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2016年8月18日 (木)

核先制不使用宣言  (「オバマ効果」その3)

核先制不使用宣言

(「オバマ効果」その3)

 

 

 

オバマ大統領が「核先制不使用宣言」を検討している、それに対して安倍総理がアメリカ側に反対の意向を示したことがワシントン・ポストなどのメディアで報道されています。

 

オリンピックや高校野球等の熱気に呑み込まれてしまったせいでしょうか、これに対しての国民的な反応が鈍過ぎるような気がしてやきもきしています。背景をきちんと把握した上で、圧倒的な国民世論、いや世界の世論ができないものでしょうか。その世論を背に受けて、オバマ大統領が「核先制不使用宣言」に踏み切ることになればと祈りつつ、問題提起をしたいと思います。

 

ここで、我が国の世論には言及しましたが、アメリカの世論はどうなのでしょうか。実は、オバマ大統領の広島訪問の結果、そして前にも「オバマ効果」として取り上げました が、プラハ演説の効果もあって、アメリカの世論は大きく変わりつつあります。「オバマ効果」では、2015年までの世論調査の結果を示して、何故それほどドラスチックにアメリカの世論が変って来たのか説明しましたが、2016年、広島訪問が決まった後の世論調査の結果も含めたグラフを御覧下さい。驚くべき変化が起きているのです。

              

1945200920152016

               

 このグラフは、「原爆投下は正しかったか」という問に対して「Yes」と答えた人のパーセントを示しています。1945年は85% (ギャロップ社)2009年は67% (キニアピック大学)2015年は56% (ビュー・リサーチ・センター)、そして2016年は45% (ユーガブ社)です。カッコ内は調査した会社または団体です。

 

簡単におさらいをしておくと、オバマ大統領がプラハで「核兵器を使った唯一の核保有国」という言葉と「道義的責任」という言葉を使ったこと、さらには広島訪問を実現させたことで、「原爆投下は正しかった」という判断を絶対視しなくてはいけないと教え続けられてきたアメリカ国民が、その頸木から解放され始めた、ということなのです。

 

その事と「核先制不使用」の関係は明らかかもしれませんが、念のため説明しておきましょう。この言葉は、「核兵器を持っている国に対しては、自分の方から先に核兵器を使わない」、そして、その論理的な帰結として、「核兵器を持っていない国に対しては、核兵器を使わない」という意味です。

 

集団的自衛権についての議論も関係してきますが、日本は核兵器を持っていませんので、後者、つまり「核兵器を持っていない国に対しては、核兵器を使わない」に重きを置いて考えて見ましょう。

 

歴史的に、広島・長崎への原爆投下は「核兵器を持っていない国に対しての核兵器の使用」です。つまり「核の先制使用」だったのですが、過半数のアメリカ人がそれは正しくないと言うのであれば、それは「核先制使用」と表現されるのです。もし、この方針が1945年の時点で採用されていれば、広島・長崎への原爆投下は起りませんでしたし、これが今後のアメリカの方針になるのなら、第三の[広島・長崎]は起こらなくなるのです。

 

これがアメリカの世論です。その世論を作ったのはオバマ大統領ではありますが、広島訪問の成果だと言っても良いでしょう。ヒバクシャそしてヒロシマが熱心に広島訪問を勧めた結果がこのような形になったのです。

 

安倍総理がこの方針に反対するなどということは、常軌を逸しているとしか考えられません。それは、広島・長崎の歴史と重ねて考えると、彼の言っていることは、「広島・長崎への原爆投下は正しかった」に他ならないからです。

 

ヒバクシャそしてヒロシマへの侮辱も好いところですが、今後、安倍総理に「唯一の被爆国」という言葉を使う権利はなくなりました。そして、広島選出の国会議員全員、強く安倍総理に抗議して発言を撤回させるべきですし、特に岸田外務大臣の責任は重いのではないでしょうか。

 

まだまだ言いたいことはたくさんありますが、少し頭を冷やした上で続けたいと思います。

 

 

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コメント

松井広島市長は今年の平和宣言の中で---この広島の地で「核兵器のない世界を必ず実現する」との決意を表明した安倍首相には、オバマ大統領と共にリーダーシップを発揮することを期待します。---とおっしゃいました。

きっと、広島市長として、これまでのどの核実験に対するものより強い抗議をされることと思います。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。そう期待しましょう。そして湯崎知事にも。このことも、再度取り上げたいと思います。

あれだけオバマ大統領の広島訪問を盛り上げで歓迎したマスコミも、このことに関して黙っている事は許されませんし、首相、外務大臣、広島市長、広島県知事にも、その行動を問いただす責任があると思います。

「読者」様

コメントありがとうございました。おっしゃる通りだと思います。ここでは問題提起を続けます。

安倍総理は
「「ハリス司令官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道になるのか分からない」と述べ、発言を否定したそうです。
だからといって、核の先制不使用とすべきだともいってないようですから、微妙ですね。

「宇品灯台」様

コメント有り難う御座いました。

オバマ大統領は広島訪問後、何かをしたいという意思表示をしています。例えば、包括的核実験禁止条約の代りになるような措置を国連が取ることの提案等なのですが、その一環として、核の先制不使用を宣言することは当然、検討しているでしょう。上院議員の有志や国際的なNGO、学識経験者等多くの人たちがこのところその働き掛けをしています。

「そんな話はしていない」と安倍首相が誇らしげに言って良い立場ではなく、「核の先制不使用宣言を出すべきだ」とアメリカに対して、他国に先駆けて積極的に働き掛けるべきなのが「被爆国」日本の立場です。

オバマ大統領は「核の先制不使用」を、単に米国の大統領宣言に終わらせずに、国連で核兵器の保有を許されている5つの常任理事国のすべてが先制不使用を決議することを目指しているようです。

そして、残された数ヶ月で、米議会が批准を拒否しているCTBT(核実験禁止条約)の実質的な発効、米議会が可決した核兵器の近代化計画の縮小、LRSO(限定核戦争を想定した新型ミサイル)開発の延期などの実現に向けてあらゆる検討をしているようです。

Obama plans major nuclear policy changes in his final months
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/obama-plans-major-nuclear-policy-changes-in-his-final-months/2016/07/10/fef3d5ca-4521-11e6-88d0-6adee48be8bc_story.html?utm_term=.14893f0410c0

その中でも「核の先制不使用」は最も大きなことですが、それに対し、今の国際情勢から見ると、賛成の可能性が高いのは中国、ロシアであり、反対するのは西側諸国のような状況です。

それを全ての国が賛成するように働きかける最も相応しい立場にあるのが日本であることは明らかですが、それが望めそうにない政権であり、外務省です。それを変えるのは日本国民しかいないように思います。今こそオバマジョリティーではないでしょうか。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

ワシントン・ポストの記事を御紹介下さり、有り難う御座います。

残り6か月という短い時間ですので、実現できることは多くないかもしれません。また、大統領が変わればひっくり返されてしまうという可能性もあるでしょう。しかし、「大統領令」でアメリカの核政策が変わったという事実の重みは否定できません。そこから、新たなエネルギーが生まれ、新たな動きも出てくると思います。

世界の圧倒的多数の市民の意向をオバマ大統領が実現するために、「多数の声」つまり「オバマジョリティー」の力を広め使いましょう。

 

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松井広島市長は今年の平和宣言の中で---この広島の地で「核兵器のない世界を必ず実現する」との決意を表明した安倍首相には、オバマ大統領と共にリーダーシップを発揮することを期待します。---とおっしゃいました。

きっと、広島市長として、これまでのどの核実験に対するものより強い抗議をされることと思います。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。そう期待しましょう。そして湯崎知事にも。このことも、再度取り上げたいと思います。

あれだけオバマ大統領の広島訪問を盛り上げで歓迎したマスコミも、このことに関して黙っている事は許されませんし、首相、外務大臣、広島市長、広島県知事にも、その行動を問いただす責任があると思います。

「読者」様

コメントありがとうございました。おっしゃる通りだと思います。ここでは問題提起を続けます。

安倍総理は
「「ハリス司令官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道になるのか分からない」と述べ、発言を否定したそうです。
だからといって、核の先制不使用とすべきだともいってないようですから、微妙ですね。

「宇品灯台」様

コメント有り難う御座いました。

オバマ大統領は広島訪問後、何かをしたいという意思表示をしています。例えば、包括的核実験禁止条約の代りになるような措置を国連が取ることの提案等なのですが、その一環として、核の先制不使用を宣言することは当然、検討しているでしょう。上院議員の有志や国際的なNGO、学識経験者等多くの人たちがこのところその働き掛けをしています。

「そんな話はしていない」と安倍首相が誇らしげに言って良い立場ではなく、「核の先制不使用宣言を出すべきだ」とアメリカに対して、他国に先駆けて積極的に働き掛けるべきなのが「被爆国」日本の立場です。

オバマ大統領は「核の先制不使用」を、単に米国の大統領宣言に終わらせずに、国連で核兵器の保有を許されている5つの常任理事国のすべてが先制不使用を決議することを目指しているようです。

そして、残された数ヶ月で、米議会が批准を拒否しているCTBT(核実験禁止条約)の実質的な発効、米議会が可決した核兵器の近代化計画の縮小、LRSO(限定核戦争を想定した新型ミサイル)開発の延期などの実現に向けてあらゆる検討をしているようです。

Obama plans major nuclear policy changes in his final months
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/obama-plans-major-nuclear-policy-changes-in-his-final-months/2016/07/10/fef3d5ca-4521-11e6-88d0-6adee48be8bc_story.html?utm_term=.14893f0410c0

その中でも「核の先制不使用」は最も大きなことですが、それに対し、今の国際情勢から見ると、賛成の可能性が高いのは中国、ロシアであり、反対するのは西側諸国のような状況です。

それを全ての国が賛成するように働きかける最も相応しい立場にあるのが日本であることは明らかですが、それが望めそうにない政権であり、外務省です。それを変えるのは日本国民しかいないように思います。今こそオバマジョリティーではないでしょうか。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

ワシントン・ポストの記事を御紹介下さり、有り難う御座います。

残り6か月という短い時間ですので、実現できることは多くないかもしれません。また、大統領が変わればひっくり返されてしまうという可能性もあるでしょう。しかし、「大統領令」でアメリカの核政策が変わったという事実の重みは否定できません。そこから、新たなエネルギーが生まれ、新たな動きも出てくると思います。

世界の圧倒的多数の市民の意向をオバマ大統領が実現するために、「多数の声」つまり「オバマジョリティー」の力を広め使いましょう。

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