アメリカ

2017年2月24日 (金)

トランプ大統領の精神状態 ――専門家の意見が分れています――  


トランプ大統領の精神状態

――専門家の意見が分れています――  

 

「『国家の品格』 ――諸悪の根源は「論理」と「合理的精神」――」では、トランプ候補が論理と合理性の両者を捨てたことで選挙戦に勝利し、アメリカ社会は藤原正彦氏の著書『国家の品格』が理想とする社会に向かうとも考えられるのではないかという問題提起をしました。また、論理と合理性を捨てたトランプ氏を熱狂的に支持した人が多かった事実についても考える必要のあることを指摘しました。そのために、『国家の品格』とそれに対する反論である『「国家の品格」への素朴な疑問』(吉孝也/前川征弘著・新風舎刊)を取り上げる予定でしたが、その前に、論理と合理性を捨ててはいけないことを精神医学や心理学の立場から訴えている専門家たちの声をお届けしたいと思います。

 

恐らく最も注目されたのは、213日付のニュー・ヨーク・タイムズ(NYT)電子版に掲載された、精神医学の専門家35人による警告です。大きな波紋を呼んだ投稿のタイトルは「精神衛生の専門家がトランプ氏についての警告をする」です。専門家としての観察は次のような内容です。

「トランプ氏の発言や行動は、異なる意見を受容する能力に欠けることを示し、その結果、怒りという反応を示す。彼の言葉や行動は他者への共感能力に著しく欠けることを示している。こうした特徴を持つ個人は、自分の精神状況に合うように現実を歪めて捉え、事実と事実を伝えようとする人物(ジャーナリストや科学者)を攻撃する」

 

そして結論としては、次のように述べています。

 

「トランプ大統領の言動が示す重大な情緒的不安定さから、私たちは彼が大統領職を瑕疵なく務めることは不可能だと信じる」

 

NYTへの手紙の中で、これら35人の専門家は、1973年にアメリカ精神学会が制定した「ゴールドウォーター・ルール」を破っての行動であることを宣言しています。そのルールの内容は、精神科医がニュース・メディアと精神医学についての話をすることは許されるけれど、自分が直接診察したことのない人について、さらにその人の合意なく、精神医学的な診断を行い公開することは許されない、というものです。

 

このルールが作られた背景には、1964年の大統領選挙で、『ファクト』という雑誌が、共和党のバリー・ゴールドウォーター候補の精神状態について、精神医学の専門家の意見調査を行いその結果を掲載したことがあります。ゴールドウォーター候補に取って大変不本意な内容でしたので、同氏は名誉棄損で訴え勝訴したのです。

 

このルールを守らない理由として、35人の専門家は次のような見解を示しています。

 

「これまでこのルールを守って沈黙を続けてきたことによって、今という危機的状況にある時に、不安に駆られているジャーナリストや国会議員に専門家としての力を貸すことができなかった。しかし私たちは、これ以上沈黙を続けるにはあまりにも重大な危機に瀕していると考える。」

 

それだけではありません。以前にも報告したChange.orgを使っての署名運動が展開されています。35000人の精神衛生の専門家の賛同を呼び掛けてこの運動を始めたのは、心理学者・精神科医のジョン・ガルトナー博士です。現在、28000人を超える署名が寄せられています。まずはそのページです。

 

               

Changeorg

             

 呼び掛け文を訳しておきましょう。

 

「私たち、精神衛生の専門家として下記のごとく署名をした者たち (署名に際して、御自分の持つ資格を明記して下さい) は、ドナルド・トランプがアメリカ合衆国の大統領としての義務を適切に果す上で、心理学的な能力に欠けることを明確に示す精神疾患を患っているとの判断が正しいと信じている。よって、「(大統領としての) 権限を行使したり義務を果たすことが不可能な場合には」大統領の職務から解任される、と述べている米国憲法修正25条の第3項に従って、彼が大統領職から解任されることを謹んで要請します。」

 

ガルトナー博士はゴールドウォーター・ルールについても、それが制定された時とは条件が変わってきていることを、『フォーブズ』誌のエミリー・ウィリングハムさんの記事で指摘しています。

 

大きな違いの一つは、その後、アメリカの精神医学会がDSM (精神疾患の診断・統計マニュアル) と呼ばれるマニュアルを採用した結果、個人の言動についてのいくつかの客観的に判断できる基準を満たせば特定の精神疾患に罹っていることを判断できるようになったことだと主張しています。それに従えば、ある人物について直接の診察をしなくても精神疾患についての判断が出来ようになったから、ゴールドウォーター・ルールの適用はあまり意味がなくなったという結論です。

 

参考までに、ガルトナー博士がトランプ大統領の疾患として特定している「自己愛性パーソナリティー障害」をDSMの第4版では次のように規定しています。

 

誇大性(空想または行動における)、賛美されたい欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

1. 自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)

2. 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。

3. 自分が特別であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている。

4. 過剰な賛美を求める。

5. 特権意識(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)

6. 対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。

7. 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。

8. しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。

9. 尊大で傲慢な行動、または態度

— アメリカ精神医学会DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル]][9]

 

この意見に対する反論も当然あるのですが、このDSMの筆者の一人であるアレン・フランシス博士は、トランプ氏の言動に問題のあることは認めるが、例えば何人かの人たちが主張しているような「悪性の自己愛性パーソナリティー障害」としての認定はできない、と述べています。

 

その他の反論もあります。もう一つ、仮に精神疾患があったとしても、そのこと自体が大統領としての不適格性を示すことにはならないという指摘もあります。それは過去の大統領の言動を、DSMに従って篩に掛けると、精神疾患があると認められる人が何人もいるにもかかわらず、大統領としての職務はこなしている、という指摘です。例えばリンカーンはうつ病だったと信じられていますが、偉大な大統領の一人としても不動の地位を占めています。

 

また別の面からの批判もあります。ニュー・ヨーク・タイムズのリチャード・フリードマン氏は、人間としてのモラルの欠如や政治家としての不適格性を「精神疾患」だからと言ってしまうことで、その本人の政治的・倫理的・人間的等の責任を免除してしまうことになる危険性のあることを指摘しています。

 

難しい議論なのですが、マスコミを通して日本で政治家の評価をする際に、このような知的なレベルでのやり取りにはほとんどお目に掛かったことがないような気がします。『国家の品格』の視点からは、どう判断すべきなのでしょうか。そして、アメリカでトランプ大統領が誕生したことは事実ですが、アメリカ社会はまだ「論理」も「合理性」も捨ててはいない、と言って良いのでしょうか。

 

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2017年2月19日 (日)

『国家の品格』 ――諸悪の根源は「論理」と「合理的精神」――  


『国家の品格』

――諸悪の根源は「論理」と「合理的精神」――  

 

最初にお詫びです。217日は「2016原水禁学校の最終日」で、福島から福島平和フォーラムの代表で福島県教職員組合の委員長をなさっている角田政志さんを迎えてフクシマの現状について学びました。広島県原水禁常任理事の中谷悦子さんが、詳しく報告して下さっているのですが、アップするのが遅くなってしまいました。まだお読みでない方には、是非御一読頂きたく、再度御案内致させて頂きます。

 

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マイケル・ムーア監督が、トランプ大統領の当選を予言したことは良く知られていますが、実はもう一人しかも10年以上前に、こんな動きが起るべきだと熱く説いていた人がいます。藤原正彦氏です。ベストセラーになった彼の著書『国家の品格』の中で、氏が諸悪の根源として糾弾していたのが「西欧流の論理」そして「近代的合理精神」です。この二大悪が昨年のアメリカ大統領選挙でどう捨てられていったのかを見ることで、アメリカ社会が藤原氏の理想に近付いていることが分るはずなのですが、果たしてそれが人類の目指している方向に沿うものなのかどうか、考えて見たいと思います。。

 

トランプ大統領が「論理」と「合理性」を捨てていることについては信頼するに足る証言者がいます。2015年から選挙の時までトランプ候補に密着取材をした『ローリング・ストーン』誌の記者マット・タイビ氏です。彼の記事を集めた『Insane Clown President (狂気のピエロ大統領)――2016年のサーカスからの報告』 (Spiegel & Grau社刊) が秀逸です。そこから、大切なポイントをいくつか拾っておきましょう。

 

                 

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 選挙中 (そして選挙後、大統領就任後も続いていますが) のトランプ候補の言動の内、誰にとっても明らかだったのは、トランプ氏が嘘を言う、あるいは矛盾した内容を臆面もなく言い続ける、前に言ったことを平気で否定する、しかもそれに対する説明や謝罪は一切ない、ということです。マスコミを通じて私たちもそのことは良く知っていたはずです。例えば、就任式の会場に何人の人が集まったのかについて、マスコミ報道ではオバマ大統領の最初の就任式では180万人、それに対して今回は70から90万人とのことでした。トランプ大統領の反応は、マスコミは嘘をついている、自分には150万人くらいに見えたと報道されています。

 これまでの大統領選挙の報道では、これほど明白な嘘が並べられれば、マスコミが一斉に叩き、その結果、候補は陳謝に追い込まれ選挙戦から撤退するというシナリオしか想定されていなかったのだそうです。しかし、トランプ候補は自分の嘘は認めずマスコミに対する反撃をすることでさらにマスコミから注目されるというパターンを繰り返してきただけではなく、マスコミはそんなトランプ氏をさらに取り上げ、注目度を上げることに貢献してきたということなのです。

 つまり、政治という重要なトピックの当事者としての扱いではなく、あくまでも視聴率を稼げる「エンターテインメント」としてトランプ候補を取り上げ続けたということです。

 自分でコマーシャル代は出さずにマスコミに取り上げられ、その結果支持率が上がる現実を見て、共和党の他の候補もトランプ候補の真似をし始めます。その結果、選挙戦の実質的内容はなくなり、いかにセンセーショナルなことを言ってマスコミに注目して貰えるかの競争になりました。最終的にはマスコミの操縦術に長けたトランプ氏が勝利を収める結果になったことは、皆さん御存知の通りです。

 嘘が罷り通ったということは、論理を捨てたということですし、マスコミに取り上げられるために広く社会全体そしてその構成員である市民の立場を尊重するのではなく、また歴史を謙虚に振り返ることもなく、どれほど突飛な発言ができるのかに走ってしまった共和党候補だけが残ったということは、アメリカ政治に残されていた合理性を捨て去ってしまったことでもあります。より広く捕らえれば、知性まで捨ててしまったのです。

 

しかし、それでもトランプ候補の演説に涙し、就任式で感涙に咽んでいた人が多かったのは何故なのでしょうか。

 

次回は『国家の品格』とそれに対する見事な反論である『「国家の品格」への素朴な疑問』(吉孝也/前川征弘著・新風舎刊)を取り上げて、この問に答えるのと同時に、これからどうすべきなのかについても考えて見たいと思います。

 

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2017年2月17日 (金)

私のお宝(1) ――英単語カード――  


私のお宝(1)

――英単語カード――  

 

アメリカでの高校時代、自分で作った単語カードです。一枚目は授業中に先生の指示に従って作り、それに加えて30枚くらい、宿題として出されていた単語のペアを一枚のカードに書き写して作りました。

 

まず、「3-by-5 card」、つまり3インチ×5インチの大きさのインデックスカードを半分に切ります。角を斜めに切って、裏表と上下が手で触っただけで分るようにします。表には、スペリングが紛らわしくて、アメリカ人でも良く間違う単語 (このリストは宿題として渡されていました) の一対を書き込み、ひっくり返して裏には、それぞれの単語の意味を書きます。私はそれに日本語の意味も書き加えました。

 

宿題に出された単語についての試験もありましたので、とにかくカードを持ち歩いて何度も繰り返しましたので、全部覚えることができました。懐かしくて最近、このカードを取り出して何枚かを復習してみましたが、老化現象でしょうか忘れている単語があって、それはちょっとショックでした。

              

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さて、今の時代、高校生はどんな単語カードを使っているのか聞いてみると、きれいに印刷され、例文付きの覚え易いものが出てきました。自分で作ると手間が掛かります。同時にその手間が記憶のためのカギになって覚えやすいという側面はあるものの、分り易いフレーズが一緒になっていたり、例文が添えられていることも大切ですので、どちらがベターなのかは一概には言えないのかもしれません。

  

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 かつて、覚えていた単語を忘れていることのショックに加えて実はもう一つショックがありました。最近の子どもたちは英語の時間に「筆記体」を教わらないのだそうです。国際化が進んで、ハンコの代りに自筆のサインが必要になる時代だけに心配なのですが、サインくらいは練習次第で書けるようになるでしょうから杞憂かもしれません。

 

でも、アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズ氏が大学生の時にカリグラフィーに魅せられたことから、美しいコンピュータができた史実を思い起こすと、筆記体を学ぶことには創造性を育むというもう一つの大切な役割もあるような気がするのですが――。

 

 

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コメント

ペンでは筆記体でしかかけないので、筆記体で書いたら
「そごっ、書けるん?」と子供に言われましたw

「⑦パパ」様

コメント有り難う御座いました。

消えつつある筆記体を守るために、「昭和の歌を守る会」を真似て、「筆記体を守る会」でも立ち上げましょうか。

20年ぐらい前に通信添削の仕事をしていました。
その当時から、ブロック体オンリーでした。

最近、ある掲示板で、英語圏在住に方々に質問しました。
オバマ大統領のメッセージが筆記体だったので、果たして今でも使われているのか疑問に思ったからです。
複数のアメリカ在住の方々から回答があり、大体30〜40代が境目で、やはり若い方々はブロック体を使うとか。でも、おばあちゃんの手紙を孫が読めないなど、不都合があり、州によって違うようですが、筆記体復活のところが増えているそうです。
なお、signatureだけは各自が工夫した筆記体みたいなものだそうです。

「komitan」様

コメント有り難う御座いました。筆記体についての貴重な調査結果も教えて頂き、感激です。おばあちゃんの手紙が読めないのは、そう言われてみれば分りますが、気が付きませんでした。「筆記体を守る会」も立ち上げたいですね。

2017年2月 8日 (水)

日米比較   --億万長者がお金を出さなくても、自ら動くマスコミ--


日米比較  

--億万長者がお金を出さなくても、自ら動くマスコミ--

 

2010年にアメリカの最高裁判所が、「表現の自由」を守るため、選挙運動のために企業や組合の使える金額に上限はないと結論しました。その結果として巨万の富が選挙資金として流れ込み、誰もが、2012年の大統領選挙は大きな影響を受けるだろうと予測しました。

 

結果は、オバマ大統領の再選、上院は民主党、下院は共和党という勢力分布は全く変わりませんでした。しかし、人口の0.001パーセントの声が政治の方向性を決めるという大きな変化が起こりました。それは例えばウィスコンシン州やノース・カロライナ州で、それ以後どのように政治が変ったのかを視ることで理解できるのですが、その流れの辿り着いた先が、2016年のトランプ氏です。彼が共和党候補になり、大統領選挙そのものも制した背景にある、お金の存在を忘れてはなりません。

 

しかし、それは、「賄賂」とか「票の売買」という直接的な手段ではなく、テレビのコマーシャル、あるいはYouTubeへの投稿を宣伝する、または自分たちの信ずることを「正当性のある」政策としてまとめて広める、といった形で使われています。

 

「日本は常に、10年遅れでアメリカの後を追っている」と言われることがあります。もしそうなら、新しい形での金権政治の姿は日本の10年後を示しているのですから、それに対する対策を考えておく必要があることになります。

 

しかし、『ニューヨーク・タイムズ』の前東京支局長であるマーティン・ファクラーさんの『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』 (双葉社・20162月刊) で具体例として掲げられているいくつかの出来事を元に、日米の比較をする限り、アメリカなら億万長者が巨万の富を注ぎ込まないと動かせないほどのことが、日本ではマスコミ自身の「自己規制」や「空気を読む」結果として簡単にできてしまっているために、実は、事マスコミの言動そしてマスコミの作り出す世論という点では、日本の方が先行しているのではないかという気さえするほどです。

 

             

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マスコミのあり方、そして私たちが勇気をもって発言する大切さを再確認するためにも、具体的エピソード満載のファクラーさんの好著をお勧めします。その中で触れられている大切な一つの事例があります。ファクラーさんが自らも調べ、『ニューヨーク・タイムズ』誌にも掲載されたのだそうですが、私も全く知らなかった「事件」です。以下、その部分の要約です。

 

北海島宗谷郡猿払村 (そうやぐんさるふつむら) は、日本最北の村として知られているが、戦争中、ここに浅茅野 (あさじの) 飛行場を造ることになり、その作業には服役中の日本人受刑者や朝鮮半島から連行してきた500人から1000人の労働者が従事した。

 

戦後、猿払村には奇跡的に一つの記録が残されており、90人近い朝鮮人労働者と20人ほどの日本人受刑者が死亡していたことが記録されていた。彼らはいわゆるタコ部屋に入れられており、脱走しようとして捕まれば棍棒で殴り殺されるといった悲惨な目に遭ったことを目撃した村民もいた。

 

この話を聞いたことのある水口孝一氏は、有志を募り、日韓合同のチームを組織して考古学者やボランティア、学生等、数百人の力で20006年から2010年までに、亡くなった人々の遺骨を発掘し、合計59体の遺骨を収集した。

 

強制労働による犠牲者を悼み歴史を後世に残すため、水口チームや支援者等が発起人になって現場近くに石碑を建立することにした。韓国メディアは、「日本はこんなに良いことをしている」と大きく報道した。それを目にした一部のネット右翼が「北海道の村がこんなけしからんことをやっている」「強制連行というウソ、捏造を自治体自ら広めている」と騒ぎ始め、村役場に電話による電凸やメール攻撃を行った。その結果、20131126日に行われる予定だった除幕式は中止された。

 

ファクラーさんは、自治体の対応の仕方にも問題があると指摘していますが、それ以上にこのようなニュースを取り上げ・支援しなかったマスコミの責任を問題にしています。猿払村は「孤立無援」の状態に置かれて、なす術を失ったからです。

 

国家権力がマスコミに圧力を掛ける凄さという点では、アメリカの方が日本より上だとファクラーさんは考えていますが、アメリカのマスコミはそれに立派に対抗している、と言っています。それに対して今の日本のマスコミは、報道や表現の自由についての認識が本当にあるのか、記者一人一人の人権と表現の自由を守るため、イデオロギーを超えて「全マスコミ」として戦う積りがあるのかを問うています。アメリカのマスコミがメジャー・リーグだとすると日本のマスコミは高校野球なみ、だというのがファクラーさんの診断です。

 

原発についての報道一つを取っても、日本のマスコミの情けなさをそう表現したくなる気持は分ります。そして、本当のところは、私たちの目に見えないところで巨万の富が動いているからこのような結果になっているのかもしれません。

 

そうではなく、巨万の富の力など使わなくても、「権力」というより大きな力の前に、日本のマスコミはひれ伏してしまっているのだとすると、アメリカで「明日」起こるかもしれないことが日本では既に起きてしまっていると言うべきなのかもしれません。

 

 

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2017年2月 7日 (火)

もう一冊の『Dark Money』   --Citizens United と最高裁判決--

もう一冊の『Dark Money』  

--Citizens United と最高裁判決--

 

前回はジェーン・メイヤーさんの著書『Dark Money』の内容をリストにして簡単に御紹介しましたが、その一つ一つの項目をもう少し詳しく説明したいと思います。政治とお金、選挙とお金の問題はどこでもいつでも視野に入れておかなくてはなりません。特に選挙の際の「ネガティブ・キャンペーン」という形で、対立候補についてのあることないことをテレビのコマーシャルとして流すことが、アメリカの選挙では当たり前になり、それが選挙結果を左右していることは御存知だと思います。

 

そのような目的のために、企業や組合が使える金額には制限がなくなったというのが、前回の⑥でした。


 2010年にはCitizens United という団体による訴訟で、企業や組合が、選挙の際に候補者に直接の寄付をしなければ、選挙運動のために使える金額は無制限であるとの最高裁の判決を勝ち取る。このことで、選挙が金で買える状態になった。

メイヤーさんの力作Dark Money』を要約する積りだったのですが、実はもう一冊『Dark Money』という本がありました。著者はジョン・クックさん。Kindle Unlimitedに登録すると無料で読めますので、試しに読んでみたのですが、私がお伝えしたいことがそのまま書いてありましたので、クックさんのまとめた、Citizens United  (CUと略します) という団体の紹介と、CUが提訴した裁判についての最高裁の判断を私なりに要約して御紹介します。

 

               

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2002年に、「Bipartisan Campaign Reform Act (超党派キャンペーン改革法)が作られましたその内容は企業や労働組合が選挙前の一か月間はネガティブかポジティブかに関わらず候補者についてのコマーシャルなどを流すためにメディアに対してお金を払うことを禁止するという内容でしたそれ以前から非営利団体についての制限はありましたので営利団体を含めることで選挙運動についての規制が整備されたと考えられていました

 

非営利団体についての規制は、お金のない候補でも選挙で極端には不利にならないような環境を整備するという目的でした。

 

ところが、2008年にCitizens United という、コーク兄弟から膨大な資金を受け取っている団体が、ヒラリー・クリントン候補についてのネガティブ・キャンペーンの一環としてオン・デマンドのビデオを作り、そのビデオを宣伝するメディア・キャンペーンを精力的に行いました。連邦選挙委員会(FEC)は、これが超党派キャンペーン改革法違反だと判断して、中止命令を出したのですが、CU側は、表現の自由を保障している憲法の修正第一条違反であることを理由に、裁判を起こしました。

 

最終的には最高裁判所が判決を下したのですが、その判断には重要な4つのポイントがあります。

 

 FECそして、超党派キャンペーン改革法は、憲法の修正第一条違反を犯している。

 企業にも、個人と同様に「表現の自由」が与えられている。それは「表現」することが可能などのような主体についても、この自由が保障されているからである。

 巨額の資金が使われているという事実だけから、政府がそれを「腐敗」であると断定することはできない。つまり、いくら以上なら腐敗であり、それ未満ならそうではないという客観的な基準を設けることができないからである。

 支出額の制限を加えることは、市民の知る権利を侵害する可能性がある。情報を広げるのにはお金がかかるという理由で作られた規制によって、ある情報が隠されてしまうのは市民の知る権利の侵害になり得る。

 

この結果、CUそしてコーク兄弟、ならびに多くの億万長者たちは、選挙戦を勝つためには無制限に自分たちの資産を使えるようになり、アメリカ社会は大きく変りました。日本からはなかなか見えない状況のですが、トランプ大統領を生んだ社会、そしてトランプ大統領の言動を理解するために、何回かにわたって御紹介したいと思います。

 

 

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2017年2月 5日 (日)

トランプ大統領の詭弁 --カギはDark Money--


トランプ大統領の詭弁

--カギはDark Money--

 

戦後70年総理大臣談話 (以下「談話」と略す) が、詭弁の典型であることはそれなりに御理解頂けたと思っていますが、私たちがその意識を共有し安倍政治に自分の言葉で反論して行くことがこれからの課題の一つだと思います。

 

トランプ大統領の詭弁を説明するには、その前提としてアメリカ社会の現状そして歴史をより詳しく理解する必要のあることは既に指摘しましたが、数回にわたって、その中でもあまり知られていない「Dark Money」、つまり「黒い金」あるいは「汚い金」を概観したいと思います。トランプ大統領誕生の裏には、巨万の富を操り、しかもその実態は公表されることなく、アメリカの政治風土を30年以上にわたって右傾化させることに情熱を燃やし、ついに成功させた億万長者のグループがいたのです。

 

そのリーダーは、チャールズ・コークとデービッド・コークの二人、まとめてコーク兄弟と呼ばれますが、二人の資産を合わせると世界第一位の富を手中にしています。Forbes誌によると、世界一はMicrosoftのビル・ゲーツで750億ドルですが、チャールズとデイビッドはそれぞれ395億ドルですので、二人合わせると800億近くになり、合わせて一位になります。(日本円にすると、1ドル110円として、88000億円)

 

その二人を中心に、アメリカの「Dark Money」の真相を明らかにしているのが、雑誌『ニューヨーカー』の記者だったジェーン・メイヤーさんの『Dark Money』という力作です。日本語訳も出ていますので、それをお読み頂けば十分ではあるのですが、私なりの感想文を書く積りで「さわり」を御紹介したいと思います。

            

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Dark Money』は詳細な調査によって明らかになった事実を元に, 1970年代からこれまでアメリカのスーパー・リッチなごく少数の人々がアメリカの政治を事実上動かすほどの力を持つようになった歴史を描いていますその内特に重要な何点かを最初にまとめておきましょう

 

 デービッド・コークは1980年の大統領選挙にリバタリアン党の副大統領候補として出馬したが、総得票の1パーセントしか取れず、政治の表舞台で活躍することを諦める。その代りに自分たちの保守主義あるいは自由至上主義 (リバタリアンをこう訳していますが、政治のあらゆる場面で政府の関与を否定、特に課税権を縮小すること、環境問題についての関与をなくすこと等を主張している) を広め、選挙を応援することで政治的な影響力を増すことを中心に活動を始める。


 まず、保守的なシンク・タンクや研究所の後押しをしたり新たに設立したり、大学等の研究者にも経済的支援を行うことで、理論武装をし、さらに具体的な政策が説得力を持つような啓蒙方法等についても補助を行った。


 保守的なマスコミを抱き込み、自分たちの主張を広範に広め、リベラルなメディアに対する影響力も「飴と鞭」で拡大する。


 自分たちが寄付をしている慈善団体をトンネルさせるなどして、多額の選挙資金を自分たちの意のままになる候補者のために支出する。その際に、自分たちの名前は公にされないシステムを構築する。


 2003年に、コーク兄弟がそのためのネットワーク作りを始めた。最初集まった億万長者は十数人だったが、その後、このネットワークに招待されることがステータスになるくらい、組織は大きくなった。


 2010年にはCitizens United という団体による訴訟で、企業や組合が、選挙の際に候補者に直接の寄付をしなければ、選挙運動のために使える金額は無制限であるとの最高裁の判決を勝ち取る。このことで、選挙が金で買える状態になった。


 その結果、2016年の選挙では、コーク兄弟とそのネットワークで88900万ドルの資金を提供するようになった。1972年の選挙では、200万ドル(現在の価値では約1100万ドル)の選挙資金がその高額さ故にスキャンダルになったことを考えると、今昔の感がある。


 このような活動で億万長者の側が手に入れた「利益」は大きい。例えば、様々な税制改革では、高額所得者に対する課税や課税率が下がり、例えばレーガン時代には高額所得者の税率が70パーセントから28パーセントになった。


 2012年の選挙戦では、共和党は、最も貧しい人々から厳しく税を取る、という政策を掲げた。


 [追加の項目] 政府がビジネスに関わること、特に環境面などからの規制を行うことや法人税や所得税相続税等については強く反対しているのが、コーク・ネットワークの特徴だが、政府の防衛その他の事業の契約者として、莫大な利益を上げている事実にも注目すべし。

 



何度かにわたり、もう少し詳しく『Dark Money』の中身を紹介して行きます。

 

 

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2017年2月 1日 (水)

詭弁の技法 --トランプ大統領就任演説も戦後70年総理大臣談話も駆使しています――


詭弁の技法

--トランプ大統領就任演説も戦後70年総理大臣談話も駆使しています――

 

トランプ大統領の就任演説が不愉快だったのは、スケープゴートをでっち上げてそのスケープゴートを執拗に攻撃する破壊的かつネガティブな姿勢が、私たちの中にある「The Better Angels of Our Natureつまり私たちの中にある最善の資質と相容れないからなのだと思います

 

自然に思い出したのが、安倍晋三総理大臣が2015814日に読んだ「戦後70年総理大臣談話 (以下「談話」と略す) です。トランプ大統領の攻撃的なトーンとの比較で表現すれば「猫撫で声」のような調子でしたが、どちらにも共通していたのは、詭弁術を駆使していたことです。

 

               

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アメリカ議会で演説する安倍総理

 

 

「詭弁」については、以前御紹介した『数学で未来を予測する』 (PHPサイエンス・ワールド新書) の著者、野崎昭弘先生による『詭弁論理学』と『逆説論理学』(両方とも中公新書)が夙に有名です。楽しい本ですのでお勧めしますが、両書で取り上げられている詭弁はかなり高級です。対して、トランプ・安倍両氏の詭弁は初歩的と言っても良いレベルなのですが、社会的影響の大きさからは看過できません。

 

 

両者に共通しているのは、「不都合な真実」は隠して「自分に都合の良い」ことだけを強調していることです。つまり「全ての真実」を述べていないことです。このような考え方が大切なのは、「宣誓」という形で真実を述べる際の言葉が示しています。その点については「総理大臣も宣誓を」で触れていますので、お読み下さい。

 

何を隠しているのかの説明をする上で、アメリカの場合には背景の説明をより詳しくしなくてはなりませんので、先ずは「談話」から、いくつかの具体例を取り上げたいと思います。

 

「具体的」を強調するために、その典型である「数字」に注目したいと思います。客観性という点からも大切です。

 

「談話」中には4つの数字が使われています。第一次世界大戦における戦死者数1,000万人。先の大戦中に亡くなった日本人300万余。600万人を超える引揚者数。中国残留孤児約3,000人です。

 

さて、この「談話」が、戦後70年という節目に出されたことは、先の大戦、つまり第二次世界大戦が基本テーマです。でも、第一次世界大戦の戦死者数については1000万人という数字が挙げられているにもかかわらず、第二次世界大戦における総犠牲者数や戦死者数には全く言及がありません。

 

改めておさらいしておくと、全世界では、5,000万から8,000万の人が亡くなっていますし、国別ではソ連が一番多くて2,600万以上と言われています。中国も1,000万から2,000万と言われています。ナチスドイツが600万から900万、ホロコーストの犠牲になったユダヤ人は約600万と言われています。ある程度の不正確さはあるとしても、第二次世界大戦中の犠牲者数は、ほぼ常識になっています。

 

仮に第一次世界大戦まで遡る必要があったとしても、第二次世界大戦における戦死者数に言及しない理由はありません。これらの数字を示さずに、第一次世界大戦の戦死者数だけを掲げる意図は奈辺にあるのでしょうか。

 

一つには、世界では1,000万、日本は300万という対比から、時間枠を無視すれば、日本の被害が大きかったという印象を与えることは可能です。20世紀最後の時期に生まれた若者たちにとって、第一次世界大戦と第二次世界大戦の時間的な差はそれほど大きくはないでしょうから、「類推」によって、この数字が「先の大戦」の数字に近いと思い込んでしまう可能性まで考えてのことだとすると、その罪はさらに大きくなります。

 

また、1000万の代りに中国の犠牲者数として1,000万とか2,000万という数字が出てくれば、そのかなりの部分は対日戦での犠牲ですから、日本側の加害責任の大きさに誰でも気付いてしまうから、という理由だと考えることも可能です。さらに、日本の戦死者300万人を対比させれば、中国側の犠牲の大きさが浮き彫りになります。

 

「談話」の起草者の意図を推測したのは、第二次世界大戦における戦死者数や犠牲者数を明示的に使うことで、日本の戦争責任が「自然に」浮き彫りになることを示したかったのですが、その意図がどうであれ、第二次世界大戦をテーマにした「談話」で、第一次世界大戦の戦死者数には言及しながら、第二次世界大戦のそれを省略することは許されないはずです。

 

「談話」で使われた「詭弁」の具体例は続きます。

  

 

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コメント

第2次大戦中の中国の死者数が2000~3000万人ということは知りませんでした。

「元安川」様

コメント有り難う御座いました。第二次世界大戦中の中国の死者数は、手元の資料をそのまま写したのですが、コメントを頂いてwiki等を調べてみると、1000万から2000万という数字が標準的なようです。本文はそれに直しました。

江沢民が1998年に発表した数字は3500万ですが、これを疑問視する声もありますので、多くの資料で使われている1000万から2000万に訂正しました。

2017年1月30日 (月)

1.27ネバダデーと原水禁学校

1.27ネバダデーと原水禁学校

 1月27日、広島県原水禁などの呼びかけで、午後0時15分から30分間平和公園・慰霊碑前で「1.27ネバダデー」の座り込みが、70名の参加で実施されました。

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1951年1月27日、アメリカ・ネバダ核実験場を使用しての初めての核実験が実施されました。その後も繰り返された核実験によって、実験に参加した兵士だけでなく実験場の風下に住み人々にも核被害が広がりました。アメリカ・ユタ州シーダー市では、住民が「シティズンズ・コール」という被害者組織をつくり、被害者への補償を求める運動が広がりました。その「シティズンズ・コール」が、世界に反核団体などに呼びかけで始まったのが、「ネバダ核実験場閉鎖と核実験全面禁止を求める国際連帯行動」です。最初の行動は、1984年1月27日でした。広島県原水禁は、この呼びかけに応え「慰霊碑前の座り込み」を行いました。その後、毎年この日を「ネバダデー・国際共同行動日」とし、広島では座り込み行動を続けています。

 この日は、最後に「・ネバダ核実験場を閉鎖させよう!・例外なき核実験全面禁止、核兵器禁止条約を実現しよう!・世界のヒバクシャと連帯し、ヒバクシャの人権を確立しよう!」など5項目の課題を盛り込んだ「1.27ネバダ・デー ヒロシマからのアピール」を採択し、行動を終えました。このアピールは、アメリカ・トランプ大統領と日本政府安倍総理に送付しました。「私は自分にとってヒロシマを生きることがどういうことなのかも考えさせられました。」初めて座り込みに参加したある女性の感想です。

  

午後6時30分からは、原水禁学校・第4講座が開校されました。第4講座は、「世界の核被害者~核開発がもたらすもの~」をテーマに、森瀧市郎先生の次女で「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表」の森瀧春子さんに講師を務めていただきました。

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森瀧さんの講演は、直接現地に足を運び、目の当たりにした被害の実相を自らが映した写真を交えて報告されました。その一つが、「核開発の入り口―インドのウラン鉱山」で起きている核被害の実態でした。「インドとの関りは、インド・パキスタンが核開発競争を競っていた1997年に初めてインドを訪問して以来、反核キャンペーンを繰り返すとともに、両国の若者たちを広島での平和学習に招くプロジェクトを実施してきました。その中で2000年インドのウラン鉱山の実態を描いたドキュメント映画『ブッダの嘆き』と出会ったことで、インド国内におけるウラン鉱山開発がもたらすすさまじい被害の実態に衝撃を受け、映画の上映会を進めるとともに2001年インド東部ジャドゥゴダ・ウラン鉱山を訪れました。」

 「そこで出会った子どもたちの小頭症、巨頭症、多指症、知的障害などに蝕まれた姿は忘れることができません。」「周辺に住む先住民には、放射能汚染よる深刻な被害をもたらしています。ウラン採掘から出る大量の放射性廃棄物が、深刻な健康被害を多発させています。2003年には、京都大学原子炉研究所の小出裕章氏の協力を得て現地調査を行った」ことを話しながら「悲惨な犠牲を先住民とその地域に強いながら、ジャドゥゴダ鉱山は、インドの核兵器や原発にウランを供給してきた。」とその核被害の実情をつぶさに報告されました。

 二つ目の報告は「イラクにおける劣化ウラン被害」です。

 「1999年、初めて劣化ウラン兵器のもたらす被害に触れた。そして2002年12月に初めてイラクの劣化ウラン弾被害を現地で確認した。さらに2003年6月から7月に再訪し、改めて現地を調査。イラク南部の中心都市バスラの産科・小児科病院を訪ねると、小児がん病棟のベットに横たわる子どもたちの多くは、白血病、悪性リンパ腫、肝臓がんなどを患い、その上先天的な身体的、知的障害を持っていた。医師たちは、『ほとんどは末期であり、助からない』と苦渋の面持ちで説明した。」 

放射性兵器である劣化ウラン弾の深刻な被害の実情が報告されました。森瀧さんは、「イラクでも金沢大学などの協力を得て、科学的な調査も実施した。」と話されました。

 さらに「現地で向き合う福島原発事故」と福島問題にも触れられました。

 森瀧さんは、まとめとして自身が中心となって2015年11月に開催した「核被害者フォーラム」で採択された「広島宣言 世界核被害者の権利憲章要綱草案」の「核時代を終わらせない限り人類はいつでも核被害者=ヒバクシャになりうることを認識して、核と人類は共存できないことを宣言する。」を紹介し、さらに森瀧市郎先生が鋭く指摘された「力の文明=核の時代 ●核開発は、国家や大企業の強き側による使用される弱き者への差別抑圧、人権無視の上になりたつ。●核文明の根底にはー権力による支配抑圧するものと 権力によって差別抑圧、無視されるものとの関係が横たわる。」ことを強調して、講演を終えられました。

 自らが現地に行き、直接体験したことを中心にした今回の森瀧さんの講座は、若い受講生も多かっただけに深い感銘を与えることとなりました。

広島県原水禁は、原水禁学校に先立ち午後5時30分から2017年度の活動方針を決める「第86回理事総会」を開催しました。

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活動方針の多くは、これまでの運動を継続し、さらに強化することを盛り込んでしますが、今年度新たに強化すべき活動として提起したことは「①「核兵器禁止条約」制定に向けて日本政府や米国への働きかけを強化します。②原水禁学校を今年度も開催します。③全国被爆二世団体連絡協議会の裁判闘争を支援します。④『福島原発被災地第2次フィールドワーク』を実施します。」などです。

1月27日、改めて「核と人類は共存できない」「核絶対否定」の原水禁運動の理念を再確認する日となりました。

  

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2017年1月27日 (金)

世界人権年鑑2017 ――ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表のケネス・ロス氏による序文――


世界人権年鑑2017

――ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表のケネス・ロス氏による序文――

 

トランプ大統領と安倍総理、そして欧州やアジアの大衆扇動的指導者たちの共通点を、具体例によって絞り込む積りだったのですが、つまり、「帰納的」に結論を導く積りだったのでが、その一つを、『世界人権年鑑』の序文で、ヒューマン・ライツ・ウォッチの代表であるケネス・ロス氏が、きちんとまとめてくれていますので、お読み頂ければと思います。日本語訳は、以前御紹介した山田達也氏です。

                

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 長いのですが、何度かに分けると、趣旨が伝わり難くなりますので、全部を掲載させて頂きます。

 

トランプ大統領を初めとする大衆扇動家たちのもう一つの共通点は「詭弁」です。これは言葉に依存する部分が大きいので、安倍総理の「詭弁」は、別稿で取り上げたいと思います。

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World Report 2017

Demagogues Threaten Human Rights

Trump, European Populists Foster Bigotry, Discrimination

ワールドレポート2017:扇動政治家が人権を脅かしている

トランプや欧州の大衆主義者が偏見と差別を煽っている

(Washington, DC January 12, 2017) – The rise of populist leaders in the United States and Europe poses a dangerous threat to basic rights protections while encouraging abuse by autocrats around the world, Human Rights Watch said today in launching its World Report 2017. Donald Trump’s election as US president after a campaign fomenting hatred and intolerance, and the rising influence of political parties in Europe that reject universal rights, have put the postwar human rights system at risk.

(ワシントンDC,2017112日)-米国と欧州で台頭した大衆主義指導者が、世界各地の独裁者の人権侵害を助長する一方で、基本的人権の保護を脅かしている、とヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下HRW)は本日「世界人権年鑑2017」で述べた。

敵意と不寛容を煽る運動を展開したドナルド・トランプを米国大統領にした選挙と、欧州で普遍的人権を否定する政党の影響力が増大している現状は、第二次世界大戦後の人権保護システムを危険に晒している。

Meanwhile, strongman leaders in Russia, Turkey, the Philippines, and China have substituted their own authority, rather than accountable government and the rule of law, as a guarantor of prosperity and security. These converging trends, bolstered by propaganda operations that denigrate legal standards and disdain factual analysis, directly challenge the laws and institutions that promote dignity, tolerance, and equality, Human Rights Watch said.

一方でロシア、トルコ、フィリピン、中国の独裁的指導者は自らの権力を、政府による説明責任の全うや法の支配順守にではなく、繁栄と治安の保証に使った。米国と欧州における大衆主義政治家の台頭とロシアや中国に見られる指導者の政治手法は、収束する傾向にあり、それは更に法規範を過小評価し事実に基づく分析を軽視するプロパガンダ活動で強化され、人間の尊厳、寛容性、平等を促進する法律と制度を真っ向から否定している、とHRWは指摘した。

In the 687-page World Report, its 27th edition, Human Rights Watch reviews human rights practices in more than 90 countries. In his introductory essay, Executive Director Kenneth Roth writes that a new generation of authoritarian populists seeks to overturn the concept of human rights protections, treating rights not as an essential check on official power but as an impediment to the majority will.

発行27年目を迎える世界人権年鑑2017で(全687頁)で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは90ヶ国超の人権状況を概説している。その序文でケネス・ロス代表は、新世代の権威主義的な大衆主義者が、人権を公権力への必要不可欠な抑制ではなく、大多数の人々の障害とみなし、人権保護の概念を覆そうとしていると指摘した。

The rise of populism poses a profound threat to human rights,” Roth said. “Trump and various politicians in Europe seek power through appeals to racism, xenophobia, misogyny, and 

nativism

.

. They all claim that the public accepts violations of human rights as supposedly necessary to secure jobs, avoid cultural change, or prevent terrorist attacks. In fact, disregard for human rights offers the likeliest route to tyranny.”

「ポピュリズムの台頭は人権に深刻な脅威をもたらしています」、とロスは指摘した。「トランプや欧州の様々な政治家が、差別主義、外国人嫌悪、女性蔑視、移民排斥主義をアピールして権力を手中にしようとしています。彼らは皆、雇用を守り、文化的な変化を回避し、或いはテロリストによる攻撃を防ぐのに必要だとして、大衆は人権侵害を受入れると主張しています。しかし人権軽視の実態は、独裁政治に通じる可能性が最も高い歩みなのです」

Roth cited Trump’s presidential campaign in the US as a vivid illustration of the politics of intolerance. He said that Trump responded to those discontented with their economic situation and an increasingly multicultural society with rhetoric that rejected basic principles of dignity and equality. His campaign floated proposals that would harm millions of people, including plans to engage in massive deportations of immigrants, to curtail women’s rights and media freedoms, and to use torture. Unless Trump repudiates these proposals, his administration risks committing massive rights violations in the US and shirking a longstanding, bipartisan belief, however imperfectly applied, in a rights-based foreign policy agenda.

ロスはトランプの大統領選挙におけるキャンペーンを、不寛容の政治を浮彫にしたと言及、自らの経済状況やますます多分化する社会に不満を抱いている人々に、トランプは個人の尊厳と平等という基本原理を否定する論理で対応したと指摘した。選挙キャンペーンでは、「移民の大規模な強制送還に取組む」、「女性の権利と報道の自由を削減する」、「拷問を行う」など、数百万の人々に危害を及ぼす提案が打出された。トランプがそれらの提案を撤回しない限り、彼の政権は米国内で大規模な人権侵害を行うと共に、人権尊重型外交政策において、長年培われてきたものの、完全には適用されていない、超党派的信条に従わない危険がある。

The rise of populist leaders in the United States and Europe poses a dangerous threat to basic rights protections while encouraging abuse by autocrats around the world.

米国と欧州における大衆主義指導者の台頭は、世界各地の独裁者の人権侵害を助長する一方で、基本的人権の保護に大きく脅かしている。

In Europe, a similar populism sought to blame economic dislocation on migration. The campaign for Brexit was perhaps the most prominent illustration, Roth said. Instead of

scapegoating

those fleeing persecution, torture, and war, governments should invest to help immigrant communities integrate and fully participate in society, Roth said. Public officials also have a duty to reject the hatred and intolerance of the populists while supporting independent and impartial courts as a bulwark against the targeting of vulnerable minorities, Roth said.

「欧州でも同様な大衆主義が、経済的混乱を移民の責任にしようとした。英国のEU離脱に向けたキャンペーンに、それが最も明確に表れている」、「迫害、拷問、戦争から逃れて来た人々に責任転嫁するのではなく、政府は移民コミュニティによる社会への統合と完全参加を促進するよう投資しなければならない」、「公務員もまた、弱い立場の少数派を狙った行為への防波堤として独立公平な裁判所を支援する一方で、大衆主義者の憎悪と不寛容を拒否しなければならない」、とロスは指摘した。

The populist-fueled passions of the moment tend to obscure the longer

-

term

dangers

to

a society of strongman rule, Roth said. In Russia, Vladimir Putin responded to popular discontent in 2011 with a repressive agenda, including draconian restrictions on free speech and assembly, unprecedented sanctions for online dissent, and laws severely restricting independent groups. China’s leader, Xi Jinping, concerned about the slowdown in economic growth, has embarked on the most intense crackdown on dissent since the Tiananmen era.

大衆主義者に煽られた理性を欠く感情は、独裁的指導者による支配が社会に及ぼしている長年の危険を、曖昧にする傾向にあるともロスは指摘した。ロシアではヴラディミール・プーチン大統領は、2011年に民衆の不満に、言論と集会の自由への厳しい制約、オンライン上の反対意見に対する前例のない制裁措置などを含む、弾圧的指針で応じた。経済停滞を懸念した中国指導者の習近平(ジー・チンピン)は、反対意見に対して天安門事件が起きた時代以降最も激しい弾圧に着手した。

In Syria, President Bashar al-Assad, backed by Russia, Iran, and Hezbollah, has honed a war-crime strategy of targeting civilians in opposition areas, flouting the most fundamental requirements of the laws of war.

Forces of the self-proclaimed Islamic State, also known as ISIS, have also routinely attacked civilians and executed people in custody while encouraging and carrying out attacks on civilian populations around the globe.

シリアではロシア、イラン、ヒズボラの支援を受けたバッシャール・アル・アサド大統領が、戦争法における最も基本的な義務事項をないがしろにし、反政府勢力支配下地域で民間人を標的する戦争犯罪戦略に力を注いだ。アイシスとしても知られる自称イスラム国の部隊もまた、民間人を日常的に攻撃し、抑留中の人々を処刑する一方で、世界各地の民間人へのテロ攻撃を実行した。

More than 5 million Syrians fleeing the conflict have faced daunting obstacles in finding safety. Jordan, Turkey, and Lebanon are hosting millions of Syrian refugees but have largely closed their borders to new arrivals. European Union leaders have failed to share responsibility fairly for asylum seekers or to create safe routes for refugees. Despite years of US leadership on refugee resettlement, the US resettled only 12,000 Syrian refugees last year, and Trump has threatened to end the program.

武力紛争から逃れた500万人を超えるシリア人は、安全な避難先の確保に克服困難な障害に直面している。ヨルダン、トルコ、レバノンは、数百万のシリア人難民を滞在させているが、新たに到着する人々には国境を閉ざしている。欧州連合の指導者は、庇護希望者への応分な責任を負わず、また難民向けの安全なルートも確保しなかった。米国な難民の再定住に関して指導的役割を長年果たしてきたが、昨年はシリア難民を12,000人 しか再定住させておらず、トランプはその事業を打切ると脅した。

In Africa, a disconcerting number of leaders have removed or extended term limits – the “constitutional coup” – to stay in office, while others have used violent crackdowns to suppress protests over unfair elections or corrupt or predatory rule. Several African leaders, feeling vulnerable to prosecution, harshly criticized the International Criminal Court and three countries announced their withdrawal.

アフリカでは憂慮すべき数の指導者が、任期制限を撤廃あるいは延長する、「合法的クーデター」で権力の座に留まり続ける一方で、不公正な選挙や汚職あるいは略奪的支配への抗議運動を抑えるために暴力的な弾圧を行った。訴追される懸念に怯えたアフリカ指導者の一部は、国際刑事裁判所を厳しく批判し、昨年はアフリカの3ヶ国が同裁判所からの脱退を表明した。

This global attack needs a vigorous reaffirmation and defense of the human rights values underpinning the system, Roth said. Yet too many public officials seem to have their heads in the sand, hoping the winds of populism will blow over. Others emulate the populists, hoping to pre-empt their message but instead reinforcing it, Roth said. Governments ostensibly committed to human rights should defend these principles far more vigorously and consistently, Roth said, including democracies in Latin America, Africa, and Asia that support broad initiatives at the United Nations but rarely take the lead in responding to particular countries in crisis.

「このような人権への攻撃は、これまでの制度の基盤となっている人権への価値観の再確認と保護を必要としている」、「しかし大衆主義の嵐が過ぎ去るのを願いつつ、極めて多くの公務員が現実から目をそらしていると思われるが、一部の者は大衆主義者を模倣し、彼らのメッセージに先手を打って阻止しようするのではなく補強している」、「国連における広範なイニシャティブは支援するけれど、危機にある特定国家への対応においては殆ど主導的役割を負わない中南米、アフリカ、アジアなどの民主国家で、表向き人権保護に専心努力していた各国政府は、以前にも増して積極的かつと毅然として人権保護原則を守らなければならない」、とロスは指摘した。

Ultimately, responsibility lies with the public, Roth said. Demagogues build popular support by proffering false explanations and cheap solutions to genuine ills. The antidote is for voters to demand a politics based on truth and the values on which rights-respecting democracy is built. A strong popular reaction, using every means available – civic groups, political parties, traditional and social media – is the best defense of the values that so many still cherish.

ロスの指摘によれば、究極のところの責任は大衆にある。扇動政治家は、誤った説明と本当は害悪である安っぽい解決策で、大衆からの支持を得ている。有権者にとっての対抗手段は、人権尊重型民主主義の基盤となる価値観と真実に基づく政治を求めることだ。市民団体、政党、伝統的メディアやソーシャルメディアなど、利用可能な全ての手段を使った、大衆による強力な反対行動が、多くの人々が今尚慈しむ価値観の防衛には最高の策となる。

We forget at our peril the demagogues of the past: the fascists, communists, and their ilk who claimed privileged insight into the majority’s interest but ended up crushing the individual,” Roth said. “When populists treat rights as obstacles to their vision of the majority will, it is only a matter of time before they turn on those who disagree with their agenda.”

「過去の扇動政治家、多数派の利益という特権階級の見解を主張し、個人を押し潰す結果に繫がった、ファシストや共産主義者とその仲間によってもたらされた危機を、私たちは忘れています。大衆主義者が人権を、大多数の人々の障害と見なすなら、自らの政策に同意しない者に襲い掛かるのは時間の問題です」、とロスは指摘した。

 

 

 

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2017年1月26日 (木)

トランプ大統領への手紙を米紙が取り上げてくれました --ワシントン・ポストとボストン・グローブです――

トランプ大統領への手紙を米紙が取り上げてくれました

--ワシントン・ポストとボストン・グローブです――

 

19()20()の二日にわたって、トランプ大統領への手紙を披露しました。また、毎日新聞とその英語版であるThe Mainichi が取り上げてくれたことも報告しました。23日と24日には、アメリカの新聞も取り上げてくれました。

                          

20170110_17_52_08

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既に報告したように毎日新聞18日付の東京版夕刊で大きく取り上げてくれました。ウェッブ版もありますので、再度、URLをリストしておきます。

18日夕刊のウェッブ版です。

また、広島版では、19日の朝刊に掲載してくれました。

英語で発信しているThe Mainichi(電子版)もあります。

The Mainichiの記事は次の通りですEx-Hiroshima Mayor Akiba hopes for assurance of no nuke use in a  letter toTrump

 

手紙全文もアップされています。

Full text of ex-Hiroshima Mayor Akiba's letter to Trump

 

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その後、The Mainichi の担当者の方が、アメリカの新聞をウォッチし続けてくれていました。その報告を頂いたのですが、ワシントン・ポストトポストン・グローブという東海岸の有力二紙が取り上げてくれたそうです。英語ですが以下のURLからお読み頂けますので、関心のある方は覗いて見て下さい。

 

残念なことに、北東アジア非核地帯条約については言及がありませんが、日系アメリカ市民の被爆者がいることもアメリカ社会にはあまり知られていませんので、これだけでも大変有難いことだと思います。願わくは、トランプ大統領の目に触れて、被爆者との対話が実現すると良いのですが。

ワシントン・ポスト紙です

As Trump takes control of nukes, Hiroshima’s ex-mayor urges him to meet atomic-bomb survivors

 

そしてボストン・グローブ紙です。

Former Hiroshima mayor urges Trump to meet bomb survivors

 

 

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コメント

秋葉前広島市長からトランプ米大統領への提案を米有力二紙が取り上げてくれたことは大変うれしいことです。
大統領の目に触れて、いい方向に向かうことを期待します。

「遠藤菊美」様

コメント有り難う御座いました。トランプ大統領に何とか届くよう、第二弾、第三弾も検討中です。

より以前の記事一覧

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