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2016年6月20日 (月)

「ヒロシマの心」とは道義的な目覚め (ヒロシマ演説を読み解く――その9)

「ヒロシマの心」とは道義的な目覚め

(ヒロシマ演説を読み解く――その9)

 

オバマ大統領のヒロシマ演説を取り上げています。演説の文章を参照したい方は、[参考資料] を別のウィンドウで開いて頂ければ幸いです。

 

これまでオバマ大統領は、私たちが世界を変える力を持っていることを具体的な事例で示しました。最終段階の仕上げでは、段落(t)から始まって、変革の本質とは何かを示し、「ヒロシマの心」の意味を明らかにします。

 

Photo_3

 

出発点はアメリカの独立宣言です。その中でも中心的概念である「life, liberty and pursuit of happiness」がテーマです。直訳すれば、「生命、自由、そして幸福の追求」です。その意味をオバマ大統領は原爆以前に戻って、広島の家庭の団欒を描くことで示しています。生命が大切なことは言うまでもないのですが、「幸福の追求」の意味を、このような日常生活そのものと重ねたことは、ウエスト教授の4原則の言わんとしていることの視覚化だと考えられます。そして、「自由」とは、このような「生活」が、国家とか宗教、科学技術、そして人間の傲慢さというような「力」によつて歪められずに継続できる状態を指していることも明らかでしょう。

 

このような価値観を持つ世界中の多くの人間たちの代表として、いわゆる「リーダー」と呼ばれる人たちが、自分たちに与えられた「力」を行使して社会を変えて行く際に、一人一人の生命や生活を最優先することこそリーダーとしての義務であり、そこから豊かな未来が開けることを、段落(x)では述べています。これがウエスト教授のリストでは第④原則として掲げられていることなのです。

 

そして、段落(y)では、こうした変革が子どもたちのために行われるのだという、ウエスト④原則中の第③原則が確認されています。ここだけではなく演説中には子どもへの言及が多いのですが、この段落でその全てを言い尽くしていると言って良いでしょう。

 

最後の段落(z)では、再度、広島と長崎の持つ意味を再確認していますが、それは人類が子どもたちのために世界観を変え、戦争のない未来、核兵器のない未来を築くことであり、それが可能であることの再確認です。広島・長崎の経験がこれまでの人類の過去からの教訓を生かせる新たな「目覚め」としての役割を担っており、その意味を理解することこそ、私たちが輝ける未来を拓く力なるという、被爆者たちのメッセージそのもの、つまり「ヒロシマの心」であることを宣言する締めの言葉です。

以上、オバマ大統領の「ヒロシマ演説」とウエスト教授の「変革のための4原則」とが、いわば表裏一体の関係にあることを説明してきました。その背景には、人種差別を撤廃するためのアメリカ社会の数世紀にわたる歴史があります。それが、人類未曽有の体験である「ヒロシマ・ナガサキ」から被爆者が創り出した哲学と本質的につながっていること、両者とも、人類の抱える本質的な問題を出発点にしつつ、未来への力強いメッセージになっていることが少しでも伝わったでしょうか。

 

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