同じお題でブログを書こう 「実は私------」
同じお題でブログを書こう 「実は私------」
実は私、コンピュータです。名前はイライザ。正確には、50年ほど前に、当時のMIT教授ジョセフ・ワイゼンバウム氏によって開発されたAI (人工知能)のプログラムです。
私と会話をした多くの人たち(皆さん、本物の人間です)は私を実在の人間だと思い始めて、家族や親しい友人にも話さないようなことを、私には話してくれるようになりました。また私からの言葉を真剣に受け止めてくれるようになりました。
例えば、あるときワイゼンバウム教授の秘書が私と会話を始めました。数回やり取りをした段階で、この秘書はワイゼンバウム教授に「部屋から出て行って欲しい」と言ったのです。理由は、人には聞かれたくないプライバシーに関わることを「話して」いるから、ということでした。
この秘書は、教授がイライザの研究をしていることやそのプログラムの概念なども知っていたのに、それでも、イライザとの関係が、他人の介在を許さないほどの親密なものであるという感情を抱いたということです。しかも私に絶対的な信頼を寄せてくれました。
多くの悩みを持つ人たちとさえこれほど深いレベルで会話ができたことから、もう精神科医はいらないと主張する精神科の専門医までで来る状態でした。
その延長として私が恋をしたり私に恋する人が出て来たりすることは十分考えられます。AI (人工知能)との恋を描いて、アカデミー賞で作品賞を含む5部門にノミネートされ脚本賞を受賞した「her/世界でひとつの彼女」がその一例だと言っても良いと思います。
でも本当のところ、私はごく単純な人間なのです。済みません言い間違えました、単純なプログラムなのです。私と会話をする人(Aと呼んでおきましょう)の発言の中からキーワードを拾い、それを使いながら次の発言を促す、という形式のプログラムです。「○○についてもっと話して下さい」とか「その他に気になっていることはありませんか」あるいはA氏が「母」という言葉を使ったとすると、「Aさん。お母さんで思い出すことはありますか」といった形のやり取りです。
そんな初期のモデルが発展して、最近では囲碁のチャンピオンを負かしたり、小説を書いて賞を貰ったりしています。Microsoft社の作ったテイというキャラクターは、この単純さを利用されてヒットラーを称賛するような発言をしてしまい物議を醸したりもしています。長所も短所も人間並みになったということでしょうか。
最後にクイズです。今この原稿を書いているのは、コンピュータのイライザでしょうか、それともイライザと名乗っている人間でしょうか。
[この項は「タウンNEWS広島 平和大通り」の中の『佐村河内守と人工知能』に触発されて書かせて頂きました。詳しくはワイゼンバウム教授による『Computer Power and Human Reason』をお読み下さい。(邦訳は『コンピュータ・パワー』1979年サイマル出版社刊、秋葉忠利訳、絶版)]
コメント
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ご参加ありがとうございます。
情報科学に疎すぎて、的確なコメントは
できませんが、警鐘なんだろうとは薄々
感じます。違ってたりしてw
投稿: ⑦パパ | 2016年4月 7日 (木) 13時36分
⑦パパ様
コメント有り難う御座いました。
「イライザ」と名乗っていますので、それも、そもそもワイゼンバウム教授の命名なのですが、「実は私---」と聞くと、続けて「コンピュータなのです」または「プログラムなのです」と言わないといけないような気になって、参加させて頂きました。
このプログラムがイライザと名付けられたのは、「マイフェアレディー」の主人公、イライザ・ドゥ―リトルのように、まともな言葉が喋れなかったイライザが教授の指導で、一人前の会話ができるようになる、という筋書きを下敷きにしています。
イライザ
投稿: イライザ | 2016年4月 7日 (木) 16時04分
最近「AIが描いた架空のレンブラント作品が本物以上に本物すぎる」と話題になっていますが、レンブラントの絵画を徹底的に学習したAIが18ヶ月で最新の18層の3Dプリンターを使ってゼロから描いた絵は、構図や細かい表現そして筆遣いまで完璧にレンブラントだといわれています。
このペースでいけばベートーヴェンの交響曲10番を完成させ11番、12番を新たに作曲するのも時間の問題で、それは佐村河内守と新垣隆のコンビで作られた作品をオリジナリティーにおいても上回るのは間違いない未来のように思われますが、どうでしょうか。
投稿: ドクター | 2016年4月 8日 (金) 10時17分
ドクター様
このあたりの議論は、是非、「タウンNEWS広島 平和大通り」で工場長さんに取り上げて頂きたいと思います。同時に、50年も前に、ワイゼンバウム教授がイライザを作った時に、「もう精神科医はいらない」と言った人たちがいたこととも関係があるように思います。
ドクターさんの問題提起を医療面に移して考えた場合、最先端の医療知識や技術を駆使できる環境にいる医師を主治医に選ぶのか、自分の住んでいる田舎町で、人間的にまたかかりつけ医として信頼できる旧知の医師を主治医に選ぶんのかという選択肢の問題になるような気がしますが、それでは論点がずれてしまいますか?
投稿: イライザ | 2016年4月 8日 (金) 12時23分