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2020年5月 6日 (水)

新型コロナウイルス断想・その5 ――「基本再生産数」が鍵――

新型コロナウイルス断想・その5

――「基本再生産数」が鍵――

 

今回は、Pueyo氏による下の図の説明です。ただし、彼の論文中には説明がなく、「出典」として挙げられているサイトにもアクセスができませんでしたので、以下の説明はいくつかの出典に頼りながらの私の独断です。反論や修正等があれば、御教示下さい。

 

Photo_20200504112201

 

図の全体が見えない場合は、図そのものをクリックして下さい。

 

5月4日のエントリーとの間を行ったり来たりしないで済むよう、この図の諸元についての説明を再掲しておきます。

縦軸は、何パーセントの人がマスクを装着しているか、横軸は、マスクの質です。100パーセントのマスクは、ほとんどウイルスを外には出さない、完璧に近いマスクです。中の色は、感染率を示しています。青に近いほど、感染率がゼロに近く、黄色は今までと同じように感染が広がることを示しています。中の曲線は、同一感染率を示しています。青の中にひかれている「1」という数字の付いた曲線は、感染率が1になるパーセントと質との組み合わせを辿っています。つまり、この曲線上の組み合わせなら、一人の人から感染するのが1人であるということです。バツ印が付けてあるのは、質的には60パーセントくらいのマスクを、60パーセントの人が装着しても、感染率は1以下になる、つまりコロナをコントロールできるという位置を示しています。

マスク装着の全体的効果を[マスクの質] x [マスクを装着する人数]で表すことができるのは、御理解頂けると思います。後で再度説明しますが、そうなると曲線が双曲線になることも自然です。問題は、双曲線1が縦軸、横軸と交わるところが40パーセントであることです。以下、その点について、そもそもどんなモデルを使っているのかから始めて説明します。

この図の根拠になっているのは、西浦博教授等も使っている感染の状態を示す数値モデルです。1927年に、イギリスの王立アカデミーの紀要に発表された、William Ogilvy Kermack and A. G. McKendrick による論文で提案されたものですが、その後、感染症の拡散のモデルとして広く使われてきています。原文は英語ですし、数学的な記述は難しいので、神戸大学の牧野淳一郎教授による解説を紹介しておきます。岩波書店発行の『科学』5月号に掲載されている論文です。

https://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_202005_Makino_preprint.pdf

牧野教授はさらに、今回の新型コロナウイルス感染について、どのような対策が有効なのかについての提言を行っている三人の専門家が、どのようなモデルを使っているのかに基づいてそれぞれのケースを検証し、評価をしています。

  • 西浦博北大教授によって「8割の接触削減が必要」として示されているグラフの背景にあると思われるモデル
  • 大橋順東大教授による「ほぼ全ての発症者が行動量を45%に下げたとしてもわずか1%でも行動を変えない人がいるとその効果は大きく損なわれる」という主張の根拠となるモデル
  • 佐藤彰洋横浜市大教授による、東京では現在の2%まで接触削減が必要、という主張の根拠になっているモデル

こちらも一読の価値があると思いますので、紹介しておきます。

http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/corona.pdf

牧野教授の結論に関心をお持ちの方も多いと思いますが、今回は先を急いで、これら専門家の皆さんが標準的に使っている基本的なモデルから生まれるグラフで説明しましょう。何度も御覧になっていると思いますが、ここでは、Pueyo氏のサイトからお借りします。

 

Photo_20200504112301

縦軸は感染者数、横軸は時間です。「Today」と書いてあるのが、「今日」ということで、そのくらいの感染が既に起きているという仮定です。その先が大切です。「今日」の時点で何もしないとすると、その後の感染者数は、「Do nothing」というものになるということです。「爆発的増加」です。これは、数値モデルによる「予測」ですので、実際にこのような結果になるかどうかは別問題です。

次に、ある程度の対応をしたとしましょう。たとえば、「握手は避けましょう」くらいでしょうか。その結果が「Mitigation」、つまり、「改善」と呼ばれる曲線です。少しは良くなるのですが、感染が収まる方向には変っていません。

そして、最後に「The Hammer」と呼ばれる曲線が示しているのは、ハンマーで叩くような急激かつ結果がすぐ見えるような対策を行った際の結果です。その先の「The Dance」は、二度目のピークを起さないように柔軟かつ効果的な対策をする必要のある期間を差しています。ここでは、Pueyo氏の言葉を借りて、「The Hammer」は「ハンマー曲線」と呼んでおきましょう。

さて、画面を日本に戻しましょう。非常事態宣言の内容は、「8割の外出自粛」でした。その意味を、上のグラフを使って言葉にすると、「今日」の時点で、全ての国民が「8割の外出自粛」を行うと、その後の感染者数の推移は、「ハンマー曲線」になるというものだったのです。議論を単純化するために、ここでは、時間軸の具体的時間、3週間とか7週間という数字は無視して考えて下さい。ある程度の時間が経つと、このような変化が起る、くらいに緩やかに横軸は読んで下さい。

西浦教授は、「爆発的感染を起さないためには、6割以下でも良い」ということを言っていますが、その意味は、「6割自粛」をすれば、「ハンマー曲線」は大体水平になって、それ以下なら右肩下がりになることが計算で分っているからです。7割でも右肩下がりになりますが、その速度は遅く、収束するのに時間が掛るという結果になります。

ここで注意が必要になります。いくつか数字が出てきましたが、それらは皆、ウイルスの感染力の強さによって違ってきます。一人の人が感染して治るまでに、周りの人100人が感染してしまうような(現実にはそんなケースはないようですが)、と1人にだけうつす場合を考えたとき、「外出自粛」の程度も変ってくることは分って頂けると思います。その基本的な数字、一人の感染者が何人の人に感染させるのかという平均値を「基本再生産数」と呼びます。記号では、 R0(本当は、Rの次に、右下に小さい0が付くのですが、ブログ上にはコピーできませんので、この代わりにこの標記を使います) を使います。西浦教授たちは、日本では、ドイツとおなじ2.5を使っています。その場合に、「ハンマー曲線」が大体水平になるのが、6割の自粛です。

仮に、2.0を使うと、自粛の程度は緩くて良くなり、大体4割になります。これはPueyo氏が使っている数字です。

元に戻って、本稿の最初の図ですが、ここでは、「ハンマー」の部分にマスクのみでウイルスをやっつけてしまおうという仮定での数字を元に、色付けが行われています。つまり、 R0 = 2.0という仮定で、ハンマーを使うということにして、そのハンマーとは、「マスクを付ける」ということに限定して考えるということです。その場合、接触感染の割合は、前回のグラフで見るとかなり少ないので、その他の部分に注目します。この仮定がそれなりに意味を持つのは、仮に100パーセントの人が100パーセント有効なマスクをすれば、飛沫は0になりますので、感染の力は、環境の10パーセントと、症状のない5パーセントしか起こらなくなるからです。

R0 = 2.0という仮定をしたことから、冒頭の図での曲線1の始点と終点が、それぞれ40パーセントで良いという結論になります。では、曲線1が、直線ではなく、黄色の方に曲がっているのは何故なのでしょうか。それは、最終的には、[効果] x [人数]で、全体の効果が表せるからです。これは xy = aという式で、そのグラフが双曲線になることは、昔習った通りです。

それを合せて、60パーセント効果があるマスクを60パーセントの人が着想した場合、元々の「ハンマー」と同じ効果があることになるのです。

かなり長くなってしまったので、結論部分は次回をお楽しみに!

 [2020/5/6 イライザ]

 

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