待っているだけで良いのでしょうか? 予測も大切ですが、提言もしましょう
予測も大切ですが、提言もしましょう
個体発生と系統発生の比喩を採用したのは、トランプ氏がこれからどう動くのかを予想するにあたっての枠組みとして使いたかったからでした。つまり、長く複雑なプロセスを経て出来上がったエスタブリッシュメントとトランプ氏がどう向き合うのかを、エスタブリッシュメントが出来上がるまでのプロセスを系統発生と考え、トランプ氏も恐らく同じような障害に遭遇しながら成長・進化して行くプロセスを個体の発生と捉えることです。系統発生という長く複雑なプロセスと同じことを、一人でしかも短時間で処理しなくてはならないという状況を前提として考えようという提案でした。
一番、無難なシナリオは、トランプ氏の調整能力が優れていて、エスタブリッシュメントとも余り摩擦を起こさずに成長するというシナリオですが、その結果は、トランプ氏がエスタ「ブリッシュメントに取り込まれた」という表現になるでしょう。
エスタブリッシュメントとの調整が上手く行かないと、その程度にもよりますが、エスタブリッシュメント側の力が強ければ、トランプ氏はそれに負けて、4年持たないかもしれません。これはマイケル・ムーア氏の予測と似ています。トランプ氏が負けずに、少なくとも互角に近い形で対応する場合を考えると、建設的なシナリオもありそうです。
もう一つは、トランプ氏の本質は根源的に「悪」だという仮定で考えることになりますが、使える手段は何でも使って自分の夢想する究極の世界を実現しようとする、というシナリオです。これには最高度の警戒が必要です。
さて、このところの進展では、人事についてオバマ大統領の批判が出てきましたが、そのオバマ大統領との会談とその後の対応は、殊勝な感じさえありましたので、これからも、可能性として上に掲げた三つのシナリオの内の一つだけを直走るのではなく、三者の間を揺れながらトランプ政治は進んで行くのではないかと思います。
さて、その際に日本とトランプ政権の関係はどうなるのでしょうか。取り敢えず、TPPは別に扱うとして、トランプ発言の主要な点は、米軍基地と日本の核武装についてのものでした。それは安倍総理大臣個人としても、彼を取り巻く戦前回帰願望派にしても「渡りに船」と言っても良いアイデアでした。
そんなことにしてはなりません。対応策を考えるために、まず安倍内閣がこれから打ち出す可能性のあるシナリオを考えて見ましょう。あくまでも一つの可能性です。
① 安倍内閣が、これ以上、米軍に対しての支援を増やすことは国民感情が許さないから増額できない。米軍が撤退するのなら仕方がないと表明する。その結果、より多くの国民は安倍内閣を評価する。
② その評価が浸透し、米軍が撤退の準備を始めようとする辺りで、次の宣言をする。
③ つまり、米軍が撤退すると日本は北朝鮮の核の脅威にさらされることになるから、日本も核武装する。
④ 当然、一悶着が起きますが、それで喧々諤々している間に、核武装の準備は始めておく。
⑤ 同時に、核武装をするくらいなら米軍には居続けて貰いたいという世論を誘導する。もちろん米軍への支援も増やす。
⑥ 一悶着が終息する頃には、日本の核武装も既成事実になっていたことが分る。
こんなシナリオは、私たち「ヒロシマの心」の立場からは到底許すことはできません。ではどうすれば良いのでしょうか。待っているだけでは何も起こりません。可能性がどのくらいあるかは別問題として、我々と一緒に行動するようトランプ氏を説得してみる、最低限、問題提起をするくらいはしたらどうでしょうか。
出発点は、トランプ氏が北朝鮮と話し合う用意があると述べたことです。北朝鮮との話し合いの中で、核兵器についてトランプ氏は何を言うのでしょうか。北朝鮮の核保有には賛成する、どんどん造って欲しいとは言わないでしょう。
その代りに何を言うのかで、トランプ氏が歴史上一番評価されるアメリカの大統領になりますよ、という説得の仕方はできないでしょうか。
北朝鮮には、当然のことながら核開発は止めろ、核兵器も廃棄しろと言うのです。その際に北朝鮮が安心して核廃棄に「YES」と言うためには、日本も韓国も核兵器は持たない、周辺の核保有国、つまり中国、ロシア、アメリカは日本、韓国、北朝鮮には核兵器を使わないことを保障する、という約束をするのです。これは北東アジア非核地帯条約を提唱してきた人たち、例えば民主党核軍縮促進議員連盟や長崎市、市民団体のPeace
Depot、が長い間PRしてきたことの内容です。しかも、この筋書きなら北朝鮮も乗って来る可能性は高いと思います。
その結果、世界中で緊張の一番高い地域の一つ、北東アジアには安定的な平和のバランスができることになります。となると、次は中東の核問題についてどうしようという形で進展する可能性が出て来ます。それにも成功すれば、トランプ氏は歴史に残る大仕事を達成したことになります。
誰が猫の首に鈴を付けるのかですが、自分たちの意図と正反対のことを安倍政権には期待できません。となると、私たち市民、それも世界中の市民が提案し世界の都市が圧力を掛ける、というくらいしか手立てはないように思えます。
そして、このような問題提起をしてそれが上手く行かなかったとしても、失われるものは何もありません。
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コメント
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トランプ氏はビジネスマンですから損得勘定が一番なのではないでしょうか。だから、駐留米軍の経費は100%日本が持てばいいのです。つまり、今の駐留米軍を25%縮小するということです。
世界の警察官はもうやめようと言う事ですから50%縮小でもいいのかもしれません。であれば日本の負担分はもっと減ります。
投稿: 損得勘定 | 2016年11月16日 (水) 00時19分
「損得勘定」様
コメント有難う御座いました。なるほど、そちらに合わせるという手もありますね。安倍総理はどちらを選ぶのでしょうか。また、それ以外の選択肢もあるのかもしれませんが--。
投稿: イライザ | 2016年11月16日 (水) 15時25分