木内みどりの朗読「絵本 おこりじそう」―原爆・反戦詩を朗読する市民のつどい
毎年、敗戦記念日の8月15日に開催される「原爆・反戦詩を朗読する市民のつどい」が、今年は台風の接近で危ぶまれましたが、無事広島市ひとまちブラザで開催されました。私も、今年の企画のメインとなっている俳優の木内みどりさんの「絵本 おこりじぞう」の朗読を聞くため参加しました。
主催者の一人である広島文学資料保全の会代表・土屋時子さんの司会で始まった今年の「市民のつどい」は、最初に四國五郎さんの長男・四國光さんの「四國五郎が『おこりじぞう』に込めた思い」と題しての講演でした。「子どもの時から絵描きになることしか考えていなかった」という四國さん話。そして三つの戦争体験「戦争、シベリア、弟の原爆死」が紹介されました。四國さんも香月泰夫と同じようにシベリア抑留を体験していますので、先日の展覧会のことがたぶってきます。こんな短い間に二つのシベリア体験を聞くことになるとは思いませんでした。そして帰国後の広島での活動が非常にわかり易く話されました。この中で私の印象に強く残っている話は、四國五郎さんが光さんに繰り返し言っていたといわれる「つまらんことで怒るな。世の中には悪い奴はいろいろいるが、本当に悪い奴というのがいて、それは戦争を起こす奴だ。これはけた違いに悪い奴。だからつまらんことで怒らずに、戦争を起こす奴に本気で怒れ」という言葉が紹介されてことです。まさに8月15日のふさわしい、そしてこの日だからこそ改めて思い起こさなければならない言葉として伝わってきました。「父の価値観の背骨だった」と光さんは語ります。もちろん、帰国後知る弟の被爆死、峠三吉さんとの出会いなどなど感銘を受ける話が続きました。その中で、もう一つ印象の残ったのは、NHKが中心となって取り組んだ「市民が描いた原爆の絵」プロジェクトに参加されていたということです。光さんは、この「市民が描いた原爆の絵」を高く評価しています。
光さんのあとは、いよいよ木内みどりさんの「絵本 おこりじぞう」の朗読です。やはり迫力があります。訴える力があります。木内さんの「絵本 おこりじぞう」の朗読は、今回が9回目。木内さんがこの本の朗読を始めようとしたきっかけは、友人がこの本を広島のおみやげとして買って帰ってくれたこと。そしてかつて訪れた丸木美術館で原爆の図を見た時、絵の力をすごく感じ、その丸木美術館で「四國五郎展」が開催されるのを知り、「ぜひその展覧会で朗読をさせてくれ」とお願いし、初めての朗読が実現したそうです。その朗読は、絵本そのものを読むのではなく、聞く人にも絵を見てもらいたいとの思いから、展覧会で展示されていた原画をスライド化させて、それを上映しながらの朗読会となったのです。
そして「全身全霊で読みたい」という自分の思いが、観客に届いたという実感を得ることができたので、継続してやり始めたことになりました。木内さんの朗読の意味をこう呼びかけました。「自分で声を出して読んでみてください。その声を聞くと、ただ絵本を読む時と違うものを感じることができます。自分の体をとおすことで、記憶の継承ができるのではないかと思っています」と、体験を持たない私たちに対する示唆を与える話で今日のつどいが終了しました。
いのちとうとし
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