「平和を共有するための朝鮮半島フォーラム」の報告 その1 ヨルダン川
ヨルダン川
「平和を共有するための朝鮮半島フォーラム」は、ソウル大司教区と平和共有研究所の共催で、8月19日の夕方から20日の一日半、ソウルのカトリック大学を会場として開かれました。ディナーの前の講演も含めて、全部で20人のスピーカーとコーオーディネーターが参加しました。カトリックの関係者やマスコミも含めて約300人が、熱心に講演を聞き、朝鮮半島の平和を実現するために祈り、考える一日半でした。
この会議のタイトルを日本語に訳す上で、「朝鮮半島」は後ろに持って来ましたが、英語のタイトルは「2016
Korean Peninsula Peace-sharing Forum」ですので、ここでの「平和」は特に朝鮮半島での平和に重きが置かれています。
会議の様子
しかし、今回の参加者の中には世界各地での紛争や悲劇を直接経験した人も多く、特に、中東とバルカン半島からの報告は、日常的には私たちがあまり触れることのない大切な教訓を含んでいました。詳細は、英語版だけで120ページもある予稿集がありますし、この会議の総括のためのホームページも作られると思いますので、簡単に私の印象をまとめておきたいと思います。
中東を拠点として活動している環境団体「エコ・ピース」の代表からは、汚染され死につつあったヨルダン川をエジプト、イスラエル、ヨルダン、パレスチナの市民からなるNGOが生き返らせた報告がありました。中でも心強かったのは、ヨルダン川に面する都市の市長たちが、各国の協力体制を作る上で重要な役割を果したことです。さらに市民参加を促進しまた異なった都市同士の対話を可能にしていたことからも、環境問題に協力して取り組むこと、そして住民の視線で仕事をする都市が平和創りの大切な要素であることが強調されました。
これを、朝鮮半島に当てはめられないかという期待があります。南と北の間の非武装地帯はしばしば「38度線」と表現されるため、ベルリンの壁と同じ「線」のような存在だと考えられ勝ちなのですが、実は、幅が4キロほどあります。1953年の休戦以来63年間、誰も入ることができなかった地域ですので、人間の手が加えられていない自然の状態のまま保たれています。多様な生物の棲息地としてこの自然を守り、東西約250キロの内の一部を「環境・平和公園」にできないかという提案もされています。その視点からは、「エコ・ピース」の活動が一つのモデルとして貴重なのです。
しかし、「エコ・ピース」の活動にもかかわらず死海の水位は減り続けています。その対策として世界銀行の支援の下、紅海から運河を掘って死海につなぐ計画が進められています。巨額の投資が行われるため注目されていますが、環境派の人たちからは、このような運河は、死海を本当に殺してしまうだけでなく、この地域の水事情を根本的かつ非可逆的に変えてしまい、自殺行為だという批判も出ています。
海水の塩分はほとんど塩化ナトリウムですが、死海の水には海水より濃度の高い塩化マグネシウムが含まれていて、その違いによって死海そのものが影響を受けさらにはそれにつながっている地下水脈への影響も十分には理解されていないとのことです。
ヨルダン川は息を吹き返しましたが、それでもう何もしなくても良いのではなく、ヨルダン川周辺地域の自然環境を全体として再生させなくては問題の解決にはならない、さらには気候変動の影響も含めた解決策こそ、未来のためには必要だということです。
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