オバマ大統領への手紙 (2) 日系アメリカ人被爆者のことも忘れないで下さい
オバマ大統領への手紙 (2)
日系アメリカ人被爆者のことも忘れないで下さい
お読み頂ければ分りますが、かつては1000人くらいの方が属していた在米被爆者協会という組織のお手伝いをしていたことがあります。その後、長い間会長や理事として活躍されていた倉本寛治さんや中野健さんもお亡くなりになりましたが、御健在の方も多くいらっしゃいます。しかし、オバマ大統領のヒロシマ・スピーチでは言及がありませんでした。できれば在任中にお引き合わせができないものかと、ホワイト・ハウス(郵送と電子メール)、東京のアメリカ大使館内ケネディー大使、ニューヨーク・タイムズ等に手紙を送りました。どなたかの目に触れ、大統領の手に渡ることを祈りつつ。
ホワイト・ハウスのホーム・ページから
オバマ大統領閣下
現職のアメリカ合衆国大統領として広島を訪問して下さったことに対して、前広島市長として改めて御礼申し上げます。被爆者そして広島市民だけでなく、全国民が貴職の広島訪問を歓迎しました。共同通信の調査では、全人口の98パーセントが素晴らしかったと評価しています。
個人的には、貴職の広島でのスピーチに感動し感謝しています。それは、2009年のプラハでのスピーチをさらに広げた内容になっています。そのプラハのスピーチに応える形で、2009年の平和宣言では謝罪抜きで広島に来て頂きたい旨の意思表示をしていますし、秋には広島に来られたルース大使にもきちんとお伝えしています。また、2010年には、ホワイト・ハウスで、広島にお出で頂けないかと直接お願いをさせて頂きました。
また、貴職のスピーチと広島訪問の結果、「原爆投下は正しかった」と考えるアメリカ人が、1945年の85パーセントに対して、今年2016年には45パーセントになったというYouGov社の世論調査結果も注目すべきだと思います。これほど劇的な変化がアメリカで起きていることは、今後、世界により大きな影響を与えるはずであり、これほど大きな貴職の功績に感謝の意を表します。
私は数学を勉強しましたので、それ故に貴職の広島スピーチ中の集合論的な瑕疵に気付きました。スピーチの中で、何故広島に来るのかについて、貴職は説得力ある説明をされています。「私たちが広島に来るのは、ここで亡くなった人たちの霊に祈りを捧げるためです。その中には、10万人以上の日本人の男性、女性そして子どもたち、何千人の韓国・朝鮮の方々また、捕虜として拘束されていた12人のアメリカ人も含まれます。」
ここで明示された方々への貴職の配慮は世界の多くの人たちから歓迎されました。そして私も心からそれに賛成しています。しかし、このリストから漏れているアメリカ人がいます。原爆投下時に広島にはかなりの数の日系アメリカ市民が住んでいました。彼ら/彼女らは、その結果被爆者になりました。
その後、アメリカに帰国した彼ら/彼女らはアメリカ政府からの医療補助を求めましたが、その願いは未だに実現していません。医療費は、日本政府の制定した「被爆者援護法」が賄っていますが、アメリカ政府に彼ら/彼女らの存在を認めて貰う必要はなくなってはいません。
この手紙を認めているのは、貴職を批判するためではありません。実は、このことは今考えると、マイナスの衣を纏った祝福なのかもしれないからです。それは、貴職が日系アメリカ人被爆者をホワイト・ハウスに招待して彼ら/彼女らの話を聞くことが、一石二鳥になるからです。貴職にとっては、広島では時間の都合で実現できなかった被爆者の体験を詳しく聞くことができるという結果になります。そして日系アメリカ人被爆者の存在を、貴職が「公式に」認めたという結果ももたらすからです。
敬具
前広島市長 秋葉忠利
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