぎうら」と読みます。)
l 平本歩さん(30歳)――ミトコンドリア筋症により生後6か月から人工呼吸器を使用。現在一人暮らしをしながら、ピアカウンセラーになるべく勉強中。バクバクの会・編集長。
l 岸本彩さん(28歳)――福山型筋ジストロフィーにより15歳から人工呼吸器を使用。現在、一人暮しを満喫しながら医療的ケア連絡協議会・代表。
l 折田涼さん(27歳)――脊髄性筋萎縮症I型により生後6か月から人工呼吸器を使用。現在一人暮しをしながら、医療的ケアの普及活動に取り組んでいる。NPO法人ポムハウス・代表理事。
60分のDVDの内容を文字でお伝えするのは無理ですので、YouTubeのダイジェスト版をまず御覧下さい。
第二部は二つの講演でした。最初は「地域で生きる教育とくらしをめざす会」代表の高松豊さんでした。1975年生まれの高松さんは先天性緑内障で生まれつき全盲。中学2年まで支援学級に通うが、中3で普通学校に通学。中四国地方初の点字受験で広島県立可部高校に合格。卒業後は支援学校の専門部であんま・マッサージ師の技術を習得し国家資格を取得。現在は病院に勤務しています。今年4月に結婚。
ユーモアあふれる前向きの講演で、機会があれば是非一度高松さんの話を聞いてみることをお勧めします。特に印象的だった言葉を三つ、そしてエピソードを一つ挙げておきたいのですが、一つは「障害は個性」だということ。ほかの個性について考えても同じ結論になるのですが、個性は制約であるのと同時に大きな機会でもあることを認識して、それをどう生かすのかが大切だという考え方です。
二つ目は「自立」の意味。すべてのことを自分でする、あるいはできるようになることを普通は自立と考え、高松さんもそう考えていたそうなのですが、ある時その考え方を変えた経緯をエピソードとともに話してくれました。結論だけ書くと、誰でも完全には自立できない。どこかで誰かに頼らなくてはならないことがある。そんなときに、躊躇せず自由に友だちなり周りの人に「これを頼む」と言える人間関係を作っておくことが、本当の意味での「自立」なのではないか。
三つめは、「ともに学ぶ」ことの大切さです。多様性を「知る」だけではなく、ともに生活し学ぶことでその意味を「体得」できる、そしてそれが誰にとっても生きる上で大きなエネルギーになるのですが、特に子どもにとって、「学ぶ」ことと「生きる」こととの重複が大きいことから、「学ぶ」を強調することが大切だという点を改めて学びました。
最後に、結婚して奥さんからの指摘で分かったこと。結婚前は、視覚障害のあるお母さんとの二人暮しだったので不便は感じなかったことなのだそうですが、家の中の電球があちこち切れたままになっていたこと。
講演の二つ目は、「たま君ファミリーのお話」でした。DVDの最初に出てくる中島環君のお父さん、お母さんそしてお兄さんの4人家族の生活について、心配だったこと、困難なことや苦労したことなどを中心に、訪問看護師の富永説子さんと一緒に語ってくれました。
生後すぐに、大腸が機能していない病気のあることが分り大腸摘出の大手術をしなくてはならないと医師から聞かされて失神してしまったこと。その後、今度は中枢性低換気症候群のために気管の切開手術の必要のあることも分り、その手術をすると声を失う可能性の高いことも知らされ、絶望的な思いをしたことも話してくれました。
保育園に通っているお兄ちゃんやその友だちと公園で楽しそうに遊んでいる環君を見て、御両親は環君も保育園に通わせたいと決意、人工呼吸器を携えての入園は例がないため、様々な困難さがあり、保育園の皆さんの努力とも相俟って、通園できるようになったこと、そして今では社会性も身に付き、一度は諦めていた声も出せるだけではなく、活発にお喋りできるようになったことなど、御両親の言葉も声音も抑制の利いていたこととも合わせて、感動的なお話でした。拙い筆では伝わらないと思いますので、中島夫妻のお話も、聞く機会があれば、是非一度お聞きになることをお勧めします。
第3部は会場から6人の方の発言がありました。とてもユニークかつ勉強にりましたが、スペースの関係で割愛します。
学ぶことの大切さを再確認した会でしたが、まず「知ること」から始めるという姿勢が必要です。それを可能にしてくれた皆さん、今回の上映会・講演会のような「知らせる」努力を続けてこられた皆さんに、深く感謝しています。
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 風よ吹け!未来はここに!! DVD上映会と講演会のお知らせ | トップページ | 『ある家族』 12年前の『文芸ひろしま』掲載作品です »
「学問・資格」カテゴリの記事
- #アリストテレス と #トマス・アキナス に #激励されました ――#昔 #国会議員 の #勉強会 で―― (2024.01.25)
- #政治と政治学のあいだ #出版記念トーク ――#1月27日 #県民文化センター5階 #サテライトキャンパスひろしま #14時から―― (2024.01.19)
- 姉妹公園協定のために投下責任を「棚上げ」? ――「棚上げ」して、誰が得をするのか?―― (2023.09.26)
- 大学のブラック・ビジネスはいつ終わるのか ――入学しない人から入学金を取るのは止めるべきでは―― (2023.03.28)
- 免許証の更新をしてきました(2022.10.21)
「心と体」カテゴリの記事
- #風邪でダウンしています ――#風に罹ったのは何年振りでしょうか―― (2024.06.09)
- 断酒の障害が分りました ――甘い言葉でした―― (2023.07.04)
- 余りにも無防備過ぎます ――かつては煙草も無害だと信じられていました―― (2023.04.29)
- AIがベルギーの男性を死に追いやった? ――半世紀以上前のワイゼンバウム教授の警告が生かされませんでした―― (2023.04.28)
- 成田発言のおぞましさ検証 (3) ――1,000万人もの人をどう殺すのですか?―― (2023.02.28)
「育児」カテゴリの記事
- 韓国の男性は優しい ――今回の韓国訪問の「第一」印象です――(2018.07.02)
- サンタクロースは本当にいるのでしょうか? ――二つの証拠があります――(2017.12.24)
- ゴールデン・ウィークのBBQ ――ようやく実現できました――(2017.05.08)
- 宝塚市長選挙 ――中川現市長が圧倒的な支持を受け三選――(2017.04.17)
- 『ある家族』 12年前の『文芸ひろしま』掲載作品です(2016.12.21)
「福祉」カテゴリの記事
- 「成田プラン」の反論は米谷ふみ子さんがしていました ――芥川賞受賞作家が14年も前に―― (2023.03.15)
- この一年(2022年)を振り返る (4) ――読んで良かった本―― (2022.12.31)
- 「雨にも負けず」(2022.06.12)
- チラシ完成(2022.06.10)
- 署名運動さえ難しい時代になったようです ――相手によっては、善意が悪用されるかもしれません―― (2022.03.05)
「教育」カテゴリの記事
- #伊藤塾の伊藤真塾長にお会いしてきました ――#伊藤塾 #法学館 ともに #未来の司法を担う #若者の育成をしています―― (2024.07.21)
- #久しぶりの母校 ――#樹木鬱蒼たる #キャンパスに なっていました―― (2024.06.24)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #コロンブス問題 (その2) ――#1992年 #江崎玲於奈筑波大学長 #入学式での式辞―― (2024.06.17)
- #全米大学生の目標 は #大学が #Discloseと #Divestすること ―― #アパルトヘイト撤廃の力になった―― (2024.05.07)
「生活」カテゴリの記事
- #内灘闘争の歴史を学ぶ ――#JR総連中国地方協議会第38回定期委員会2部―― (2024.10.06)
- #今でも便利な #ABCチェアー ―― #雑草取りにも大活躍―― (2024.05.20)
- #雨水桝 ―― #雨樋から #農業用水路まで―― (2024.04.24)
- #クレカの問題 #一瞬で解決 ―― #でもその前に #時間 と #手間が掛かりました―― (2024.04.22)
- #ベンチストッカー ―― #庭仕事用道具類の #格納場所ができました―― (2024.04.16)
「若者」カテゴリの記事
- #慰霊の夕べコンサート #成功裡に終了 ――#80周年の趣向は? #皆さんからも御意見を!―― (2024.08.12)
- #徳目 を教えるのに、なぜ #明治時代 の #遺物 だけに限定するのか ――#平安時代 も #日本の歴史 の一部―― (2024.01.14)
- #お年玉 には #安野光雅 ――#表紙 だけでも読んで欲しい―― (2023.12.30)
- 数学を学ぶとは・教えるとは ――「数学人の集い」の楽しみ方―― (2023.06.11)
- 学校でとんでもないことが起きているようです。 ――生徒や学生はどうすれば良いのでしょうか―― (2023.06.08)
コメント
« 風よ吹け!未来はここに!! DVD上映会と講演会のお知らせ | トップページ | 『ある家族』 12年前の『文芸ひろしま』掲載作品です »
障害を個性と見れば、
個性は悲観的に見れば短所となり、
楽観的見れば長所となるということでしょうね。
楽観的に見ていきたいですね。
投稿: 宇品灯台 | 2016年12月18日 (日) 20時22分