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2016年11月15日 (火)

個体発生は系統発生を繰り返す?   アメリカと日本そして世界はどうなる?


個体発生は系統発生を繰り返す?

アメリカと日本そして世界はどうなる?

 

論理を捨て、エスタブリッシュメントを攻撃し、言いたい放題の無茶を続け、仕事やお金のない多くの人たちの心をつかんだトランプ候補でしたが、「次期大統領」というタイトルが付くや、少しは慎重に行動するようになっていると言っても良いように思います。

 

現時点ではまだ大統領の持つ強大な権力は行使できませんし、憲法等によって大統領に課せられている制約や義務、責任等に縛られることもありませんが、「次期大統領」が「大統領」に準じた言動を取るべきだということくらいは当然、御本人も認識しているからなのだと思います。

 

「地位が人間を作る」という言葉もあるくらいですから、大統領になれば全く問題なくその仕事を全うするようになるのかもしれません。これはあくまで抽象的な可能性としての話ですので、現実はかなり厳しいというのが大方の予想です。例えば、マイケル・ムーア氏の予測は「任期の4年間は持たないだろう」です。

 

私も感覚的にはそれに近い感想を持っているのですが、それを「個体発生」と「系統発生」との反復という形で整理できたらと思っています。

            

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大統領が憲法を遵守しなくてはならないことは既に述べました。法律や制度等、罰則を伴う形で存在している事柄も当然守らなくてはなりません。いくらトランプ氏でもこれらのことを蔑ろにはできないはずです。でもその枠組みの中にも多くの考え方の違いがあり、利害関係や権限等の調整が行われてきたのが政治一般の歴史です。その結果として安定的かつ利益の享受者から見ればバランスの取れた形で整理され稼働しているのが「エスタブリッシュメント」と呼ばれる構造であり、それに属する団体や個人だと考えられます。かなり複雑なプロセスですが、その内容に具体的に立ち入るのではなく、大きく括って、現在までのエスタブリッシュメントの歴史を「系統発生」に準えたいと思います。

 

そうすると、「エスタブリッシュメント」を否定して、自らの価値観と勝手気ままな課題をつまみ食いしてきたトランプ氏が大統領職に就き、新たに「個人」として関わること、つまり「個体の発生」とも言えるトランプ氏のこれからの変化、成長と「系統発生」を比較することにも意味はありそうです。生物の進化と同じく、「個体発生」は「系統発生」を繰り返すのか、あるいは全く別の進化の過程になるのかという点が問題です。別の視点から同じことを述べれば、「本音」から出発して、「建前」に配慮しながら、どのような進化を遂げるのかが問われていることになります。

 

 可能性の少ないシナリオから考えて見たいのですが、ある意味「功成り名を遂げた」今、純粋にアメリカ国民、特に貧しい人々、社会から取り残されたり周辺化されている人々、エスタブリッシュメントから疎外されてきた人たちのためを考え、周りと妥協しながら、それでも完全にはエスタブリッシュメントには取り込まれずに社会改革を行い偉大な大統領の一人として任期を全うする。

 それよりはもう少し現実的、つまり「自己中心的」だと評される彼の性格を少し付け加えて考えて見ると、大統領としての実質的な権力は共和党や議会の主流派に任せて、専ら儀典的な役割を果すことで満足する。もうお金も権力もいらないけれど、大統領として大切にされ、国を代表して世界の王侯貴族との交流に力を入れる。

 もう少し現実的なシナリオを考える上で、トランプ氏が現実に沿った形で様々な施策を実現しながらエスタブリッシュメントと上手く取引することは可能でしょうか。彼が言いたい放題の中で「約束」してきたことはかなりたくさんありますので、その全てを円滑に実現するということは考えにくいので、どこかでぶつかるというシナリオを考えて見ましょう。

(ア) ぶつかるときには、どのような問題についてになるのでしょうか。一例として、高額所得者の税率を上げて中・低額所得者の税率を下げる、という可能性はどうでしょう。これまでのアメリカのエスタブリッシュメントは、高額所得者への優遇措置を取って来ましたので、それに対する直接的な挑戦です。しかし、「自己中心的」で、自分自身が高額所得者であるトランプ氏が、敢えてこのような政策を取ることは考えられないでしょう。

(イ) トランプ氏はオバマケアで既に妥協をしました。となると他の妥協もあり得ます。「法と秩序」についてもこれまでのエスタブリッシュメントの施策をしっかり理解すると、これ以上踏み込むことの是非には気付くはずです。金融・経済政策も、自分のビジネスが不利益になることは避けるでしょうから、これまでの政策を変える可能性は少なくなります。

(ウ) となると、残されてくるのは、防衛・外交の面での政策です。「世界の警察官」「移民」「他国への負担要求」「自由貿易の制限」等々、貿易については国内にも大きな影響を与えますので外国との交渉だけではありませんが、それでも、他国に対する厳しい姿勢で国内の「約束不履行」という声から逃れようとすることは十分考えられます。しかし、外交面ではほとんど素人に近いトランプ氏がこれらの課題をこなすためには、例えばかつてのキッシンジャー氏のような辣腕の専門家が必要です。その他の分野でも、エスタブリッシュメントに妥協したとは思われないような、しかし、専門的にはエスタブリッシュメント内でも力を発揮できるような人を登用できるのかどうかがカギになりそうです。

 トランプ氏の今までの動きからは、幅広い人脈のある人のようには見えません。それ以上に家族に限られた人的資源を元にこれから幅を広げることになりそうです。連邦政府の政治的なアポイントメントだけでも数千人の人が必要になる今、その全てを完全にはコントロールするのは難しいはずです。それに付け入る人も出て来るでしょう。マイケル・ムーア氏だけではなく、反トランプ派の動きももっと大きくなる可能性もあります。そんな混沌とした状況の中、今は抑え始めたそしてこれからも抑えなくてはならない「自己中心的」な衝動が破裂する可能性も大きくなるでしょう。そうなれば、マイケル・ムーア氏の予言通り、4年を待たずして退陣ということになる可能性も出てきます。

進化論と切っても切り離せないのが、突然変異です。「自己中心的」という範囲でトランプ氏の言動を解釈すると、これまでのようなシナリオが考えられますが、多くの人が指摘しているような女性蔑視、人種差別、人権無視、暴力崇拝、ファシスト等がトランプ氏の本質なのかもしれません。そうなると、「系統発生」をモデルにしてトランプ氏のこれからを考えるのではなく、全く違った視点から、例えばかつてのヒトラーの辿ったようなシナリオを元に考えることも必要です。ヒトラーの場合の特徴の一つは国内的にも暴力によって口封じをしたことですが、警察や州兵そして軍隊全てを味方につけることが短期的には難しくても、他国に戦争を仕掛けるとか、大統領になった途端に核兵器使用をちらつかせるといったシナリオはあるのかもしれません。これを阻止するという目的で多くの人がデモに参加しているのでしょうからこちらの可能性こそ心配しなくてはならないのかもしれません。特に我が国に対する基地や核兵器関連の発言にも注目すべきだと思いますが、これも稿を改めて考えて見たいと思います。

 

トランプ氏について、マスコミ報道、ネットの情報だけで判断せざるを得ないのですが、不確定要素ばかりの予測は危険です。しかし世界的に影響力のあるアメリカ大統領のこれからの動きについて、できるだけ冷静に考え、その分析を元にヒロシマの平和な世界を創るための努力をどう続けるのかを再検討し、具体的な対策を練っておくことも必要だと思います。その点についても、考えて見たいと思います。

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