韓国の大学生と訪れた高暮ダム その1
韓国の大学生と訪れた高暮ダム その1
先週、「ホログラム日本フィールドワークチーム」として広島を訪れた韓国の大学生8人が、フィールドワークの一つとして「強制連行された朝鮮人」約2000人が、建設に従事させられた高暮ダム学習を実施しました。受け入れ側の日本の代表者として活躍された吉川徹忍さんの誘いを受けて、私も高暮ダム訪問に同行しました。近くから見る高暮ダムは、予想以上に大きなダムでした。
かねてから「一度は」と思い続けていた庄原市高野町の高暮ダムを今回初めて訪ねることができました。高暮ダムでは、後で訪れた宿泊研修施設「ふるさと高暮」(旧高暮小学校跡を利用)の開設を機に1999年以来、毎年高暮自治振興区の人たちが、朝鮮総連の人たちともに「高暮平和の集い」が開催されています。いつかはこの「集い」に参加をと思い続けていたのですが、実現しないまま、この日になってしまいました。今年の「平和の集い」は、9月11日に実施されます。
8月25日朝8時過ぎに広島を発った一行は三次市で、この問題にずっと取り組んでこられた元中学校教員四車ユキコさんと合流し、道すがら何度も車を止め、四車さんから当時の状況を聞きながら、高暮ダムをめざしました。高暮ダムでは、田中五郎さんと草谷末廣さんのお二人の出迎えを受けました。早速準備した追悼のための用具が、高暮ダム堰堤横に1995年に建立された「朝鮮人犠牲者追悼碑」前に準備され、朝鮮半島式の先祖を敬う儀式が行われました。
私も参加者の一人として、四車さんに準備していただいた韓国の国の花といわれる無窮花(ムクゲ:木槿)献花しました。
出迎えていただいた田中さんは、現在庄原市議会議員ですが、「追悼碑」建設当時、高野町長をされており、碑建立のために絶大な協力をされました。田中さんは、「碑の建っている場所は、もともと中国電力の土地であり、なかなか協力を得られなかったのですが、中国電力から『町に寄付』という話があり、町が寄付を受けることで、ようやく実現させることができました」と当時の模様を話されました。田中さんの話を聞きながら思い出したのが、安芸太田町安野にある中国電力安野発電所の敷地内に建立された「安野中国人受難の碑」のことです。この碑は、2010年10月23日に除幕式が行われましたが、建立に至る経過(安野は、裁判を経た)が大きく違うとはいえ、中国電力の対応も随分と変わった(良い方向に)ものだ思いました。草谷さんは、高暮ダム建設で自分の家が立ち退きを強制され、湖底に沈んだしまった体験を持ち、「高暮ダムの証言者」として今も活動を進められています。当時強制的に工事が進んだ様子を説明されました。
「追悼碑」の裏面には、碑建立に協力された方々の名前が刻まれていました。その協力者の名前の中に、「全国被爆教職員の会会長 石田明」を見つけることができました。在りし日の石田先生の姿が、目に浮かんできました。他にも私の知った団体名が、たくさん刻み込まれていました。
場所を「ふるさと高暮」に移した一行は、そこで改めて四車さん、田中さん、草谷さんから、当時の状況の聞き取りを行いました。四車さんからは、自ら手作りした「紙芝居」によって詳しく語っていただきました。
熱心な高暮ダム学習となり、広島に帰り着いたのは午後7時でした。
参加者の声です。
「このようなところで、強制連行が行われ差別があり被害者を生み、亡くなった人たちが会って残念だ。自分たちはこのような事実を初めてわかって、申し訳ないと思う。(涙) 地域の 人たちの中には、朝鮮人の脱走を手助けした人もいる。」
「被害者がこれほどあったことに胸が痛む。(追悼碑に来てみたら)花瓶に花があったのが、心に残った。(犠牲者が)寂しくないように、地域や先生(田中・草谷さん)たちが、守っていることに感動した。」
韓国の大学生にとっても有意義な一日であったようです。
韓国の大学生は、翌日平和公園を訪れ、資料館見学、碑めぐり、在日韓国人被爆者・朴南珠(パク・ナムジュ)さんからの被爆体験聞き取り、日本の若者との交流など、ヒロシマ原爆学習を精力的に取り組み、27日に帰国しました。
高暮ダムの歴史や「追悼碑」建設などについて、明日もう少し詳しく報告します。
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