変革のための4原則 (理想を掲げる――その3)
変革のための4原則 (理想を掲げる――その3)
変革のための4原則
(理想を掲げる――その3)
「ある理想について、現実を変える力を持っている人がその力を行使しないにもかかわらず、その理想を掲げ続けて公にアピールして良いのか」
という形の問題提起から始めて、理想も現実も複雑であること、現実に働き掛ける「プレーヤー」も多様で、それぞれのプレーヤーが理想と現実の間の「折り合い」をどう付けているのかが問題だ、という形で問題提起を整理してみました。その上で、プレーヤーの中でも典型的なケースであるアメリカの大統領の場合の「折り合い」の付け方として、リンカーンとブッシュ両大統領について振り返ってみました。
しかし、その他にもプレーヤーは多くいます。私たち一人一人もプレーヤーです。その点も頭に置きながら、現実を変え、理想を実現するための努力の仕方について、コーネル・ウエスト教授の「変革のための4原則」を元に考えて見たいと思います。なぜこれらの4原則が大切なのかという説明は省きます。詳しいことは、ウエスト教授の『人種の問題』をお読み頂ければ幸いです。
ここで一つ注釈を付け加えておきたいのですが、最初の問題提起で「その力を行使しないにもかかわらず」と書きましたが、これは、その人が意図的に力を使わなかった場合だけではなく、結果として効果がなかった場合全てについて言及している積りです。私たち一人一人の持つ力は小さいですから、元々大きな結果につながる可能性は低いのですが、それでも努力をし、その結果が十分に現れなかった場合なども含みます。
またまた、「能書き」が長くなりましたが、「変革のための4原則」です。
① 変革のための力は私たちの中にある。歴史的な文脈を踏まえた上での私たちであり力である。
② 「Life」が基本。生命・日常生活・人生・人類--身近なところから始めて、多くの人と共鳴し、人類が一体となって行動する。
③ 変革は未来の世代・子どもたちのためにする。
④ こうした変革を行う上で、古い枠組みに捉われない勇気あるリーダー、同時に、”Better Angels of Our Nature”(私たちの中にある最善のもの)を引き出すことのできるリーダーが必要。
オバマ大統領の広島訪問とヒロシマ演説が、これら4つのポイントを踏まえたものであることは、「ヒロシマ演説を読み解く」で詳しく説明したいと思っていますが、ざっとお読み頂いただけでも、大枠では賛成して頂けるのではないかと思います。今回はこれに関連して二点だけ取り上げておきます。
一つは、多くの人がヒロシマ演説に感動したことです。その結果、核兵器の廃絶や世界の平和のために自分も何かをしなくては、何かをしたいという気持になった人が多くいたということです。仮に、その気持が長続きしなかったり、具体策につながらなかったりといった結果になったとしても、次に同じような刺激を受けた時には力になる準備活動として評価できるケースもあるでしょう。
また、「何かをしたい」という気持は、一人の人間の中で新たなエネルギーを生み、それが核や平和という分野ではなくても次の行動につながる可能性は大きいはずです。「私たちの中にある最善のもの」を引き出すとは、このようなことを指すのだろうと思います。ブッシュ大統領の非拘束者取扱法についての考え方は、「私たちの中にある最善のもの」ではなく、極論すれば「最悪のもの」を引き出すことにつながったのではないかと思います。
次に、当然、廃止されるべき岩国基地を廃止せずに、岩国では米兵の激励をして軍国主義的な傾向を煽った、それは許されるのか、という問題提起に一理あることは認めます。
先ず、それが意図的であるかどうかは別として、オバマ大統領が岩国基地を廃止する上で、私たち一人ひとりより大きな力を持つことは当然ですが、リンカーンの場合と比較しても、一人で廃止できる立場にあるのかどうかは疑問です。とは言え、どの程度廃止のための努力をしたのかは、事実として確認しておくべきことなのかもしれません。
しかし、岩国基地があるという前提、また広島は訪問するという前提で考えると、岩国での言動は基地に配属されている米兵たちが持ったかも取れない反発を、「広島訪問は良かった」という「共鳴」に変える力があったように思います。②の原則が大切な所以です。
しかも、「煽った」のとは逆に、もっと長くても良かった演説を短くしその代り握手に変えたこと、そして短い演説の中でも、軍事行動以上に災害の救助や支援の活動に力を入れたこと等、力の支配を是認し軍拡を奨励することはできるだけ抑える努力をした、と私には読めました。
次回は「ヒロシマ演説を読み解く」に戻って、「理想を掲げる」で考えたことも含めて論じられればと思います。
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