夢と目標の違い
夢と目標の違い
夢と目標の違いはどこにあるのか考えて見ましょう。
例えば、誰かが「お金持ちになりたい」と言ったら、これは「夢」を語っている言葉です。「毎月、1万円ずつ貯金して4年間で50万円貯めたい」は「目標」でしょう。(月1万円だけしか貯めないと宣言した訳ではないので、2万円の月もあるという前提で。)
この違いをもう少し整理したのが次の言葉です。「夢に期限を付けると目標になる」。別の言い方では「期限のない目標は夢にしか過ぎない」。
これは、ナポレオン・ヒルの言葉です。彼は、「成功哲学」の祖と呼ばれますが、1928年出版された『頭を使え。そうすれば豊かになれる』 (原題は”Think and Grow Rich”で、全世界で7000万部も売れた本です。) という著作でその哲学を世界に広めました。
「夢」は、実現できないことの例えとしても使われますので、望んでいても実現できないことを、「実現できる」という範疇に移すために必要なのが「期限」だと言い換えることもできます。
その逆が、多くの人を惑わすために使われていることに警鐘を鳴らすのが、今回の目的です。つまり、本当は実現できるのに、敢て「期限」を外すことで、それが実現不可能なことであるかのような印象を与えるという「詐術」が頻繁に使われているからです。
例えばヒラリー・クリントンさんは国務長官の時に、「核廃絶なんていうことは、2世紀か3世紀先の話で、今、議論すべき問題ではない」という趣旨の発言をしています。実はケリー長官も似たような発言はしているのですが、広島まで来てくれたので、罪は一等減じておきましょう。
それ以上に問題なのは日本政府、特に外務省の姿勢です。その典型的な例が、昨年8月の「戦後70年総理大臣談話」です。「談話」中、広島・長崎にとっては一番身近なテーマである核廃絶に関連した部分を取り上げると、それは次のように短いものです。
「唯一の戦争被爆国として、核兵器の不拡散と究極の廃絶を目指し、国際社会でその責任を果たしてまいります。」
これを読んで、「唯一の被爆国なのだから当然、核兵器がこれ以上広まってはいけないと考えている。それだけではない、最終目的である核兵器の廃絶のため、国際社会で責任を持って努力する」と解釈した方も多いのではないかと思います。それも当然です。このような解釈を誘導するための選び抜かれた言葉がちりばめられているからです。しかし、これまでの日本政府の言動とも照らし合わせて正確に読むと、総理談話の言葉の意味は全く違ってきます。
表面的な印象とは大きくずれていますが、政府が使っている意味での「核不拡散」を目指すという内容は、まず、核兵器の存在は認めるということなのです。その上で、それが増えることは良くないという意味です。しかし、廃絶することが望ましいとは言っていないのです。つまり、核兵器の保有を容認し支持している言葉です。
次の「究極の核廃絶」とは、これも政府の言動に従って解釈すると、最終目的を示すためにこのような表現にしたのではなく、今すぐ核兵器の廃絶はできないし、今すぐ核廃絶のために努力をする気はない、という意味です。二世紀か三世期先の話なら、あるいは「究極」と呼べるほど遠い将来なら、核廃絶を取り上げても良いかも知れないけれど、今すぐ、あるいは被爆者が生きている内に核廃絶をするなどということは非現実的で夢みたいなことだと言いたいのです。その上、核廃絶運動のそのリーダーになる積りもないし、核廃絶のために努力している他の国や団体そして個人に協力する意思は全くない、という意味なのです。
こうした傾向に異議を唱えたのが、オバマ大統領のプラハ演説です。「核のない世界実現のためのリーダーになる」との宣言に続いて、でも核なき世界が実現するのは「私の生きている内ではないかもしれない」とわざわざ付け加えたのは意図があってのことです。スピーチ全体の構成から考えると、この言葉はなくても何の問題もないのです。
でも「私の生きている内に」という時間枠を核超大国のアメリカ大統領が設定したことで、核廃絶が可能かどうかの議論をするときには、「私の生きている内」という枠組みに照らして発言を迫られるという状況が作られました。
核廃絶は「非現実的」だと断定し、私たちの手が届かない遠い先に追いやろうとしていた人たちにとっては大きな痛手でしたが、有限の時間枠ができたことで、核廃絶は一歩前進することになったのです。この稿、続きます。
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コメント
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>「夢に期限を付けると目標になる」
なるほどな~とすごく納得しました。おそらくどこかで
知ったげに自分の言葉のように使うと思いますw
見つけてもシランプリしててください。
投稿: ⑦パパ | 2016年4月14日 (木) 12時37分
⑦パパ様
「納得」のコメント有難う御座います。ナポレオン・ヒルも喜んでくれると思います。
他人から聞いたり、学校で学んだりしたこと等、新しく学んだ知恵を自分に中に取り込んで(内面化して)、それを自分の一部として考えたり活動したり生活したりすることが、人類進化のプロセスの一部なのだと思います。当然、もっと多くの人たちに伝えることもその中に含まれます。
人類の進化に貢献しましょう!!
投稿: イライザ | 2016年4月14日 (木) 14時07分