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2021年2月21日 (日)

世界における広島の役割 ――広島市の平和推進条例は世界の期待に応える義務があります――

世界における広島の役割

――広島市の平和推進条例は世界の期待に応える義務があります――

 

広島市議会が検討している「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」について、216日の本欄では、15日に原水禁が市議会議長に提出した「意見と要望」を全文掲載しました。またその際に口頭で行った補足の要望や議長の反応等については、217日に金子代表委員からの報告がありました。

 念のため、意見募集についての市議会サイトのURLを貼り付けます。条例の素案は、そこから入ることができます。

 https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/gikai/199719.html

 今回は改めて、世界という舞台上で「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」がどんな役割を果すのか、特に世界からどのような期待を持たれているのかという視点からこの条例素案を取り上げたいと思います。厳しい内容になりますが、それは、世界において広島の占める重要性の反映ですので、御理解頂ければと思います。

まず、女性蔑視発言で世界中から批判された、森喜朗元組織委員会会長の発言を考えましょう。この発言が世界的に注目されたのは、オリンピックが世界的に重要なイベントだからですし、東京開催も同様に関心の的になっているからです。仮にこの発言が、日本国内でもあまり名の知られていない、保守的で小さな町のボランティア団体会長の発言だったとすれば、その町で良く読ませている地方紙でさえ、報道しなかったのではないでしょうか。

 広島が世界的な存在であることは、例えば、広島への原爆投下が、AP通信社による「20世紀の最大のニュース100選」のトップとして選ばれていることからも分ります。仮にオリンピックと比べたとして、広島が同じくらい、あるいはそれ以上の位置付けになる可能性は、クロアチアのビオグラード・ナ・モルという都市の市民たちが広島に寄せる思いだけからも容易に推測できます。

 

(以下、『ヒロシマ市長』(秋葉忠利著・朝日新聞出版)131ページから引用)

 「ここでは、もう一つの(平和市長会議)副会長都市、クロアチアのビオグラード・ナ・モル市のユニークな活動だけ取り上げておきたい。「海に面した白い町」という意味の美しい街で、人口は約六〇〇〇人。古くから、アドリア海に面した観光地として知られているが、クロアチア紛争の際には、セルビア軍による攻撃でかなりの被害をこうむった。その体験から、戦争を繰り返さないこと、とくに核兵器の廃絶のためには熱心な都市になった。「観光」と「平和」が自然に結びついたよい例だろう。広島や長崎についてもいろいろと勉強し、中でも「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんと折り鶴の物語に、多くの子どもたちが感動したそうだ。この気持を表現するためにビオグラード・ナ・モル市のイヴァン・クネッツ市長は、折り鶴の碑を建てることにした。鉄製の五メートルほどの美しい碑である。

その除幕式では、市内のすべての子どもたちが折った折り鶴をこの碑の前に捧げることを計画した。子どもたちに鶴の折り方を教えたのは学校の先生だが、子どもたちは家に帰ってからも鶴を折る練習をしたらしい。子どもたちの練習を助けるためにお父さんやお母さんたちも鶴の折り方を習った。その結果、ビオグラード・ナ・モル市のすべての市民が鶴を折れるようになった。そう報告してくれたのは同市の国際・平和担当のヤスミンカ・バリョさんだった。」

 

一つの都市の子どもたち、その気持ちを汲んだ市長、学校の先生、そして保護者達全市民を巻き込んだこのような活動を可能にする力を「広島」は持っているのです。比較することが適切ではないかもしれませんが、オリンピックを凌駕していると考えることも可能なのではないでしょうか。

 ですから、ビオグラード・ナ・モル市の市民は広島市の「平和推進条例」に高い関心を持つはずです。それだけではなく、今や加盟都市が1万に近付いている平和首長会議の他のメンバー都市やその市民たちも同じように注目するでしょう。

 一例を挙げると、アメリカのマサチューセッツ州ケンブリッジ市には、予算を付けた「平和委員会」があります。元々は、「核軍縮と平和教育のための委員会」でしたが、発展的に今の名前になりました。この委員会は、具体的な活動内容まで条例で決め、市民ボランティアから委員が選ばれています。そしてこの委員会の人事については市長にアドバイスをすること、逆に諮問を受けることなども仕事の一部になっています。世界的には他の都市でも同じような条例を作っていますので、広島の条例に対する関心は非常に高いはずです。

Peace-commission

ケンブリッジ市平和委員会の行事の一つ

 なぜならこの条例は、被爆後の75年以上の歴史の中で「世界の広島」において初めて作られる「平和推進」についての条例だからです。文書化されることに注目すると、文書として広島市が公式にまとめている、毎年86日の「平和宣言」の総まとめとしての役割を果すことになります。70年以上の「平和宣言」には、被爆者や市民、そして広島に心を寄せる世界中の人々の思いが込められています。その全てを条例の中に詳しく再現することは不可能ですが、その理想や精神は、条例の前文として格調高く述べられてしかるべきなのではないでしょうか。

 さらに重要なのは、「平和宣言」の持つ意味が如何に大きいものだったにしろ、「平和宣言」には法的拘束力がないという点です。森発言も法的拘束力を持たない、組織委員会の一人の役員の言葉です。仮に法的拘束力を持つ文書に、同じ内容が盛り込まれていたとしたら、その意味は全く異なっていたはずです。

この観点からも、「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」の素案を考える必要があるのではないでしょうか。まず、「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」では、原水禁の「意見と要望」が指摘しているように、中心になっているのが、市民が行政に協力する義務と、表現の自由に抵触する可能性の高い「厳粛」つまり「自粛」なのです。

 条例素案の欠陥を是正するだけではなく、人類史的な立場、世界的立場からもお手本にしたいと言われるような内容にできないものでしょうか。全市民は勿論のこと、詩人や文学者も含めて、平和と広島に関心を持つ広島以外の識者や市民にも加わって貰うことで、「お手本」を作ることは今からでも遅くはないはずです。

[2021/2/21 イライザ]

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