憲法

2017年8月 7日 (月)

被爆72周年原水爆禁止世界大会  ――事務局長によるまとめ――

被爆72周年原水爆禁止世界大会

――事務局長によるまとめ――

 

被爆72周年原水爆禁止世界大会が終りました。その全体像を理解して頂くために、大会の事務局長である藤本泰成さんの「まとめ」をアップします。昨年に続いて感動的なまとめです。私は第二分科会に参加しましたが、スペースの関係だと思いますが、私の発言への言及はありません。次回手短に補足をさせて頂きたいと思います。

 

             

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写真は開会総会のものです

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

原水爆禁止世界大会・広島大会まとめ

被爆72周年原水爆禁止世界大会実行委員会

事務局長 藤本泰成

 核禁止条約に対する日本政府の態度が問題になっています。第2分科会の湯浅一郎ピースデポ副代表は、オバマ政権の8年間を総括しながら、「核なき世界」をめざす米国では、核兵器への巨額投資が続き、核戦力の近代化が続いた、今後10年間で核の近代化に800億ドル、運搬手段の近代化に1000億ドル、全体で1800億ドル、約18兆円が支出されることになったと指摘しています。オバマ大統領がプラハ演説で述べた「この目標は、私の存命中には実現しないかもしれない」と言う言葉は、米国社会に染みついた核依存態勢を象徴し、このことを変えるのは至難の業との思いの表れでは無いでしょうか。

 

 第1分科会で発表した、米国の平和NGOピースアクションのポール・マーチン代表は、米国で様々な問題を起こしているトランプ新大統領が、守っている唯一の公約は、軍事中心主義と軍事費の増額であると述べました。貧困層対策のプログラムの予算を削減し、軍事費を大幅に増額している事実を指摘しています。トランプ政権は、核の近代化政策においても、オバマ政権の方向性を支持しています。ただし一方で、イランとの間の核開発放棄の合意と北朝鮮の金正恩政権との対話の姿勢は保ち続けるとしています。

 

 北朝鮮は、核実験を繰り返し、ICBM・大陸間弾道弾の実験に成功し、米国内の全てを射程に入れたと主張しています。米国の核兵器とは規模も違いますが、核のにらみ合いとも言える状況が続いています。北朝鮮を対象とした、米韓軍事演習は規模を拡大し、日本を含む日・米・韓の軍事同盟強化はこれまで以上に進んでいます。米艦防護や後方支援など米国との軍事同盟を強化するために、安全保障関連法が成立しました。

 

 第1分科会で、軍事評論家の前田哲男さんが、43の民放70の新聞を使い、3億円以上をかけたと言われる「弾道ミサイル落下時の行動について」という政府公報を紹介しています。「できる限り頑丈な建物や地下街などに避難する」「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭を守る」「窓から離れるか、窓の内部屋に移動する」と書かれていますが、前田さんは、原爆投下の直後に大本営の「防空総本部」が出した新型爆弾に対する「対策心得」に書かれている「待避壕はきわめて有効、頑丈なところに隠れること」「普通の軍服や防空ずきんおよび手袋でやけどから保護できる」「伏せるか 物陰に隠れる」と比較し、全く変わらないとして、政治が言う安全保障のキャンペーンが、いかにむなしく、いかに危険かと述べています。

 

 小野寺五典防衛大臣は、自民党の「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」の座長を務め、「敵基地反撃能力」が必要として、2017330日に「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を総理に提出しています。安部首相は、すでに日本の自衛隊の役割を「抑止力」から「対処力」へと変貌させようとして、安全保障の議論を進めています。前田さんは、高高度ミサイル防衛システム(サード)や巡航ミサイルトマホークの導入などを通じた「敵基地反撃(攻撃)能力」の確保に議論が進み、安全保障政策は「憲法解釈上の議論」のレベルではなく、実際的な「防衛上の政策論」まで進んでいると警鐘をならしています。

 

 「日本が『核の傘』依存をやめること」これが、東北アジアの冷戦構造と安全保障のジレンマを解消することにつながっていく。東北アジアの非核化の問題を、第2分科会で議論していただきました。第3分科会では、核兵器の材料であるプルトニウムを創りだす核燃料サイクルの議論がありました。原子力資料情報室の伴さんからは、「再処理は崖っぷち」との報告がありました。サイクルの一翼を担う高速増殖炉もんじゅは、廃炉になっています。計画通りの実施が困難となった今こそ、核燃料サイクル計画からの脱却を実現しなくてはなりません。そのことこそが、東北アジアの平和のために、東北アジアの非核化そして共通の安全保障の道へつながっていくのです。原水禁運動が、この間主張してきた東北アジア非核地帯構想とその実現のための、日本を、プルトニウム利用政策から脱却させるためにがんばらねばなりません。

 

 事故を起こした福島第一原発は、6年を経過してもなお、事故処理の作業が全く進んでいません。政府は、除染によって避難指示区域の解除を進め、帰還を強要するかのように、これまでの支援の打ち切りを進めています。ヒロシマ・ナガサキの被爆者がそうであったように、フクシマのヒバクシャの生活再建にも、支援の手を自ら伸ばすことはありません。これまでの原水禁運動の経験に学び、福島県民と周辺県で放射能汚染を強いられた人々の健康不安、特に子どもの健康にしっかりと向き合い、生活再建・生業再建を目途に、「被爆者援護法」に準じた法整備を、国に求めていかなくてはなりません。

 

 このような中で、「脱原発」は確実に市民社会に根付いています。市民社会の声が、原発推進に戻ることはあり得ません。第4分科会では、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長が、「世界は再生可能エネルギー時代を迎えつつある」として、再生可能エネルギーが指数・関数的に増加していることを明らかにしました。原発384GW、風力490GW、太陽光300GW、原発は漸減しているが太陽光発電は昨年1年で76GW増加していることを考えると、太陽光発電が原子力を上回るのは時間の問題です。当初、1Wあたり1万円もしていた、太陽光の発電コストは、今や1Wあたり40円となっています。地域分散型の再生可能エネルギーが、新たな地域再生の大きな力になり、日本のエネルギーを支えることを、私たちは、私たちの選択として実現しなくてはなりません。エネルギー・デモクラシーの時代を、私たち自身で切り拓かなくてはなりません。

 

 今年の国際会議は、「なぜ日本で脱原発は進まないのか」と言うテーマで、開催をしました。2025年までに脱原発を決めた「台湾」から、また、ムン・ジェイン新大統領が脱原発を志向し国民的議論に入ろうとする韓国からゲストをお招きしました。

 原水禁運動は、1955年のその発足から、核兵器問題と原発問題に、運動の両輪としてとりくんできました。様々な確執があったにせよ、私たちは、「核絶対否定」「核と人類は共存できない」ことを基本に運動を進めてきました。自民党政権は、195757日の参議院予算委員会で岸信介首相(当時)が「憲法は、核兵器保有を否定していない」と発言したり、また、201641日には、安倍政権が「必要最小限度の核兵器は合憲」の閣議決定をするなど、核兵器保有を否定しないできました。

 

 日本は、エネルギー基本計画に、使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを利用する核燃料サイクル計画を位置づけています。結果として47トンものプルトニウムを所持しています。日本は、常に瞬時に核兵器保有国に変貌できることを、再処理で担保しています。原水禁は、商業利用の名を利用した核政策としてのプルトニウム利用に反対してきました。脱原発が確定すると、結果として核燃料サイクル計画、再処理がその意味を失います。それは、日本が真の意味で核政策を転換するために、大きな意味を持ちます。核兵器禁止条約が採択された今、日本の条約批准が求められていますが、そのためには日本の核政策の転換を図らなくてはなりません。原水禁は、脱原発の視点から、日本の核政策の転換を考えようとしました。そして、フクシマを二度と繰り返さないことの、人権としての当然のとりくみとして、脱原発を考えました。

 

 パネラーのひとり、吉岡斉九州大学教授は、「日本の原発は動いていない。稼働可能な原発の内、現在稼働中は、5基、2017年中に稼働するとしている玄海原発を入れて7基である。2020年においても稼働できるのは15基から20基程度ではないか」とし、脱原発の実現に向けては、地方自治体からも、新潟の米山知事、静岡の川田知事など、再稼働を許さない動きが出てきている。今後、重要になるのは政治家の姿勢であると指摘しました。旧民主党政権が、「2030年代、原発ゼロ」の方向性を示したことも大きな動きだったとして、国会における多数派形成は、最重要課題としています。

 

 シュウ・グァンロン台湾大学教授は、台湾の脱原発が法律に規定されていることを報告されましたが、しかし、政治家を動かすには運動の力も重要であると指摘しています。イ・ユジン韓国緑の党脱核特別委員会委員長は、「これまで、韓国には原発推進の関係法律は存在するが、原発を止める方向での法律は存在していない。このことは重要な課題だ。現在野党が多数派を形成しており、野党の議員の理解を求めることも重要である」としました。

 オーストリアは、脱原発と核兵器不保持が、憲法に規定されていると聞きました。政権が変わっても重要な政策が変更されないようにすることが目的とされています。

 原水禁運動のとりくみを通じて、脱原発の方向を確固たるものにするために、私たちのとりくみの方向は明らかになっています。

 

 

 少し話を変えたいと思います。私は、北海道の本当の田舎町で育ちました。昼は蝉の声が、夜は蛙の声で眠れないことがあるほどの、自然の中で育ちました。夏は野山を走り回り、冬は雪の中を転げ回りました。

 

 北海道の冬の夜は、冷えます。深々と音もなく雪は、静かに降り積もります。子どもの頃、覚えた詩が頭に浮かびます。三好達治のたった2行の有名な詩です。

 

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

 

 詰めたい布団に入って、最初はじっと我慢しながら、ちょっとした不安の中で眠ってしまう。朝起きた後の、朝日の中の雪のキラキした輝きが、今でも目に浮かびます。

 自然の中で、泥だらけになって、雪まみれになって、育ってゆく。日本の故郷の子どもたちの姿です。

 

 福島第一原発の事故以降、フクシマの野山はどうでしょうか。フクシマの雪の中を、転げ回ることができるのでしょうか。

 

 フランスの文学賞を受賞した、福島市在住の詩人、和合亮一さんの詩をツイッター上で読ませていただきました。

 

「石の礫」と言う作品ですが、長文ですので、その中の「悲しみ」と題された部分を、抜粋させていただきながら、一部を紹介します。

 

 

  三月十一日 悲しい 揺れ 巨大な 揺れ あれから

  私の町の駅はまだ目覚めない。囲われて、閉じられて、消されている。

 

  あなたにとって、懐かしい街がありますか。私には懐かしい街があります。

  その街はなくなってしまいました。

 

  あなたは地図を見ていますか。私は地図を見ています。その地図は正しいですか。私の地図は、昔の地図です。なぜなら今は、人影がない。…。

 

  放射能が降っています。静かな夜です。

 

  ここまで私たちを痛めつける意味はあるのでしょうか。

 

  ものみな全ての事象における意味などは、それらの事後に生ずるものなのでしょう。ならば「事後」そのものの意味とは、何か。そこに意味あるものは。

 

  この震災は何を私たちに教えたいのか。教えたいものなぞ無いなら、なおさら何を信じればいいのか。

 

  放射能が降っています。静かな静かな夜です。

 

 

 私は、自然の中で、のびのびと育ってきたことが、私にとってかけがえのない素晴らしい贈り物であったように思います。

 

 放射能が降っている。静かな静かな夜です。皆さん想像してみて下さい。

 

 雪は見えます、が、放射能は見えません。雪の中を子どもたちは転げ回ります、が、放射能の中を転げ回ることはできません。雪を口にする子どもたちがいます、が、放射能を食べることはできません。

 

 私たちが、子どもたちに残し、受け継いでいくはずの自然を、放射能は奪い取っていったのです。

 

 基調提起で申し上げました、憲法には、健康で文化的な生活を営む権利、人間らしい生活を営む権利が、しっかりと決められています。フクシマは、憲法違反です。

 

 放射能が降っています。静かな静かな夜です。

 

 そんなところに、人間らしい生活があるはずはありません

 

 

 この詩は最後を、こう結んでいます。

 

 246分に止まってしまった私の時計に、時間を与えようと思う。明けない夜は無い。

 

 さあ、私たちは、明日のために何をしますか。昨日、今日の議論から、私たちは何をしますか。

私たちの生活の場から、答を出そうではありませんか。

 それは難しくありません。

 

 最後に、実行委員会の皆さん、参加いただいた講師の皆さん、海外ゲストの皆さん、そして全国からの参加者の皆さんに、心から感謝を申し上げて、まとめといたします。

 

 

 

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2017年8月 5日 (土)

被爆72周年原水爆禁止世界大会 国際会議・広島大会始まる

被爆72周年原水爆禁止世界大会 国際会議・広島大会始まる 

 

               

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被爆72周年原水爆禁止世界大会 国際会議・広島大会会場

 

84日の夕方から、被爆72周年原水爆禁止世界大会 国際会議・広島大会が始まりました。最初に川野浩一大会実行委員長から、格調の高いそして元気の出る挨拶がありました。

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6歳の時に宇品で被爆した白石多美子さんは、被爆前の宇品での生活から始まって、母とともに祖母を探した重い数日と、その後の闘病生活、被爆者として受けた差別、そして今も残る心の傷について、淡々としかしながら原爆・核兵器が人間としての尊厳そのものを破壊してきたことを話して下さいました。

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最後に、人間だけではなく、生きとし生けるものすべての生命の尊さを強調しつつ、感謝したい相手として白石さんは、「母」、自分の心の丈を打ち明けることのできた雄の鶏・コータ、そして結婚前には被爆者であることを伝えられなかった自分を包容してくれた御「主人」を挙げられました。

 

核兵器禁止条約が現実になった今、一人でも多くの被爆者とともに、核廃絶の日を迎えられるよう、会場の2800人が決意を新たにした瞬間でした。

 

広島県から選ばれた3人の第20代高校生平和大使、久永風音(かざね)さん、船井木奈美(こなみ)さん、小林美晴さんも、若い世代の代表として被爆者の思いをしっかり世界に伝えて行く覚悟を語ってくれました。福島からの報告は福島県平和フォーラム代表の角田政志さん。福島に来ることで「フクシマの現実」を理解し、それを元に未来のための行動を始めようと力強いアピールがありました。「核と人類は共存できない」ことの意味を会場全員が共有できた報告です。

 

大会の事務局長である藤本泰成さんの基調提案で今回の大会の骨格が示されました。世界の多数を占める国々や市民の力によって、国連で核兵器禁止条約が採択された半面、核保有国や核依存国の頑なさは度を増し、また国内の政治も言葉を失うほど劣化し腐敗している現状に対する特効薬は、やはり憲法であり、被爆者・被曝者の人権が侵害されている状況を変えるためにも、私たち市民の力と憲法の力を最大限に生かして行こうという、希望にあふれるメッセージでした。

 

昨年に続いて残念だったのは、広島市長も県知事も顔を見せなかったことです。

 

核兵器禁止条約が締結された今年の原水禁世界大会では、劣悪な政治を変えるためにも原点に戻って、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の言葉を反芻し、その具現化である憲法を為政者に遵守させる行動を通して、核なき平和な世界実現のための世論がさらに大きくなるよう、大会全参加者とともに頑張りたいと思います。

  

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2017年8月 1日 (火)

石川教授の講演 ③今日的課題 ――「権限」「正統性」「財源」によるコントロール――

 

石川教授の講演 ③ 今日的課題

――「権限」「正統性」「財政」によるコントロール――

 

東京大学法学部の石川健治教授による講演の最終部分です。4部の構成は次の通りです。

⓪ 導入  ①憲法論の構造  ②9条論の構造  ③今日的課題

 

 

                 

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9条をいじるということは、広島の世界的使命に密接に関わっている。それを、自衛隊のコントロールあるいは統制という面から考える。

 

それには三つの階層がある。「権限」「正統性」「財政」だ。改憲の場合、9条を変えることでどんな権限が国家に発生するのかを見極めておかなくてはならない。内閣の職務権限は73条に規定されているが、その中に軍事に関する権限はない。9条があるからだ。

 

しかし、憲法によって権限が与えられていてもその権限を行使するための「権原」、つまり法律的な根拠あるいは正統性が必要だ。例えば、81条に規定されている違憲審査権がある。それは一つの権限を定めているのだが、実際にその権限を使うための根拠が必要だ。国権の最高機関である国会が定めた法律に問題がある、と言うためにこの点が問題になる。そして、一皮むくと、やはり財源がなければ何もできないのだから、これも重要だ。

 

では軍事力の統制について見てみよう。9条の1項と2項が権限としての軍事力を否定してきた。しかし、自衛隊が作られたことで、2項は破られてしまった。それでも、正統性と財政が絡んで、「違憲」を避ける必要性が重く受け止められ、統制が行われた。例えば財務省が予算の抑制を行う際の議論として有効だった、という側面がある。自衛隊の創設で性質が変ったとしても、2項のあることで軍拡路線は抑えられた。70年間の成功の歴史と捉えて良いのではないか。そして災害救助隊としての自衛隊は愛されてきた。

 

2項が大きな役割を果してきたということなのだが、3項ができるとこの統制が外れる。つまり、uncontrollable、コントロールが効かない状態になってしまう。

 

この視点からは、「統制」が入っているという意味で自民党草案の方が少しはましだとさえ言えるが、そこまでは深く考えずにそうなっている。自民党草案で改憲することにも反対だか、統制を外す形での改憲はどうしても阻止しなくてはならない。

 

口当りは良いが本当に危険な提案がなされていることに気付いて欲しい。そしてその提案を阻止しなくてはならない。

 

時間がなくて、ネグった点が二つある。一つは、私たちが生きる意味をどう捉えるのかという点だ。憲法は、一つの物語としてその意味を示している。この視点から、広島の意味もある。

 

松元ヒロさんが憲法の前文を感動的に暗唱してくれたが、以前、憲法の集会で加藤剛さんの前座を務めたことがある。加藤さんも憲法前文を繊細に芸術的に読んでくれた。私たちの持つ夢の形見とでも言ったら良いのだろうか。そして憲法は、人類の物語のテキストであり、それなくして憲法は成り立たない。

 

憲法の持つこの側面を敵視して改憲しようとしている人たちもいるのだが、本気で関わっている人はこの点を無視しない。結局、本気度の強い少数の人たちが引っ張って、それほどでもない大勢の人たちを引き連れて法改正を行っているという事実も認識しておこう。

 

最後に日本の財政について一言。大変苦しくなっている。これまでのように積み上げ方式で予算が編成できないくらい財政は逼迫している。それは様々なところに波及しているが、結果として専制につながる。加計問題は根が深い。表面だけではなく、根の深い部分を見よう。

 

 

 

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2017年7月30日 (日)

石川教授の講演 ② 9条論の構造 ――「生活」の4層構造を元に考える――

 

石川教授の講演 ② 9条論の構造

――「生活」の4層構造を元に考える――

 

722日、東京大学法学部の石川健治教授による四部構成の講演中、今回は第三部の「9条論の構造」を報告します。念のために、4部を掲げておきます。

⓪ 導入  ①憲法論の構造  ②9条論の構造  ③今日的課題

 

 

9条は厄介な条文だ。憲法の第2章には、9条という一つの条文しかない。軍隊を持つ国では、軍隊についての多くの条文があるのだが、それがない。構造的理解が必要な所以でもあるし、9条に触ると憲法の全構造が崩れるという特徴とも関っている。実は憲法学としても扱い兼ねている。

 

日本の人文科学の特徴の一つは、巨人の肩に乗っての議論ができることにある。欧米の知見を基に、経験と研究を積み重ねて議論する。でも9条にはそれができない。特別な存在である9条の議論の出発点として、特殊性のない普通の憲法の構造から見て行きたい。

 

私たちが生きて生活をすることを階層的に見た場合、まず「個人生活」がある。その上には「社会生活」があり、それをまとめる形で「国家生活」がある。政治の場で「個人」が取り上げられたことは文明の成果だと考えて良い。そして、19世紀には「社会」が考察の対象になった。「国家」で問題にされるのは統治システムだが、地方自治もこの中に含めている。そして世界的な比較をした場合、かなりの共通点があることも事実だ。

 

20世紀になって、その上に「国際生活」が現れるが、あまり歴史がないので、国際憲法にまでは至っていない。国家と国際の中間的存在としてはEUがある。国際憲法の規定だと捉えても良いものは、今のところ国内憲法に表現されている。しかも、どの国でもそれは一方的に書かれている。例えば、ドイツでの、EU誕生の暁にはそれに主権を譲るといったような形の規定だ。また、不戦条項を憲法に入れている国もあるので、その点では日本だけが孤立しているのではない。長い目で見ると、このような形の条項が集まって国際憲法になるのかもしれない。

 

四つの階層を視覚的に縦に並べておきます。

 

国際生活

国家生活

社会生活

個人生活

 

しかし、9条については先例がないので、これからが仕事だ。出発点として、国家生活、社会生活、個人生活とどう関わるのかを考える必要がある。これは今まで行われてこなかった。

 

9条は個人生活にも大きな影響を持つ。それは風通しの良さや日常レベルでの空気感という言葉で表せば良いのかもしれない。

 

終戦後、GHQは日本政府に対して「自由の指令」を出し、政治犯の釈放等を行った。これは、批判の自由を保障する指令だった。東久邇宮内閣はこれに対応できず、総辞職した。次に、GHQは「神道指令」を出し、国家神道や神社神道を禁止した。さらに天皇の人間宣言が行われ、一連の改革の形が明らかになった。

 

         

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「国体護持」と「一億総懺悔」を掲げたが、54日で総辞職した東久邇宮内閣

 

「自由の指令」は憲法21条に盛り込まれ、「神道指令」は20条、そして人間宣言は第一章という形で、憲法に反映されている。これらはすべて軍国主義の排除を目的としており、それに止めを刺したのが、9条だ。そのことで「国家生活」が非軍事化された。それが、13条の意味だ。「個人生活」が尊重されるという条項で、戦前は否定されていた「個人生活」が保障されたのだ。

 

次回は③今日的課題です。

 

 

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2017年7月29日 (土)

石川教授の講演 ①憲法論の構造 ――人類の英知の蓄積――

 

石川教授の講演 ①憲法論の構造

――人類の英知の蓄積――

 

722日に広島弁護士会主催で開かれた講演会の報告を続けます。東京大学法学部の石川健治教授の講演は四部構成でした。

⓪ 導入

 憲法論の構造

 9条論の構造

 今日的課題

今回はその第二部です。

 

憲法の条文の逐条読みでは本質がつかめない。その理由は二つあって、一つは憲法の中身には多くの抽象的概念が網羅されていること、もう一つは、2000年の歴史があること。その歴史中、「国民主権」という概念は比較的新しいもので、16世紀なって現れている。

 

つまり憲法を読むということはギリシャ悲劇のような古典劇を読むことに比肩できる。そしてそこには人類の英知が蓄積されている。この点については、かつて青島幸男氏が都知事だったときに東京で開かれた国際憲法学会での挨拶で、素晴らしい指摘をしている。

 

「人間のDNAに全ての生物の歴史が刻まれているように、憲法には人類の英知の全てが詰め込まれている。」

 

           

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DNA には全ての生物の歴史が刻まれている

 

 

それはその通りなのだが、憲法の制定という政治過程では、制定時点での政治状況を反映しての思惑が入ってくることも事実だ。つまり不純物も紛れ込んでいる。これはいわば偶然の所産なので、出し入れ可能な部分だ。日本国憲法には96条があって、それがこの出し入れを可能にしている。

 

では9条はどちらなのだろうか。このような背景を考えずに、「お試し改憲」をしようとしたり「火遊び」として改憲を考えたりする人たちに水を掛けるのも憲法学者の仕事だ。憲法の中で触って良い部分とそうでない部分とを峻別しなくてはならないということだ。

 

最近の問題提起の一つに、憲法の条文数が少ないという議論がある。計量系の政治学者が、憲法中の単語数を比較して日本の憲法が短いことを指摘している。一番長いのはインドの憲法だが、確かに日本国憲法は短い。それは、大日本国憲法を改正した形を取っているからで、元々の大日本国憲法が短かったということだ。

 

しかし、長過ぎる部分もある。刑事手続きに関する31条から40条で、全体で103条ある憲法の一割だ。これは戦前の状況が悪かったことを示している。憲法で正さないと改善できなかったということだ。

 

もう一つ、日本は連邦制ではないので、国と州との規定を憲法に盛り込む必要がない。これが、短いことのもう一つの理由だ。

 

憲法が短いので、実際の政治の場面では隙間を埋めなくてはならない場合が出てくる。解釈が必要になるということだ。例えば衆議院の解散権はどこにあるのかの明文規定はない。一行書いてあればそれで済むことなのだが、それがないので、判断を下すには統治システム全体を見なくてはならない。つまり構造的議論が必要だ。

 

こう見てきて分ることは、憲法は普通の法律とは違うということだ。改正するかどうかという点も含めて、普通の法律と一緒に扱ってはいけない。

 

次回は②9条論の構造です。

 

 

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2017年7月27日 (木)

石川教授の講演・導入 ――共和制と専制政治――

 

石川教授の講演・導入

――共和制と専制政治――

 

722日に広島弁護士会主催で開かれた講演会の報告をさせて頂きますが、一人目はスダンダップコメディアンの松元ヒロさんでした。スタンダップコメディーの良さを味わうには、その場でリズムや躍動感、即興のセリフや間の取り方等、内容を要約したのでは伝わらない要素が多いので、是非、YouTubeで御覧下さい。その内の一つを貼り付けておきます。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=rw69U0ocvgM

 

東京大学法学部の石川健治教授の講演は、私の勉強不足の結果かも知れないのですが、これまで聞いたり読んだりしてきた憲法論とは違った次元からの内容で正に「目から鱗」でした。

 

           

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石川教授の言葉を拾いながら説明すると、キーワードは、「人類の英知」「物語」「構造」「生活」です。

 

まず、憲法には人類の英知がまとめられている、ということなのですが、「押し付けられたから変えるべき」という主張と対極にある考え方だと言っても良いように思います。次にその人類の英知をどう表現するのかを考えると、それは「物語」である、ということに注目したいと石川教授は述べています。実は、アインシュタインの方程式「E = mc2」も同様に物語なのですが、それについては機会を改めましょう。

 

その物語を詳しく理解するために、憲法の構造的な分析を見事にして下さいました。これは講演の中でさらに詳しく論じられます。その構造の一つが重層構造です。その中で今回の講演で取り上げられたのが、「生活」という視点です。憲法が働き掛ける対象、あるいは主体になる存在等、憲法に関わる「世界」を「個人生活」「社会生活」「国家生活」「世界生活」という4層に整理した上で、それぞれの生活と憲法がどう関わるのかを理解することで、憲法の存在や意義、その位置付けがしっかりと伝わってきました。

 

冒頭で、石川教授は講演アウトラインとして4つの項目を掲げました。

 

⓪ 導入

 憲法論の構造

 9条論の構造

 今日的課題

 

まず導入部です。今私たちが直面している問題点を整理して、安倍総理が憲法記念日に提案した「自衛隊の存在を明記」の本質は、私たちが思っている以上に深刻であることを指摘してくれました。

 

これまでの改憲論は、「何かを変える」ためだった。例えば「戦後レジームからの脱却」。しかし、今回は「変えない」という方針に変った。しかし、何かが変わるはずだ。その何かを探そう。そのためにカントが重要だ。

 

[ここで、『恒久平和論』が書かれた背景、構成についての興味深い話がありましたが、長くなりますので省略します。]

 

カントは、恒久平和のためには共和制が必要だと言っている。実はアリストテレスの頃から、政治の形態は「君主制」、「貴族制」そして「民主制」と定式化されてきた。しかし、統治の仕方から整理すると、「専制」(despotic)と「共和制」(republican)だ。[:専制とは独裁制とも訳される。]

 

共和制とは、執行権と立法権が分離されていることを指す。つまり、立憲的だということだ。民主制との違いは、民主制が専制(despotic)になり得る点だ。それは、公的決定を私的に扱う場合に発生する。そして、権力の私物化は平和を害する。これがカントの言い分だが、9条を認めた上で一部を付け加えるという提案を考えるに当って、「変えないのなら問題はない」と簡単に結論付けてしまわないで、「専制」か「共和制」かという視点から、背景を理解することが重要だ。

 

次回は、①憲法論の構造、です。

 

 

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2017年7月26日 (水)

憲法施行70周年、今、ヒロシマができること ――松元ヒロ、石川健治お二人は圧巻でした――

 

憲法施行70周年、今、ヒロシマができること

――松元ヒロ、石川健治お二人は圧巻でした――

 

               

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722日の土曜日、広島弁護士会館で素晴らしいパーフォーマンスと講演を聞くことができました。お一人は、スタンダップコメディアンの松元ヒロさん、そしてもう一人は東大法学部教授の石川健治さんです。

 

 

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そのレポートを、広教組の有田智樹さんが寄稿してくれました。もう一人のスター・ライターの登場です。

 

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日本国憲法くんに聞いてみたい

 

以前、ある活動家の方が次のようにおっしゃられた。

 

「私たちは護憲勢力ではない。憲法第9条をはじめ、生存権などを今、変えてはいけない条文を恒久法へと改正していく、いわば『改憲勢力』でなければならない」と。

 

確かに、今の内閣に、今の与党に憲法を「改悪」されたくはない。しかし、だからといって「良い方向へ」といえど、「改憲」してもよいのだろうか?その言葉が、ずっとどこかに「引っかかり」を残していた。

 

7月22日(土)、広島弁護士会館にて、「憲法施行70周年、今、ヒロシマができること」と銘打って集会が開かれた。日本弁護士連合会と中国地方弁護士会連合会の共催で開かれた集会に、市民、民間団体等、大勢の人が集まった。

 

集会では、元ニュースペーパーの一員で、スタンダップコメディアンとしてソロ活動されている松元ヒロさんが、ステージに立たれた。松元ヒロさんは、今の内閣総理大臣、防衛大臣をはじめ、政治の正解を痛快に笑い飛ばしてくれた。また、ステージ最終盤には、自らを「日本国憲法」となって演じ、それはまるで「参加者への改憲への警鐘」であった。歯切れの良さ、スピード感、そして、最終盤の「憲法くん」では日本国憲法前文を、一言一句間違わず、暗唱した。その姿は圧巻そのもの。会場は静まりかえり、そして拍手喝さいだった。

 

次に「日本国憲法施行70年の今、考えるべきこと」と題し、東京大学法学部教授の石川健治さんより講演を受けた。石川さんは、憲法のもつ理念とその構造、そして私たちの個人生活に密着している憲法9条とその背景にあるものについて話しをされた。石川さんは、現在の改憲論のポイントとして、憲法の現状を変えないと言いながらも、9条に自衛隊の正統性を盛り込もうとしている事を見過ごしてはならず、私たちが阻まなくてはならないとした。聞き心地の良い言葉を用いての改憲提案であるが、9条がどのような役割を果たし、またどのような役割を果たさなければならないのかという事。その中で、9条を守るヒロシマの役割はとても大きいものであると論じた。改めて、憲法をもっと身近に感じられ、また重要性を考えさえられる集会になった。

 

皆さんよくご存じの古舘伊知郎さん。この方が、某局の報道番組を降板される前に、ある特集を番組内でオンエアーした。内容はドイツのワイマール地方を訪れ、当時世界各国から「最も民主主義的な憲法」として讃えられた、かの有名な「ワイマール憲法」についての特集であった。当時世界の中で「最も民主主義的」な憲法であったにもかかわらず、なぜ第2次世界大戦という戦争の引き金を引くことになったのかを、わかりやすく解説された内容であった。理由はいたってシンプル。政権を持つナチスに、国家発動権を議会で付与してしまったことだ。それは、ファシズムという亡霊に国民が引きずられ、一握りの権力に「主権」を「明け渡した」瞬間であった。その後、どのようになっていったのかは、誰もが知る事実である。

 

どこか、今の日本にそっくりではないか?まったくもって、戦前復古の道が再び開きかけてはいまいか。私たちが許してしまえば、この国の「危うさ」はもはや思い過ごしではなくなる。今、30代を終えようとしている人生だが、憲法くんはその倍を生きてきた。本当に憲法くんが、しゃべるとしたら、今の私たちに、今のこの世界になんと語るだろうか? 

 

[by 広教組 有田智樹]

 

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石川教授の講演を敷衍したインタビューがWebRonzaに掲載されています。有料のサイトですが、憲法問題の重さを伝えたい朝日の心意気でしょうか、石川教授のインタビューは無料で読めます。URL

http://webronza.asahi.com/free/list.html

 

それだけで十分だと言っても良いのですが、やはり私がどう咀嚼・理解しているのかもお伝えしたいので、次回から、石川教授の講演内容を報告したいと思います。

 

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2017年6月30日 (金)

政治は言葉です ――マスコミの責任放棄も重大です――

 

政治は言葉です

――マスコミの責任放棄も重大です――

 

言葉の通じない人にその事実を言葉で説明する矛盾を感じつつ、それでも、政治が言葉であることを繰り返したいと思います。

 

言葉を大切にすることから始めなくてはなりませんが、「有言実行」と「嘘を吐かない」はその大前提です。客観的な事実を認めなかったり、約束を勝手に反故にしたり、相矛盾することを平気で言い続けたりすることを前提にして言葉を使うのであれば、結果的に何を言っても良いことになってしまいますし、何を真実と取り何を無視すれば良いのかの区別が付かず、言葉によるコミュニケーションが成り立たないからです。

 

そして政治とは言葉です。勿論、犯罪を犯したり法律で定められていることを守らなかった場合には、権力によって罰を与えたり強制する力は認められていますし、議会での議決は多数決ですので数の力も関わってきます。その視点から、究極的に政治とは数だ、あるいは力だと主張することも可能です。

 

しかし、政治が理想としている姿は力を使わずに合理的な判断がなされ、最大多数の最大幸福が実現されることなのではないでしょうか。力を使わずに合意を形成しそれを実行するためには、言葉による以外の道はありません。

 

しかし、最近報道されている政治家の言動は目に余ると言っただけではとても表すことのできないレベルに達しています。

 

テレビ等で何度も繰り返し放映・報道された豊田真由子議員の言葉を上手くまとめられる語彙をお持ちの方は少ないのではないでしょうか。「言語道断?」「傍若無人?」「厚顔無恥?」と四字熟語を並べてもその酷さは伝わりません。一人の人間の言動として許される最低限度を超えているのではないでしょうか。j

 

しかし、稲田防衛大臣の発言は、何度も繰り返して酷いレベルの言葉が続いていることを考えると、それ以上に容認できないとも言えそうです。

 

                 

Photo

           

 

都議会議員選挙中、板橋区で開かれた集会で、「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としても、お願いしたいと思っているところだ」と述べたようですが、これは明確に憲法違反、自衛隊法違反、そして公職選挙法違反です。

 

憲法第15条2項では「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定しています。

 

自衛隊法の第61条は次の通りです。

 

隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない

 

公職選挙法の第136条の2です。

 

次の各号のいずれかに該当する者は、その地位を利用して選挙運動をすることができない。
 国若しくは地方公共団体の公務員又は特定独立行政法人若しくは特定地方独立行政法人の役員若しくは職員
 沖縄振興開発金融公庫の役員又は職員(以下「公庫の役職員」という。)
 前項各号に掲げる者が公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、支持し、若しくはこれに反対する目的をもつてする次の各号に掲げる行為又は公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)である同項各号に掲げる者が公職の候補者として推薦され、若しくは支持される目的をもつてする次の各号に掲げる行為は、同項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。公務員の地位を利用した選挙運動を禁止。自衛隊員は自衛隊法第61条によって、選挙権の行使を除く政治的行為が制限されている。

 

つまり、自衛隊員は自衛隊法第61条によって選挙権の行使を除く政治的行為が制限されていますし、自衛隊員を含む公務員は公職選挙法第136条の2で公務員の地位を利用した選挙運動を禁止されています。

 

それ以上に、「自衛隊」として自民党の候補をお願いするという意味は、戦争が起きた際、あるいは災害による被害者を救済する場合、自民党支持者以外は見捨てますよ、といったメッセージの発信だとも受け止められ兼ねないことです。こんな発言は、自衛隊員にとっては大きな侮辱です。そのことに反発しない自衛隊員は少ないのではないでしょうか。

 

発言は撤回されたようですが、一度発せられた言葉やイメージを完全に拭い去り忘れ去ることはできません。

 

このことについて記者団から質問された安倍総理の返答は「おはよう」だと報道されています。つまり、稲田防衛大臣の発言には問題はなく、いつも通りの挨拶で事足りるという意思表示です。任命責任について考える姿勢など全くないどころか、総理大臣も同じ考え方を持っていることの証明になってしまっています。

 

さらに、マスコミの追及も大甘です。例えば、「大臣としての資質があると思うか」と官房長官に聞いている記者がいるのですが、資質があってもなくても、きちんとした言葉で職務を果たすことが第一なのではないでしょうか。資質がなくても責任を全うすれば、それは公務員として合格です。資質があってもそれができなければ失格です。問うべきはその点です。

 

稲田発言は、どう言い訳をしても撤回をしても、大臣としてまた国会議員として失格だということを自らの言葉によって天下に示してしまったのですから、それに対する答は決っています。手遅れにならない内に自らの判断で出処進退を明らかにすべきです。

 

 

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コメント

最近は何があっても『都議会選挙への影響』が語られ嫌になります。

「広島市民」様

コメント有り難う御座いました。同感です。そのうちに、「スポーツや勝負事への影響」「オリンピックへの影響」なども現れて、政治についての議論は、陰に隠されてしまうかもしれません。

それにしても自己防衛も出来ない人が防衛大臣とはシャレにもなりません。

「ポッポ」様

コメント有り難う御座いました。おっしゃる通りですね。

その上、不用意な言葉で相手を怒らせてしまうようなことをしょっちゅうしている人が防衛大臣なのですから、それれが原因で戦争に突入などという最悪のシナリオさえ頭に浮んでしまいます。

2017年6月17日 (土)

共謀罪反対の理由の一つ・冤罪 ――それには予算のあるなしが関係してきます――

 

共謀罪反対の理由の一つ・冤罪

――それには予算のあるなしが関係してきます――

 

安倍政権は、強行採決までして国会が承認したという形だけを作り上げ、共謀罪というとんでもない「犯罪」を新たに「合法化」してしまいました。このような暴挙を許してはいけない、そのためには世論が高まり、短時間に「良識の大合唱」が沸き上がるようにしたい――そんな思いで613日、14日、15日の三日間、午後5時半から一時間、本通りの青山前で、市民有志による街頭行動が行われました。

 

                 

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共謀罪がなぜ問題なのかについては、64日の集会ならびにデモについての報告をお読み頂きたいですし、YOKOさんからの報告も貴重です。そして「いのちとうとし」さんも続けて報告をしてくれました。また、日本弁護士連合会のまとめた『合意したら犯罪?合意だけで処罰?が分り易く説明してくれていますので、是非お読み下さい。


後は私たち一人一人がさらなる行動をすることのみ、と締め括っても良いところなのですが、私の感想も一つ二つ付け加えたいと思います。一つは、ネットで共謀罪について、自分は犯罪とは関係のない普通の人間だから共謀罪ができても怖がる必要はない、つまり全く問題なし、という趣旨の考え方が散見されることです。

 

ここで反論しても仕方がないかもしれませんが、このように考えている方々が想定していないことの一つは、法律ができるとそれにはお金が付いてくるという事実です。より正確には、出来上がった法律を施行するための予算を請求する根拠になるという意味ですが、その結果、法律の趣旨に沿った形で使えるお金が担当者たちの手に入るということです。

 

共謀罪の場合、2人以上の人間の合意が必要ですので、合意があるかどうかを調べることは捜査上、当然、許されることになるでしょう。その場合、例えば盗聴とか、メールやLINEを盗み見することも捜査上必要だと、為政者が判断すればそれは行われることになります。

 

現状だけで将来を判断することが難しい理由の一つは、現在の状況を元に未来を考えることには限界があるからです。特にお金の面での違いに気付かないとその違いが見えてこない場合もあります。今私たちが理解している現在の捜査の状況とは、現在行われている範囲での捜査をするだけの予算しか付いていない、という前提条件があります。それより多くの予算がついて、より広範囲の「捜査」がどのような形になるのかを予想するのは難しいと思います。しかし、仮に潤沢な予算が付いた場合の捜査と、現状とでは大きな違いが生じても不思議ではないことは御理解頂けると思います。

 

そして「オリンピック」という大義名分があるのですから、そのための予算として多額が計上されても恐らくは問題にならないでしょう。しかも「オリンピック」に隠されて中身までは十分分らないかもしれません。そして予算は使い切るのが原則ですから、そのお金を使って、「安全のため」そして「テロ予防のため」に盗聴・盗み見の範囲が増えて行くことは目に見えています。

 

そうなると、次に心配なのが冤罪です。「合意」をしたかどうかを事実だけで立証するのが難しいことはお分り頂けると思います。となると、私たちの言葉そのものが捜査の対象になります。日常生活の中でも「言った、言わない」の決着をつけるのは難しいことは私たち経験済みですが、権力を持って捜査する人たちが、「言った」と結論付ければ、それに対して私たち普通の市民が対抗することはほとんど不可能に近くなります。そこから冤罪が生まれます。

 

これは私たちにとっても無縁ではありません。共謀罪とは関係のない冤罪で最近、注目されたRCCの元アナウンサー煙石さんの冤罪事件が、冤罪の恐ろしさを示しています。この事件については、北村弁護士⑦パパさん、そして事件鑑定人のブログでも取り上げられていて、とても勉強になりました。

  

そして皆さんが指摘しているように冤罪は誰にでも起り得ることです。煙石さんはマスコミ人です。そしてマスコミ人は、普通の人たちよりは権力との接点がありますし、例えば違法捜査をしたりすればそれは仲間のマスコミから公表されて問題視されるであろう可能性も一般人の場合よりは高いはずです。したがって、警察や検察は恐らくより慎重に捜査をすることになるでしょう。にもかかわらず、煙石さんは最高裁まで闘ってようやく無罪を勝ち取らなくてはなりませんでした。

 

煙石さんの御苦労と勇気、そして彼を支えた英雄たちの存在を讃えたいと思います。同時にこの事件は、冤罪は他人事ではないことをはっきりと示してくれているように思います。

 

もう一点、事件鑑定人さんが指摘しているのは科捜研の予算が厳しいために高価な解析ソフトが使えなかった可能性です。それが煙石さんの無罪の証明と関わっていたということなのですが、それは、科学的な捜査でも「予算」が大きな役割を果している事実を認めなくてはならないという結論になります。共謀罪でも、予算の付くことで捜査内容が大きく変わるであろうことの傍証にもなっているのではないでしょうか。

 

 

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2017年6月 5日 (月)

共謀罪反対集会とデモ ――広島弁護士会主催のテーマは「私の心を探るな」――

 

共謀罪反対集会とデモ

――広島弁護士会主催のテーマは「私の心を探るな」――

 

527日に衆議院で強行採決された共謀罪新設法案は今、参議院で審議されていますが、どうしてもこの法案の成立を阻止しなくてはならないと、広島弁護士会の呼び掛けで、午後2時から原爆ドーム前の集会が開かれました。炎天下にもかかわらず、500名の参加者があり、集会後は原爆ドームから八丁堀、本通りを通って平和公園までのデモを通じて多くの人々に呼び掛けました。

 

集会は、最初に主催者を代表して下中奈美広島弁護士会会長の挨拶があり、続いて民進党の森本真治参議院議員の国会報告、そして連合事務局長を含む3人から市民の立場を代弁するアピールがあり、最後に弁護士会の共謀罪担当の前川弁護士から閉会の挨拶がありました。以下、アイ女性会議の佐藤奈保子さんにまとめて頂いたレポートです。

 

             

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下中会長の挨拶

  

下中会長は「これまで『テロ等準備罪』は3回廃案となっている。2020東京オリンピック・パラリンピックでテロを未然に防止するためと提案しているが、すでに国際犯罪防止条約にプラスして国際・国内法の整備がされているにもかかわらず、今回、277の対象犯罪を盛り込んだ「共謀罪」を提出しました。一般市民も「話し合い」や「計画」をしていたとして恣意的に犯罪対象にされかねない。安倍首相は一貫して「戦争のできる国」づくりのために急いでいる。今国会で通そうと必死だ。弁護士会はみなさんと一緒に廃案にむけてがんばります。」と力強いあいさつ。

 

 

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森本参議院議員の国会報告

 

民進党の森本真治参議院議員からは「法案は不明な点(180の論点)が次々と出ているが、十分な整理もされていないにもかかわらず、審議を拒否すると「質問なし」として強行採決されるので審議を徹底して迫る。みなさんの声とともに国会でがんばる」と国会内の状況報告。

 

広島市立大学の湯浅正恵教授は「『安保法案』に次いで危機感を感じてこの場に来た。安全・秩序と銘打って当局が問題ありと思ったら何もしていなくても監視強化され、表現・言論・集会の自由を奪い、脅かされる。当局に睨まれないために自己規制することに始まって、結局は私たち一人一人が言葉を奪われる。私は『秘密保護法』の時も言ったが、1人の人間として生きる自由・権利を放棄したくないから反対する」と力強い反対の意思表明。

 

写真家の藤岡あやさん(呉出身)は「『共謀罪』がよく分からなくて勉強した。2020オリンピック・パラリンピックのテロ対策で一般市民は対象外と言うが、私が護衛艦やデモを撮っていたら、犯罪の対象にされるかも。生きる喜びや表現が制限されるとしたらいやだ!」と具体的な表現手段に沿っての説得力ある反対論。

 

連合広島の山﨑幸治事務局長が「連合としても重要な問題と捉えている。大きくまとめると4つの問題点がある。

  適用する対象があいまい 

 「犯罪」の構成要件が好い加減 

  捜査等の手法が拡大され監視社会が作られてしまう 

  人間相互の不信感を高める(密告等により)

このような法案は何としても撤回させなくてはならない。連合広島もがんばります」と決意表明。

 

デモのシュプレヒコールも共謀罪の本質を突く鋭くかつ記憶に残るもので、500人の参加者の熱い思いが伝わりました。

 

「戦争反対」「共謀罪は廃案に」「テロ対策と嘘つくな」「話し合いは人間生活の基本」「告げ口を奨励する法案に反対」「憲法を変えるな、政治を変えろ」

 

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