違和感を感ずるオリヅルタワーからの映像
元日に平和公園を訪れ、対岸から原爆ドームを見た時、その右横に写るオリヅルタワーを見て、思い出したことがあります。
昨年放送されたある番組を思い出しました。その番組は、11月30日に放送されたNHK広島放送局と広島テレビが今年何回か行ったコラボ放送の最後の回「被爆75年ヒロシマの記憶を伝える」です。
夕方5時台と6時台との2回に分けMHKで言えば「お好みワイド広島」の特別編として放送されたこの番組は、いくつかの被爆建物を訪ね、広島を考える内容でした。
「わたしもこの番組を見た」というひとも多いと思います。この時取り上げられた被爆建物は、現在広島市郷土資料館として活用されている旧陸軍糧秣支廠、宇品線もちょっとだけ映像が流れます。そして陸軍被服支廠、現在原爆ドームと呼ばれている産業奨励館、平和公園内にある改修工事を終えたレストハウス(当時の大正屋呉服店)、被爆建物ではありませんが、平和公園の下に眠る当時の街並みや暮らしです。
被爆建物の紹介には、初めて知ることも多く非常に参考になりました。例えば、「産業奨励館は、4角形に建てられているのではなく、正面と裏面は、カーブした状態で建設された。前を流れる元安川に綺麗な顔を見せるためにそういう設計がされた。後ろ(川と反対側)に廻って良く見るとそれを知ることができますよ」いう案内役の高田真さん(アーキウォーク広島代表)の話や原爆資料館の下から出土し保管されている被爆遺物の紹介などなどです。
資料館下から出た被爆遺物として映し出された「炭化したふすまの取っ手」を見た時、現在進んでいる平和公園の地下遺構保存予定地の貧弱な遺構が思い出され、本当にこの場所でよいのかと、考えさせられました。
番組全体は、解説もわかり易く、参考になる古い映像や写真も多く使われており、豊富な内容だったと思います。2回に分けて放送されたすべてを録画して大切に保存しています。
私が、違和感を持ったのは、ライブ中継の会場としてオリヅルタワーの屋上が使用されていたことです。もともとオリヅルタワーそのものに疑問を持っていますが、そのことは別にしてです。
原爆ドームを消化する映像が流れる前に、オリヅルタワーの屋上に4人が並んでいる映像が映されました。
すぐに画面が振られて「原爆ドーム」を上から眺める映像に画面が変わりました。
この画面を観て、どう感じますか。私が感じたことは、上からの視線は、原爆を投下したエノラゲイに通じる視線ではないのかということです。アメリカ軍が映したといわれる原爆投下後のきのこ雲が沸き上がっている写真は、間違いなく原爆を投下した側からの視線です。そこには、地上で起きている生き地獄の景色を見出すことはできません。大事なことは、上からの目線ではなく、人々の目線の中で何が起きていたのか、その事実に向き合うことだとわたしは思っています。原爆の惨禍を伝える原爆ドームを上から眺めることは、私にとってはどうしても原爆を投下した側からの視線を感じてしまうのです。そう思うのは私だけでしょうか。
この違和感を持ったのは、今回だけではありません。これまでにもオリヅルタワー屋上からの映像を見る度に感じてきたことです。原爆ドームを上から眺め、そして平和公園を俯瞰できる映像ですから、メディとしては、使いたい場所でしょうが、ちょっと考えて欲しいことのように思います。
いのちとうとし
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