改訂版 「原水禁学校」第3回講義 日本政府の裏切り
改訂版 「原水禁学校」第3回講義
日本政府の裏切り
「核兵器廃絶と日本の役割」をテーマにした原水禁学校の講演アウトラインの続きです。
国連の第一委員会で採択された決議「L.41」が画期的なものであり、世界の未来を導く新たな光を照らすことになるのは、核兵器の廃絶に関心を持ってきた人なら誰でも分ることです。内容は極めて単純なことで、基本的には次のように要約できます。
① 核兵器禁止条約締結に向けての多国間交渉を来年2017年から始める。
② 日程は、2017年3月27日から31日までと、6月15日から7月7日までの間の20日間。
これほど簡単なこと、しかも核不拡散条約(NPT)の第6条に「誠実な交渉義務」として、全ての締約国に義務付けられていたことが、これまでの46年間、核保有国の妨害によって実現されなかった点が問題だったのです。
その決議に、「被爆国」を標榜する日本政府は「反対」しました。それについては10月30日に「核兵器禁止条約締結への大きな一歩!」、11月2日の「外務省の詭弁に市民はどう対抗できるのか」、11月3日の「「亀裂を深めている」だけでなく「作り出している」日本政府・外務省」 で、取り上げましたので、再度お読み頂ければ幸いです。
核兵器廃絶という大切な目標を実現する上で、日本政府はこれまでも被爆者や市民を「裏切って」来ましたが、第一委員会決議に対する「反対」はそれらの全てを代表するものです。私たちがもっと厳しく批判の声を上げなくてはならないのではないでしょうか。
そのために、もう二例、「日本政府の裏切り」を報告しておきましょう。
一つ目は、元々オーストリアが提案し、2015年4月にはNPT再検討会議に提出した「人道の誓約」に署名していないことです。この誓約に署名したのは全世界で127カ国、さらに、この誓約を「決議」として採択した際には、それらの国に加えて23カ国が賛成しています。つまり、国連加盟国193カ国中、150カ国が賛成しているのです。その内容は、日本政府がどうしても賛成できないような難しい点を含んでいるのでしょうか。以下、内容の要約です。
核兵器の危険性や歴史、そして人類に与える破滅的な影響等についてまとめた後、次の三つの誓約をする文書。
① NPT第6条を守り、核廃絶に至る道にある「法的ギャップ」を取り除く努力をする。
② それが実現するまで、核兵器による危険性を低減させるための中間措置を取る。
③ 法的にも道徳的にも核兵器が忌むべき存在して廃棄されるよう、あらゆる個人・団体・市民社会等との協力体制を作る。
説明を加えておくと、①は「法の支配」を強調しています。力の強い国の言いなりになるのではなく、NPTにも決められているように、多国間交渉により、例えば核兵器禁止条約を作りましょう、という内容です。②は、条約ができたとしても核兵器が廃絶されるまでには時間が掛かるので、その間にも中間的な措置として、核実験を止めたり、即応態勢にある核兵器を少しずつでもその態勢から解除し、すぐには使えない状態に転換する等のことをしましょうという現実的な内容です。そして③は、できるだけたくさんの人や組織等と協力しましょうということですから、全く問題のないことはお分かり頂けたと思います。
二つ目は、マーシャル諸島共和国の国際司法裁判所(ICJ)への提訴却下についてです。同国が、核保有9カ国を相手取ってNPTの第6条違反の廉でICJに提訴をしたことは何度か取り上げてきましたが、その提訴が却下されました。この点については、10月7日の「マーシャル諸島共和国の提訴は「却下」 でも、判事の評価は
8 : 8」、そして10月9日の「In
Good Faith (誠実に) RMI提訴の却下と「白紙領収書」」でも取り上げました。
残念ながら、あまり時間がなかったために、これまでICJがどんな理由で却下したのかについては詳しく報告して来ませんでしたが、12月2日の原水禁学校では、この点にも触れましたので、できるだけ分り易く説明しておきたいと思います。ただし、却下理由は極めて人工的・技術的ですので、読むのは大変かもしれません。稿を改めてしっかりまとめたいと思います。
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 「原水禁学校」第3回 「法の支配」とアメリカ | トップページ | 「原水禁学校」第3回講義 RMI提訴棄却の理由 »
「ニュース」カテゴリの記事
- (喝!!) マスコミは何をしているのだ!! ――女性が3自治体議会の過半数というニュースは一面記事だろう―― (2023.05.03)
- 社民党の大椿裕子副党首が繰り上げ当選 ――社民党の参議院議員は福島党首と二人になります―― (2023.03.31)
- 広島市長選挙 ――唯一の争点は『はだしのゲン』の復活です―― (2023.03.27)
- 「記憶が不確かだから記録を残す」の意味を葬り去った自民党政治 ――それでも過去の記録を忠実に残す努力をし続けよう―― (2023.03.11)
- 『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?―― (2023.02.22)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 4年振りの敬老会に参加しました ――高齢化社会の現実についても考えさせられました―― (2023.09.18)
「平和」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 「即時行動」への共感 ――大阪から新たな動きが生まれそうです―― (2023.09.16)
「歴史」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 防衛省を防災省に ――自然災害を黙殺する政治をひっくり返そう―― (2023.07.17)
- 総理大臣としての加藤友三郎 ――戦争回避の「預言者」でもあった―― (2023.07.14)
- 加藤友三郎シンポジウム ――中国新聞が取り上げてれました―― (2023.07.13)
「日本政府」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 被災地に人を送り込むな ――5年前の教訓は生きているのでしょうか?―― (2023.07.18)
「国連」カテゴリの記事
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- マスコミに関心を持って頂き感謝しています ――お陰様で、G7広島サミットの全体像が浮き彫りになってきました―― (2023.06.02)
- 広島で被爆者を裏切ってはいけない (8) ――「思う」だけでは何も動かない。だから総理に要請した。―― (2023.05.30)
- 広島で被爆者を裏切ってはいけない (7) ――一歩踏み出したG20サミット・バリ宣言―― (2023.05.29)
- なぜ岸田総理は、広島サミットでもう一歩前に踏み出さなくてはならないのか ――これまでの「積み重ね」を「無」にしてはならないから―― (2023.05.14)
« 「原水禁学校」第3回 「法の支配」とアメリカ | トップページ | 「原水禁学校」第3回講義 RMI提訴棄却の理由 »
コメント