「とある」ブログと「かぶる」かもしれませんが ――違和感のある言葉4――
「とある」ブログと「かぶる」かもしれませんが ――違和感のある言葉4――
「とある」ブログと「かぶる」かもしれませんが
――違和感のある言葉4――
今日、時の記念日はなぜか忙しい日になってしまいましたので、どうしようかと迷っている内に、「とある」トピックを思い出しました。「違和感のある言葉」です。
最近は、このような形で、「ある」の代りに「とある」が使われる頻度が高くなっているようです。タイトルも、正確に言い直せば、このトピックは「ある」ブロガーさんの取り上げるトピックと「重なる」かもしれませんが、の意味です。
さて意味の違いです。「とある」とは、「偶然性」を示している「と」と一緒ですから、偶然目にしたり、行き当たったりした場所であることを示す言葉です(三省堂『大辞林』)。「ある」は、「(事物・人・時・場所などを漠然と指していうときの語、あるいはそれらをはっきりさせずにいうときにも用いる」のですから偶然性のあるなしにかかわらず使われる言葉です。
この違いを覚えておくために便利なのは、日本古来の知恵です。「昔々、とあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」とは言いません。「あるところ」は偶然ではなく、例えばあなたの住んでいるところかもしれないですよ、という意味まで持たせているのです。
もう一つ、「とある」を考える上で参考になるのは「と、その時」です。「とある」は場所の場合もありますので空間的な事柄についての言葉ですが、「とその時」は時間的な言葉です。アインシュタインを引っ張り出す必要はないのですが、「時間と空間」は交換可能だと考えることで、面白い発想が生まれます。
「とその時」、それを誇張して書くと「と、その時」になりますが、これは例えば次のような場面に使われます。シャーロック・ホームズが密室の謎を解明すべく、熱心にある部屋のクローゼットを調べていたとしましょう。「とその時、ホームズの後ろのドアが音もなく閉じた」というようなパターンで使われるのが普通でしょう。この場合も、意外性や偶然性を表しています。
「銀行強盗たちは、ようやく12時になって、金庫の鍵を開けることに成功した。丁度その時、警備員が部屋に入ってきた」の「その時」を「とその時」に変える訳には行きません。警備員が定期的に巡回していることくらいは当然頭にあるはずだからです。
時間と空間の互換性まで引っ張り出して、「とある」のおかしさを問題にしてきましたが、「盾」と「矛」のケース でも問題提起をした通り、「盾」が「矛」の役割を果たしてしまうことも現実には起っています。「とある」辞書では、「とある」と「ある」とは同じ意味だと書いてあるのです。念のため、これは皮肉です。「ある」と書く理由は、この辞書を特定しない方が良いという意図を示しているのですが、本とか辞書などには全く縁のない人がたまたま手に取ったのが辞書で、その中にこう書いてあった、という意味ではありません。
いつにもなく、(いや、いつも通りというべきなのかもしれません)、熱が入りかつ長くなってしまいました。
次に「かぶる」の番なのですが、「かぶる」については上智大学の伊藤潔先生のブログ に簡潔かつ的を射た記述がありますので、それを御覧下さい。伊藤先生の記述と「かぶる」ことを避けたいという意図もあります。
タイトルに掲げた「とある」、元へ、「ある」ブログ、ブロガーとは誰か、皆さんお分りですよね。誰でも知っている事物・人・時・場所を特定せずに、「ある」と表現することで、奥床しさを表現できることも示したかったのですが、果たして上手く行ったでしょうか。
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コメント
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「とあるブログ」とあるのは、どのブログなんだろう?
「かぶる」の連用形は、馬鹿にされたようで嫌いです。
ごめんなさい。真面目なブログに下ネタを書いてしま
った(汗)
投稿: ⑦パパ | 2016年6月11日 (土) 10時39分
「⑦パパ」様
コメント有難う御座いました。「とあるとある」とあるのは語呂合わせですね。流石です。ブログを書く皆さん言葉にはこだわっていらっしゃいますね。もちろん、最初に頭に浮かんだのは「⑦パパ」さんですが、「ふぃーゆパパ」さん--古い方のサイトにコメントを頂きました--その他、とても勉強になりす。でも広島弁までは到達していません。
投稿: イライザ | 2016年6月11日 (土) 11時39分