なんでわざわざ旭日旗? ――惻隠の情はどこへ行ったのでしょう?――
日本中どこで犠牲が発生するのか分らないような異常気象が続いています。北九州も大きな被害を受けています。中でも武雄市の被害の大きさが、連日報道されていました。消防、警察、自衛隊の皆さんの献身的な活躍に感謝しながら、一人でも多くの人が危険な状況から救われるよう祈っていました。
そんな中、映像的に余りにも目立つので違和感を持たざるを得ないことがありました。それは、「旭日旗」です。画像は、テレビ朝日のニュースと、西日本新聞からお借りしました。最初は、地元の消防の救助艇です。
このボートがどこの所属なのかは、ボートの脇に書いた文字で分るようになっています。救助作業の邪魔になるようなものは一切、見当りません。
次に、海上自衛隊の救助ボートです。
バカでかい旭日旗が目立ちます。そして率直な疑問です。
災害救助の際には、救助に直接必要な装置があることは当然なのですが、こんなに大きな旗は、救助の邪魔になっても救助作業の役には立たないことは明白です。遠くから旭日旗を見て「助けが来てくれた」という精神的な支えになるという言い訳が聞えてきますが、ボートの存在そのもので十分にその役割は果せているでしょう。
そして、日本の軍隊は伝統的に「武士」の集団であることを誇りにしてきました。その精神は「武士道」と呼ばれます。藤原正彦氏によれば、「武士道」精神の中で重要な柱の一つは「惻隠の情」です。
「惻隠の情」とは、他人を思いやる心という意味ですが、それも、「思いやってやったぜ」というように、自らの行為を誇示することとは反対に、謙虚にそしてしばしば表に出ないような形での心遣いを意味します。
しばしば引用されるエピソードですが、大東亜戦争中の1942年、イギリスの戦艦エグゼターとエンカウンターは、ジャワ近海で、日本帝国の艦艇に撃沈され、約450人の兵士が海の藻屑に消えようとしていました。たまたま近くを航行中の駆逐艦「雷」の艦長、工藤俊作中佐は、英国兵442人を救出しましたが、この美談は、後に助けられた将官の一人、サー・サムエル・ホールが1990年代後半、ロンドン・タイムズに投稿して公にするまでは知られていませんでした。工藤艦長は、あくまでも謙虚に行動し、自分が良い事をしたのだという自己PRをしなかったのです。
翻って、今回の旭日旗を見てみましょう。「助けてやったのは、俺達海上自衛隊だぞ」という自己宣伝の臭いがぶんぶんするではありませんか。「惻隠の情」はどこに行ったのでしょうか。そして、日本の軍隊が「武士道」精神による規律によって、美しい伝統を継承していると言われても、ちょっと違うのではないかと、という疑問を持ってしまうくらい「ハシタナイ」行為のように見えるのですが。
[201998/1 イライザ]
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