政治家の傲り (1)
政治家の傲り (1)
小選挙区制度を導入するための法案は衆議院で可決、参議院で否決され、その結果、憲法59条の規定で両院協議会が開かれました。しかし協議は整わずその報告を衆議院議長にしたところ、その報告を受け取って貰えないばかりか、議長仲裁案なるものが出され、与野党党首の合意の下、最終的には小選挙区比例代表並立制と呼ばれる現在の制度が導入されました。
問題だったのは、両院協議会が結論を出せないときには、憲法第59条の本則に戻って、つまり衆議院参議院両方が可決しなければ法律はできないという原則を尊重して、小選挙区法案は廃案にされるべきだったのにそうはならなかった、ということです。これに関係する国会法はどうなっているのでしょうか。
第94条 両院協議会において、成案を得なかつたときは、各議院の協議委員議長は、各々その旨を議院に報告しなければならない。
第95条 各議院の議長は、両院協議会に出席して意見を述べることができる。
この二条の意味を考えると、94条での「報告義務」を協議委員議長が果たした時に、両議院議長が拒否権を持つとはとても読めないことです。そうなら95条の「意見を述べることができる」どころではなく、成案についての拒否権を持つことを明記しなくてはならないはずです。
百歩譲って、59条の本則に戻ることが何らかの理由で好ましくないと、衆議院ならびに参議院両院の議長二人とも考えた場合、成案を得られなかった事実は無視して、自分で「仲裁案」を作ることまで想定しそれを認めているのでしょうか。
もしそうなら、わざわざ「両院協議会に出席して意見を述べることができる」という規定を設ける必要はないでしょう。95条の意味があるのは、両院議長といえども、この条項がなければ両院協議会に出席もできず、意見も述べられないという前提があるからなのです。ようやく意見は述べられるという権利は得たものの、成案ができたかどうかという最終決定を覆すだけの権限を、95条が与えているは読むことは如何に何でも無理でしょう。
現実には、憲法にも国会法にも規定のない「仲裁案」を密室の中で作り、それを両院協議会での成案だというでっち上げをし、加えてそれを原案にして、衆議院や参議院での審議を省略して形式的な決定をしたのです。
ここで歴史の「if」を考えると、その代りに国民投票に付することはできなかったのかという疑問が生じます。誰でもそう感じるかどうかは別問題なのですが、私は敢えてその問題提起をしたいと思います。その意味は憲法全体を考える上での大切な現状認識につながるからです。この点については、機会を改めて論じたいと思います。
さて、本論に戻って、当時、議長仲裁案をまとめ、それを国会の最終決定として認めさせた中心人物は、土井衆議院議長、細川総理大臣、河野自民党総裁の三人です。この三人の頭の中にはもちろん国民投票などという可能性はなかったはずです。何しろ、三人とも参議院の意思を無視するために走っていたのですから。参議院の意思を無視することに何の問題意識もなかった人たちが、国民の意思を慮る可能性を頭に置いていたとは到底考えられません。
ここで、この三人が、仮に意図するところは善意だったにしろ、参議院の意思を尊重しなかったから小選挙区制度ができ、憲法改正にまで発展しているという流れを作ったという命題を考えて見たいと思います。さらに、命題の「逆」という意味を、論理関係を離れて単に順序の問題として使って考えたいのですが、憲法改正への道筋を作ったのはこの三人だ、という順序を「逆」と考えると、その次に待っているのは「けしからん」という批判であり非難です。これがマスコミ等の良く取る態度です。
でも、非難しても何もなりませんので、十分条件としての「お願い」あるいは建設的な「提案」として述べたいと思います。それは、亡くなった土井さんは別として、お二人とも、今の選挙制度になってしまったことには忸怩たる思いをお持ちのようですので、今一盛り上がらない、「今の選挙制度を改正して、より比例代表制度に近い制度を作る」という問題提起を、全国行脚でも何でもして広めて頂きたいということです。
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