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2016年4月21日 (木)

大統領の謝罪 No. 2 (「和解」の力 その4)

大統領の謝罪 No. 2

(「和解」の力 その4)

 

オバマ大統領が広島を訪問することに決めた、という前提で論を進めます。

Photo

市長「是非、広島に来て下さい」 大統領「行きたいです」

 

御本人が直接「謝罪のために広島に来たのではない」とは言わないと思いますが、スポークスマン等を通して、「謝罪」を否定するメッセージを発信することもケリー長官の時と同じように行われるはずです。

 

それでも、「行ったこと自体が謝罪だ。怪しからん。」という人たちまで納得させることは難しいかもしれません。後で触れますが、それにも対応策はあります。しかし、それとは全く別次元のもう一つの障害があります。

それは、外務省です。ウィキリークスによると、2009年にオバマ大統領が広島訪問を希望しその旨外務省に伝えたところ、「時期尚早」という理由で、被爆者にも広島市長にも相談せずに、薮中外務次官が大統領の希望を蹴っています。今回は、アメリカの有力紙も応援し、ケリー長官の成功例 もありますので、外務省がそれほど理不尽な対応はしないと思いますが、ここはいつでも注意しなくてはならない存在です。

 

こうした点もクリアーできて、実際にオバマ大統領の広島訪問が実現したとして、何を期待できるのか、また訪問自体を意義あるものにするために、どんな準備をすれば良いのか、私たちの側の心の持ち方はどうあるべきなのか等、広島側、日本側の心構えについて考えて見ましょう。

 

2009年のプラハ演説を思い出す方も多いと思いますし、オバマ大統領もそれは当然視野に入っていると思います。となると、仮にオバマ大統領が広島で演説するとしたら、その内容としてはプラハ演説以上のものを期待して良いでしょう。具体的にそれが何になるかは別として、「期限付き」の目標が入ったものになる公算は大きいと思います。ここれは「夢と「目標」の違い」 で説明した通りです。

 

Photo_2

プラハでのオバマ大統領

 

そして、被爆者の中にも市民の中にもまたそれ以外の方々の中にも「大統領の謝罪」を期待している声もあります。それは今回は実現しないのですが、それをどう捉えたら良いのでしょうか。

 

中には、謝罪の重要性を強調するあまりに、「謝罪をしないのなら広島に来るな」という考え方をしている人たちもいます。大統領が広島に来る最大の理由は「謝罪」であってそれ抜きでは何の意味もない、という立場です。

 

道義的には正しい立場だと言えるのかもしれませんが、この主張通りに事が運ぶためには、過半数のアメリカ人の原爆観を変える必要があります。戦後すぐ、90パーセントに近いアメリカ人が「原爆投下は正しかった」と言っていた時代から、50パーセント、60パーセントに変るのに70年もかかっていますので、これからかなりの時間が掛かります。その間、アメリカの大統領は広島には来ない、という結果をもたらすことになり兼ねませんが、それで良いのでしょうか。「謝罪なしの広島訪問はない」と考えている人たちはこのような結果を望んでいるのでしょうか。

 

そこで思い出して頂きたいのが「和解」の力です。それが大統領であっても他のも誰であっても、広島に来て資料館を訪れ、被爆者の体験を聴くことから、被爆の実相と被爆者の「和解のメッセージ」を学べます。「原爆投下は正しい」と今でも信じている人たちにも広島に来て欲しいと考えているのは、この真実に触れて貰いたいからです。その結果、資料館を出た途端に考えが変わることにはならなくても、真実は人間の内面で人を変えて行きます。そして、それがやがては「謝罪」につながることにもなります。謝罪なしの大統領訪問でも、一人の人間としてまた国家の責任者として被爆の実相と和解のメッセージを学ぶ貴重な機会になる事実には変わりはありません。

 

それ以上に深刻に考えるべきことは、被爆の実相を知らない人が口だけで「申し訳なかった」と言う場合、その謝罪に意味があるのかという点てす。確かに広島に来なくても、被爆の実相を十分に理解している人はいます。でも、31年前のジャック・レモン氏の言葉には説得力があります。

 

まず、大統領に広島に来て貰う、そして被爆の実相と被爆者のメッセージをしっかりと学んで貰うことを出発点にしてはいけないのでしょうか。まず事実を知って貰う、そしてその事実に基づいての自発的な謝罪が続くというシナリオでは駄目なのでしょうか。

 

「出発点」には意味があります。アメリカの大統領が広島を訪問するのは、未来永劫今回だけ、というのなら話は違います。でもこれから何人ものアメリカの大統領が現職の内に、そしてその他の国の、特に核保有国の首脳が現職の内に広島を訪れることになるはずです。それらのいくつもの訪問の最初として、核廃絶につながる道を着実に歩み始めるための出発点にすることが大切なのではないでしょうか。

 

そのプロセスで、いの一番に「謝罪」がなかったとしても、必ず「謝罪」は実現します。その「夢」を消さずに、同時に、それが「夢」に留まらずに「目標」になるように、日米、そして世界の市民が協力して努力する出発点として、アメリカ大統領の広島訪問を位置付けられれば素晴らしいと思うのですが――。

 

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