世界は平和になっている (2)
世界は平和になっている (2)
前回、「独立」 = 「平和」= 「核兵器反対」という等号が成り立つと書いてしまいましたが、一言お断りしておきます。スコットランドとタヒチはその通りなのですが、グアムについては、また他の植民地についても、「核兵器反対」あるいは「核兵器廃絶」は未確認です。調べればそうなるとは思いますが、今の段階では私の願望と言う方が正確です。
とは言え、武力で抑え付けられていた人々が独立することは人権と平和の回復ですのでこの点は再度強調しておきたいと思います。第二次大戦後に多くの植民地が独立して、世界地理の試験問題としては格好の種になったことも懐かしく思い出しますが、それと同時に大切なのは、こうして独立した国々が、その後、独立を失っていないことです。19世紀、さらに20世紀の前半には、日本も含めて多くの国々が植民地を求めて戦争をし続けたのですから、それに比べれば大きな進歩です。
ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授の大著『The Better Angels of Our Nature』でもこの点を重く見ています。既にこの本については言及していますが、念のため繰り返すと、副題は、「なぜ人類は非暴力的になってきたのか」で、2011年に出版され、アメリカを中心に世界的に注目され議論を呼んだ800ページ以上の大著です。(そして、日本語訳は幾島幸子、塩原通緒のお二人の手になるもので、青土社から出版されています)
引用したいのは、1946年以降2011年までの世界の出来事リストなのですが、ピンカー教授による「世界は平和になっている」ことを示すデータです。
● この間に、核兵器は使われていない
● 冷戦で対立した二つの国同士の戦争はなかった
● 「大国」間の戦争もなかった(中国が大国になったのは、朝鮮戦争後、と解釈)
● 1953年から数えて、紀元前2世紀のローマ以来、最も長い期間、大国間での戦争がなかった時期
● 西ヨーロッパの国同士での戦争もなかった
● 1人当たりの所得が最も高い44か国の間での戦争は、この間、1956年のハンガリーへの侵略を除いてゼロだった
● 先進国が、他国を侵略して領土を拡張することもなかった
● 多くの国が独立した
● 国際的に認められていた国が侵略により独立を失うこともなかった
1946年以降が平和の時代だということは、それ以前がより暴力的な時代だということでもあります。その点を日本の歴史を振り返って確認しておきましょう。
まず、ペリーの来広した1853年から1945年までに、外国との戦争で亡くなった日本人の数は約310万人です。その後、1946年から今までの71年間、外国との戦争で亡くなった日本人の数はゼロ、つまり「0」です。しかも、この310万という数字のほとんどは、1895年の日清戦争から1945年に終った第二次世界大戦の間のほぼ50年に限定されています。
戦後の71年を捨てて、戦前に戻ろうという掛け声が大きくなっていますが、それは、50年の間に300万以上の人間の命が失われた時代に戻ろう、ということに他なりません。そんな時代に戻ることを本気で考えている人がいるとは未だに信じられませんが、日本の歴史をさらに遡ってみると、もっとドラスチックな物語が現れます。
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