子どもの貧困
NHKが放映した子どもの貧困についての番組が、実はねつ造、あるいはやらせではないかという疑惑がTwitter等で流され、片山さつき参議院議員まで登場して話題になっているようです。
「平和を共有するための朝鮮半島フォーラム」の報告に時間が掛かっていますので、今回は子供の貧困について、首都大学東京の「子ども・若者貧困センター」が作っている「貧困統計ホームページ」 のデータを引用して、何点かの問題提起をしておきたいと思います。
私の下手な説明を付け加えるまでもなく、「貧困統計ホームページ」を見て頂ければそれで十分なのですが、そのためのPRとしてお読み頂ければ幸いです。
ネットでの批判は、NHKの番組に出演した高校3年生の「うらら」さんが、1000円以上するランチを食べていた等の
(事実かどうかは分らない)
情報を元に、彼女が番組で「嘘をついた」そして「NHKのねつ造番組だ」という点が取り上げられています。
この点についてはNHKの方からきちんとした回答が片山議員に届くと思いますので、それを読んでから再度考えたいと思いますが、でも、仮に「ねつ造」だったとしても、子どもたちの6人に一人が貧困だという事実は変わりません。
今回はNHKの肩を持って考えたいのですが、そもそもNHKの担当者がこの番組を作ったのは、その事実がほとんど知られていない上に、対応する法律が作られたにもかかわらず事態があまり改善されていない実態を知らせたかったからなのではないでしょうか。「うらら」さんがテレビに出演したのも同じ理由でしょう。
例えば、東京新聞の報道 によれば、国が2億円の広報費を使って創設しようとした「子供の未来応援基金」には、個人として4億円を寄付した河野経夫さんと敏子さんの他には2億円、合計6億円しか集まっていないそうですし、新聞の記事を引用すると、河野さんは「経団連に所属するような大企業が本気になれば、年間数十億円ぐらい集まってもおかしくない。日本の将来を考えて、積極的に寄付してほしい」と話している、そうです。
こうした本来の意図に重きを置いて、改めて子どもたちの置かれている状況を理解し、大人として、未来の子どもたちのためにできることをするのが政府そして私たち大人社会の責任だと思います。
現状の把握に戻りましょう。「貧困」の定義や日本全体の貧困については「貧困統計ホームページ」を御覧頂くこととして、貧しい生活を送っている家庭、そして子どもが多くいるという事実を数字で見て見ましょう。ホームページの最初のグラフです。
6人に一人は貧困状態の生活をしているのです。しかも、この数字の出所は厚生労働省です。万一、仮にNHKの番組作りに問題があったとしても、こちらの数字には変わりはありません。それに集中すべきなのではないでしょうか。
それ以上の問題があることは、次のグラフが明白に示しています。
「再分配後」というのは、貧富の格差を是正するために、政府が行う施策の効果によって、貧困率がどうなったのかという結果を示しています。2006年は、政府の施策の結果、貧困率がなお高くなってしまっています。ここが問題です。
2009年と2012年には、この逆転現象はなくなっていますが、それだけで喜んではいられません。貧困率そのものが高くなっているからです。再分配しても6人に一人という歴史上最悪の現実は変わっていないのです。
NHKの番組にあれほどの関心を示している片山議員は、子どもたちの置かれている貧困状況が心配で、子どもについての番組に一点の曇りもあってはならないと考えて発言されているに違いありません。そうだとすれば、今後、子どもの貧困解消のため、所属する自民党、官僚組織そして現内閣にも厳しい注文を付けて大車輪で活躍し、子どもの貧困対策の大転換を図ってくれるであろうことに期待しています。
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コメント
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子どもに関わるNPOの人たちは異口同音に「この数年で子どもの貧困が深刻になっている」と言い、子ども食堂や、校門前でパンを配るような活動が全国的な拡がりをみせていますが、意外なことに、学校現場では、そうした状況をあまり把握していないようです。
一つには、家庭訪問を行い難くなったり、個人情報が分かり難くなったり、給食費を教師が集めることもなくなったり、と学校が家庭の状況がつかみ難くなっていることがあるようです。
何もかも学校に押し付ける状況は良くありませんが「ゆとり教育」で育てるはずの地域の教育力やコミュニティーも思うように育っていない中で、まずは多くの人が現実を知ることが重要に感じます。
余談ですが、保育園の待機児童が問題になっています。働きたい女性が働けない状況は解決すべき課題であることは間違いありませんが、子育てに専念したい時期でも働かざるをえない状況があるとしたら、それはもっと大きな問題だと思います。
日本は、子育て(教育)に関して、あまりにも冷たい社会になっているように感じます。
投稿: 工場長 | 2016年8月24日 (水) 07時40分
「工場長」様
コメント有り難う御座いました。
「現実を知る」ことの重要性、おっしゃる通りです。仮に、一人の高校生が貧困ではなかったとしても、我が国の約5000万所帯のうち、控えめに見積もって500万世帯は貧しいと考えられています。子どものいる世帯はそれほどでなくても、多くの子どもたちが貧困な環境に置かれていることこそ問題にして欲しいと思います。その中には、御指摘の、働いても貧困から解放されない「ワーキングプア―」と呼ばれる人たちも入ります。
そのための良い本を思い出しました。阿部彩さん著の『子どもの貧困』(岩波新書)です。どこかに紛れ込んでいると思いますので、探し出して、私ももう一度勉強したいと思います。
投稿: イライザ | 2016年8月24日 (水) 20時17分