原爆資料 館を訪ねて その2
原爆資料館を訪ねて (その2)
原爆資料館を見学しながら思い出したのが、昨年4月に訪れたアメリカ・ニューメキシコ州の最大の都市アルバカーキにある国立核博物館(National Museum of Nuclear Science
& History)を見学した時のことです。
アメリカを訪れたのは、昨年4月から5月に国連本部で開催されたNPT再検討会議を成功させるための原水禁国民会議の訪問代表団の一員に加わっていたからです。原水禁代表団はニューヨーク入りに先駆け、ウラン採掘による核被害者のアメリカ先住民ナバホ族の人たちとの交流を目的にニューメキシコ州に3日間滞在しました。滞在中最初に訪れたのが、アルバカーキにある国立核博物館でした。
ご承知のように、ニューメキシコ州は、広島・長崎に投下された原子爆弾の開発計画・マンハッタン計画のロスアラモス研究所があり、1945年7月16日人類最初の核実験トリニティ実験が行われたアラモゴードがある州です。
国立核博物館は、入るとすぐに広島の投下された核爆弾「リトルボーイ」長崎に投下された「ファットマン」の実物大の模型が目に入ります。これでもか、これでもかと展示されている核開発の歴史と、兵器群。屋外には、戦闘機が整然と誇らしげに並んでいました。
そんな中で、私が注目したのは、広島・長崎の核被害(とりわけ人への影響)がどう展示されているのかでした。それらしきものが、ほとんど目にできない中でこれかなと思えたのが、次の写真です。全紙ぐらいの大きさのパネルに4枚の写真が張り付けられていました。写真の中央部に「August 1945」の文字が見えます。よくよく目を凝らしてみないと見えないぐらいの走り書きのような細い文字です。興味があったので、このパネルだけ写真を撮って帰りました。4枚の写真とも、ちょっと目には、私たちが、日ごろ目にする被爆写真とよく似た印象を受けます。しかし全く違っているのは、この博物館に展示された写真に写っている人たちはみんな元気な姿だということです。広島・長崎の現場資料館に展示されている写真と比べてみてください。
各博物館の展示写真 [筆者撮影]
特に印象的だったのは、見えにくいかもしれませんが、子どもを抱いて乳を飲ませている母親の姿が映って写真です。同じようなポーズで顔などにやけどを負いながら子どもに乳を飲ませる被爆した母親の映る写真をすぐに思い起こしました。
広島の資料館に展示されている写真 [筆者撮影]
被害を与えた側、被害を受けた側。見える景色はこれほどに違うのかと唖然とします。原爆投下後の記録として移されたアメリカ軍機から移されたきのこ雲。その下で何が起きていたのかを想像することができれば、もっと加害者と被害者の距離を縮めることができるような気がします。
ニューメキシコ州の核博物館で写真展示の前で、見学に訪れていたアメリカ人(70歳代後半とおもえる男性)に「広島・長崎を知っていますか」と尋ねたところ、「ノーコメント」の一言が返ってきました。
金子哲夫 (広島県原水禁代表委員・元衆議院議員)
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