核先制不使用宣言 その2
昨日は「今後、安倍総理に『唯一の被爆国』という言葉を使う権利はなくなりました」と書きましたが、それは強調のためで、これまでは使う権利があったという意味ではありません。念のため。
さて十分頭が冷えたどうかは別として、昨日の続きです。アメリカが「核先制不使用宣言」をすることで、非核保有国が、広島・長崎と同じ運命にさらされる危険性はなくなり、同時に、「広島・長崎への原爆投下は間違いだった」ことを認める結果にもなります。大統領訪問の是非が議論されたときに取り上げられた「謝罪」という視点から考えると、「ごめんなさい」と直接、言ってはいませんが、「原爆投下そのものは間違っていた」と言うに等しいのですし、「今後、同じことはしません」という決意でもあるのですから、100パーセント「謝罪」することにはならなくても、その方向にかなり踏み込んでいることにはなるでしょう。これを「謝罪のプロセス」が始まったと考えることもできるのではないでしょうか。
以上は、昨日述べたことの繰り返しなのですが、問題はその次です。曲がりなりにもアメリカが「謝罪のプロセス」を始めたにもかかわらず、日本の総理大臣が、それに対して「原爆投下は正しかった。だから謝罪は必要ない」と言う必要があるのでしょうか。いやそんなことが許されるのでしょうか。広島訪問に当っては「謝罪」を前提にはしなくても良いというのが多くの人の判断でしたが、でもアメリカ側から謝罪、あるいはそれに近い意思表示があった場合の対処の仕方は少し違うでしょう。謝罪を拒否することはないでしょうし、自分の都合だけではなく、被爆者や戦争の犠牲者に「思いを致す」のなら、拒否してはいけないのではないでしょうか。
次に、国際社会から、日本という国がどう見られるのかを考えて見ましょう。アメリカが「核先制使用」という方針を変えて「不使用」にするかどうかの議論をしているときに、日本が諸外国の先頭を切って「不使用」に反対することで、仮想敵国にとっては「悪の元凶」という位置付けにされてしまう可能性も考えておくべきでしょう。
実際に戦争、あるいはそれに近い関係にある国同士、「屁理屈」としか言いようのない理屈をつけて軍事行動を取ったり、その他の理不尽な言動に走ったりすることは歴史上枚挙に暇ありませんが、それも視野に入れつつ、冷静に論理的議論をしておくことも大切です。
「不使用」に反対する理由として、安倍総理は北朝鮮に対する抑止力が弱まると考えているようですので、北朝鮮に絞って考えましょう。しかし、一般論としてどの国にも当てはまることがほとんどです。
北朝鮮が、核を使わないまでも、アメリカが核を使わざるを得ないような状況として、具体的にはどんな可能性があるのでしょうか。核使用に準ずる戦闘行為としてどんなことが考えられるのか、常識的には難しいのですが、一例として、38度線を越えて本気で戦争を再開する可能性を考えて見ましょう。
しかし、そうなった場合、アメリカは本当に核兵器を使うでしょうか。かつての朝鮮戦争でも可能性が論じられ、「使わない」という結論になったにもかかわらず、今という時代にそれを覆してまで核兵器を使うという「立派な」「口実」は先ず見付かりません。
さらに、南と北の休戦が続いているのは軍事的な力関係だけではなく、両サイドの経済力、国民の意思、周辺諸国の関与の仕方等、複雑な要素が絡み合っての結果だと考える方が合理的です。
ここでのポイントは、安倍総理が理由として挙げた、北朝鮮に対する「抑止力」の内実が存在しないということです。つまり、核によって初めて「抑止」でき、他の方法では抑止できないという対象がないのです。にもかかわらず、「抑止力」の低下を云々しても意味がありません。他の可能性を検討しても良いのですが、ポイントは伝わったと思いますので、次に移りましょう。それは次回に。
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 核先制不使用宣言 (「オバマ効果」その3) | トップページ | 核先制不使用宣言 その3 »
「ニュース」カテゴリの記事
- #加藤友三郎 #英文冊子 #完成記者会見 を #中国新聞が記事に してくれました ――友三郎を理解する人の輪が広まります―― (2024.02.29)
- #間違った発音 の #オーバードース に #辟易しています ――#米酢 は #三種類 の読み方があるようですが―― (2024.01.31)
- #BSの3チャンネルで #能登半島地震 情報 ――#被災者 からの #要請 があるまで #何もせず ?―― (2024.01.11)
- #ダイハツ だけではない #自動車業界 の #検査不正 その他の #不正 ――#最優先 されるべき #ユーザー の #安全性 はどこに?―― (2023.12.22)
- #広島市の資料 には #教育勅語 は #「良いもの」 として引用されています ―― #稲田朋美 元防衛大臣発言と ほぼ同じです―― (2023.12.20)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- #政府の #愚民化政策が大問題 ――#同級生の投票行動から考える・第13回―― (2024.08.28)
- #災害を #ネタにする? ――#今更ですが シリーズ 2―― (2024.06.28)
- #企業・団体献金禁止 に #反対する #小沢一郎議員 ――文字通り #語るに落ちた―― (2024.05.23)
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
- #なぜ今 #公費負担 なのか ―― #公私混同 を #止めさせるため―― (2024.05.18)
「平和」カテゴリの記事
- #ハワイ大学での講義 ―― #反戦・反核がテーマです ―― (2025.01.27)
- #内灘闘争の歴史を学ぶ ――#JR総連中国地方協議会第38回定期委員会2部―― (2024.10.06)
- #式典から排除 の #基準は何ですか? ――#誰の基準か #何が目的か―― (2024.09.01)
- #駐日大使 の #式典招待は ――#知って貰うため #友達になって貰うため―― (2024.08.31)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
「歴史」カテゴリの記事
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #コロンブス問題 #30年前にも取り上げました ――#なぜ #大切な点が #伝わらないのでしょうか―― (2024.06.16)
- #石棺で覆い #100年以上かける覚悟 ――#東電 も #このことは分っているはず―― (2024.06.15)
- #できないことを #できると言うのは #詐欺 ――#廃炉はできません―― (2024.06.14)
コメント