オバマ関連

2017年3月12日 (日)

高校同窓会での講演 ――毎月一度、濃い内容の話を聴く機会があるのは羨ましい限りです――  


高校同窓会での講演

――毎月一度、濃い内容の話を聴く機会があるのは羨ましい限りです―― 

 

十日は、高校同窓会の関東地方に住む人たちのグループが月に一度開催している交流会での講演でした。数年前にも話をさせて頂きましたが、講演後のコメントやその後の個人的な交流も刺激に満ちていてとても勉強になりました。

 

今回の出席者は50人ほどで、タイトルの「日米の憲法を軸に『核なき世界』を展望する」、特にオバマ、トランプ両氏の比較も含めたことに関心を持って頂けたのではないかと思います。同窓会と言っても、一学年だけあるいは一クラス毎の同窓会ではなく、全学年共通の組織ですので、10日の出席者の最高齢は92歳、そして一番若い世代の代表は34歳のカップルでした。

 

オバマ大統領の広島訪問の意味を手短にまとめ、「原爆投下が正しかった」というアメリカの世論が大きく変った理由の一つとして、大統領の持つ「絶対性」を指摘しました。

そしてその「絶対性」は何に由来しているのかを考えると、一つには大統領が直接有権者の投票で選ばれること、強大な権力を持っていることに加えて、就任の際に国民に向かって、憲法を遵守する旨の「宣誓」を行うことが挙げられるのではないかという問題提起を行いました。その点については既に触れていますので、再度お読み頂ければ幸いです。ここで鍵になっているのは、「宣誓」すること、そして「宣誓」の言葉も憲法で定められていることです。

 

日本の場合、憲法99条は憲法遵守を義務として課しています。念のため99条の条文を引用しておきましょう。

 

99条   天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 

さらに我が国の総理大臣にはそれほど大きな権威がないように見えますが、それは総理大臣が就任時に国民に対しての「宣誓」をしないことにも関係があるのではないかと考えてきました。それは天皇が即位の際に、国民に対して憲法遵守をします、という「宣誓」をしていることと対照的です。「即位礼正殿の儀おことば」(19901122)を引用します。下線の部分に注目して下さい。

 

さきに、日本国憲法及び皇室典範の定めるところによって皇位を継承しましたが、ここに即位礼正殿の儀を行い、即位を内外に宣明いたします。

このときに当り、改めて、御父昭和天皇の六十余年にわたる御在位の間、いかなるときも、国民と苦楽を共にされた御心を心として、常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓い、国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。

 

では、なぜ総理大臣は国民に対して「宣誓」をしないのでしょうか。その理由を次回考えたいと思います。

 

もう一つ報告しておきたいのは、講演の後、同じ学年だった10人ほどの同級生と一緒に、講演についてまた政治や社会の問題について話をする機会があったことです。大学生になる息子も参加させて貰いましたが、とても良い勉強の機会になったように思います。

 

               

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同級生たちです

 

 

 

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コメント

秋葉さん
昨日は講演や会食でお忙しい中、千葉にも来てくださって嬉しいです。

オバマ大統領の権威が憲法の遵守を宣誓することによっているということは納得できました。

ただ、日本の総理大臣が憲法を守る宣誓をしないということを、同じまな板にのせる形で比較することはどうなのでしょうか?少し違和感を持ちました。

「根井洋子」様

コメント有り難う御座いました。日本の総理大臣が国民に向かって宣誓をしないことについて今日、続きの説明をしましたが、気持としてはやはりアメリカの大統領のように、国民に向って「憲法を守ります」という宣誓をすべき立場だと言いたいのです。

実は、「宣誓」その物をどう捉えるのかについても、かなり考え方が変りました。その辺りも説明して行きたいと思います。

2017年3月 6日 (月)

ひろしま・ふくしまを結ぶ ワンコインシンポ2017 第5回シンポジウム ――「託されたもの--大地と人と。」―  


ひろしま・ふくしまを結ぶ ワンコインシンポ2017 第5回シンポジウム

――「託されたもの--大地と人と。」―  

 

予定通り1330分に始まったシンポジウムですが、立錐の余地のないくらい多くの皆さんに御参加頂きました。心から感謝しています。 

                         

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 主催者の挨拶では、このシンポジウムも6年目を迎えて、昨年の海に焦点を合わせたシンポとは対照的に、今年は「陸」「山」をバックに大地と人を考えるイベントとして企画したこと、そのために、ゲストとして福島県須賀川市で専業農家を営む樽川和也さんをお招きした経緯の説明がありました。

 

主催者の代表である西村恵美子さんと毎回の名司会振りで多くの人を魅了している中沢晶子さんお二人が、昨年11月に福島まで樽川さんに会いに行き、樽川さんと彼の母上に歓待されたこと、その経験を通して樽川さんに広島までお出で頂くことの大切さを再確認できたとの報告でした。

 

続いて樽川さんの基調報告でしたが、原発から65キロ離れた須賀川市で東日本大震災の被害がどのようなものだったかを事実に即して生々しく描いてくれました。正に胸塞がれる思いでした。そして、お父上の言葉を交えながら、樽川さんの農業者としての原点がお父上だということが良く分るエピソードをいくつも紹介してくれました。

 

例えば、お父上は30年前から有機農業を実践してきたこと、それも「子どもに食べさせるものだから」という理由でその選択をしたこと、1988年に広島での原水禁世界大会に参加した後、原発の危険について何度も語ってくれたこと、東日本大震災後の福島第一原発事故のニュースに接して、自分の言ってきたことが正しかったと感想を漏らし「馬鹿だなこの国は」という言葉が続いたこと、それから言葉が段々少なくなって塞ぎ込むようになり「福島の野菜もこれでお終い」と言っていたことも話してくれました。

 

そして323日の夕方、県から「結球野菜の出荷停止」決定のファクスが届き、夕食になって初めてお父上にそれを見せたところ、じっとテーブルを見詰め続けた姿が瞼に残っていること、夕食後、いつもはお母上が洗っていた食器を何故かお父上が洗ったことにチョッピリ疑問を持った記憶も共有してくれました。

 

24日の朝、お父上の姿が見えないことに母と子は気付き、野菜を見回りに行ったのだろうと思っていたところ、7時になって廃材を一輪車に乗せて裏のキャベツ畑まで運ぼうとしてした樽川さんは、「畑に父が立っているような気がした」ことに気付きました。でも少し近付くと、太さ3メートルの欅の木の下、「父の足は空中にあった」ことに気付き大きなショックを受けました。

 

地震からからの被害だけなら立ち直れた、でも原発の事故が致命的だった、というのが父上の気持だったろうし自分でもそう思うと樽川さんは総括しています。また後で、お父上の知人たちからは、「子どもたちに何も残せなかった」と言っていたことも聞いたそうです。

 

前を通ると父を思い出さざるを得ない欅は伐採して貰い、出荷停止になってそのまま畑に残していた寒キャベツやブロッコリーの株、計8,000株は、凍って割れる音が聞こえるようになり、父の努力と作物の生命を悼んで線香を上げてから、トラクターで均したとのことでした。

 

二日続けて、親御さんと悲劇的な別れを告げた40代の若者が「今いるところを大切に」頑張っている姿に接して、物理的な意味での「今いるところ」と精神的な意味での「今いるところ」を重ねることで、未来の展望が新たな次元から見えること、また被爆者のメッセージの大切な側面として「今いるところを大切にする」姿勢で彼ら/彼女らが生きてきたことなども含めて議論を深めたかったのですが、オバマ大統領の功罪について樽川さん抜きのかなりヒステリックなやり取りに時間を費やすことになってしまったのはとても残念でした。

 

パネスリトとしての責任は果たせませんてほしたが、私個人としては、前日の打ち合わせとシンポ後の打ち上げで、樽川さんの話もきちんと聞けましたし、こうした深みのあるやり取りもできました。とても勉強になりましたし、マイケル・ムーア氏の「10項目アクション・プラン」PRもできましたので、これからはさらに多くの「すぐやる」チーム作りのため頑張りたいと思います。

 

 

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コメント

樽川さんのお話、心に突きささりました。西日本である広島はまるで何もなかったように日常が過ぎていきますが、出来ることはたくさんあると思いますので、日々考えて行動していかなくてはと思いました。また、秋葉さん、ビナードさんのそれぞれの視点からの発言も自分にはない視線なので大変参考になりました。ありがとうございました。

コメント有り難う御座いました。

涙に加えて、考え行動すること、私も中澤さんの言葉を噛み締めています。

今回スタッフとして参加させていただいた山根和則です。
昨年の横川シネマでの「大地を受け継ぐ」上映後に、井上淳一監督と広島に母子避難されている方や平木薫さんも交えてお話しをする機会があったので、今回樽川さんとお逢いできたのはとても嬉しいことでした。
樽川さんとは直接お話しも出来、これからの私自身の福島への取り組みにも、おおきな力と指針を与えていただけました。
つきましては、私のfacebookに、このブログの記事(前後編)をリンクさせていただきました。後からで申し訳ありませんがご了承いただけますでしょうか。もし不都合なようでしたらメールアドレスを入れておりますので連絡頂けましたら対処いたします。
コメント欄をお借りして恐縮です。よろしくお願いします。

「山根和則」様

コメント有り難う御座いました。また、リンクを張って下さったこと、感謝しています。

樽川さんが、広島に来られたことでさらなるエネルギーを得て、お父上の思いをさらに大きな形で実現してくれることになるよう祈っています。そのために、私たちも新たな連携を始められればと思います。

2017年1月23日 (月)

トランプ大統領の初仕事 --初日から喧嘩を仕掛ける!?――


トランプ大統領の初仕事

--初日から喧嘩を仕掛ける!?――

 

ほとんどの報道機関が報じていますが、アメリカ東海岸時間の21日、トランプ大統領はCIA本部を訪れたようですが、そこでマスコミ報道に文句を付けたとのことです。就任式には150万人集まったと主張、25万人というマスコミからの数字を強く否定したようです。

 

スパイサー報道官も記者会見で、マスコミに対する宣戦布告。「説明責任」はマスコミにもあると主張した模様です。

 

何故このように攻撃的なのかという疑問が生じて当然です。それに対して、南カリフォルニア大学の文化人類学教授であるクリストファー・ボーム氏が分析をしています(朝日新聞デジタル)

 

氏によると、これは、チンパンジーのボスが、仲間を掌握するときの行動パターンだそうです。自分に対する攻撃には即座に反応して威嚇・攻撃をしてボスの座を守るという作戦だそうです。

 

「攻撃をする」という行為が大切で、その際に使う言葉が事実ではなくても良いということなのかもしれませんが、空撮写真の比較で、オバマ大統領の就任式とは比べ物にならないくらい少ない人しか集まっていない事実を否定する神経は全く分りません。折角CIAと仲直りする姿勢を示しているのですから、CIAの把握している数字を公表させれば、その場でけりが付く話です。自信があるなら、大統領としてCIAに命令したらどうなのでしょうか。

              

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 一方、トランプ大統領批判のデモは、ワシントンでも50万、全世界では数百万と報道されています。

 

一国のリーダー

それより小さいグルーでもリーダーの大切な役割は、そのグループの構成員の持つ最善の資質を引き出すことだと、何回も繰り返してきました。リンカーンの言葉では「The Better Angels of Our Nature」ですトランプ氏が選挙で勝った後もシリーズでお伝えしてきましたが


オバマ効果

トランプ効果」と題してのページでは特にその点を強調しましたせめて、就任後の一日くらいは「醜い本音」を引き出すのではなく、「The Better Angels of Our Nature」を引き出す真似くらいはしてもらいたかつたのですが甘すぎる考え方だったのでしょうか



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コメント

ボス猿レベルの知能だということでしょうね。
それが世界のボス猿になろうとしているのですから、心配ですね。

米国大統領の就任演説より安倍内閣総理大臣施政方針演説が気になりましたが驚いたのは唐突に出てきた憲法改正と結びついた教育無償化です。この教育無償化は維新が主張してきたことでありいよいよ憲法改正に向けて突き進むことへの表明にトランプ大統領以上に恐怖を覚えました。

トランプさんが高過ぎると言って一気に価格の下がった侵略用ジェット戦闘機なのに侵略しないはずの日本がその高過ぎる価格以上で買っているF35が配備され「日米同盟の強化」と報道されてますが安倍政権は事実上のF3となる国産ジェット戦闘機「心神」を開発しており日本軍の構築が進んでいます。

「宇品灯台」様

コメント有り難う御座いました。アメリカだけでなく日本も含めて世界各国で、これに似た行動パターンの人たちの人気が高くなりつつあるのは、問題だと思います。

「カーズ」様

コメント有り難う御座いました。鋭い切り口からの分析とコメントから学ばせて貰っています。

蓮舫民進党代表が指摘していましたが、文科省の天下りには何も触れず、答弁は「言葉より実行が大事なので言わなかった」。

アメリカの大統領が誰でも、その陰に隠れ、またイメージを上手く使って、国民と情報は共有せずに、自分の思い通りの勝手を「実行」する、ということなのでしょうか。

金持ちだから金持ちの側にしか立てないというわけでもないように思います。彼が「ワシントン」を取り上げて攻撃したのは2000年以降全米の上位5%の高所得かつ高学歴の人達が首都ワシントンD.C.に集中しており従来のニューヨーク、サンフランシスコ、ボストンを大きく引き離し平均年収で10万ドルを超える特権階級の巣窟と化しているからです。そして政権からシンクタンクとロビイストを徹底的に排除し「ワシントンの税金に群がる利権」を破壊しようとしているのは確かでしょう。そのお金が他の地域のその他の層に行くかどうかが問題ではありますが。

「プアイエロー」様

コメント有り難う御座いました。トランプ政権の閣僚を見ただけでも、これがアメリカの格差を解消しようとする人たちの代表とは見えないのが、大きな問題です。

例えば、コーク兄弟・一家に代表されるスーパー・リッチの人たちが何十年か掛かって、膨大な資金を投じて保守的なシンクタンクを育て、しかも自分たちはあまり表に出ずにそれを実現してきたこと、大学やマスコミまで影響を受けていることも視野に入れて考えると、ロビイスト、つまりヒモを使うのではなく、ヒモそのものそしてヒモを使っていた人たちがが閣僚になった印象を受けるのですが。

2017年1月22日 (日)

トランプ大統領就任式 --全部を視るのは初めてでした――


トランプ大統領就任式

--全部を視るのは初めてでした――

 

いよいよトランプ氏が大統領に就任しました。これまでは、忙しかったせいもあって就任式をライブで見ることはありませんでしたが、今回はトランプ大統領がどんな演説をするのかにも関心がありましたので、全部を視ることになりました。一番関心のあったのは演説ですが、もう一つ「宣誓」が滞りなく行われるかどうかでした。でもいろいろなことが分ってとても勉強になりました。

              

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就任式招待状 表紙

 

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就任式招待状の写真

 

寒がり屋として気になったのは、1月のワシントンは寒くて大変だろうなということでした。それは、1969年の1115日に開かれた50万人規模のベトナム戦争反対集会の時の記憶が鮮明だからです。その日はとにかく寒かったのです。デモの途中で、沿道の建物の中に少しでも入って暖を取らないと、とても歩き続けられませんでした。でも、会場の人々の服装から寒さはそれほど厳しくはなかったように見えました。

 

宣誓も、ハッブニングがなく進みました。でも初めて気付いたのは、副大統領の宣誓の方が長かったことです。憲法で規定されていることなのですが、もう一度副大統領の宣誓文を読んで何か理由があるのかを考えてみたいと思います。

 

アメリカ大統領の就任演説は歴史に残るものが多いのですが、それは、アメリカだけではなく世界・人類の歴史を踏まえて、未来への指針を示してくれる内容だったからだと思います。特に、若い大統領というイメージの強かった、ジョン・F・ケネディー大統領の演説はラジオで聞きながら大感激しました。

 

「国が貴方に何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国に対して何ができるのか問え」という一節は、当時の若者の心をつかみました。

 

その後、日本政府が被爆者に対して言い放った「受忍論」の現実を知ることになりました。それは、単純化すれば、「国は戦争をする、でもその犠牲は国民が甘んじて受け入れろ、そして文句は言うな」です。それがどの国家でも採用している価値観であることも合わせて考えると、「国への奉仕」とは「戦争で死ぬこと」「戦争によって蒙った犠牲には文句を言わないこと」と読めますので、ケネディー大統領の言葉を歓迎した私たちの幼さにも、今では思い至ります。

 

しかし、トランプ演説はこの反対のことを言っています。「国は国民に奉仕するために存在している」。そして、最後の部分でもそれを繰り返しています。「皆さんは再び無視されることは決してありません。皆さんの声、希望、夢が、アメリカの歩む道を決めるのです。そして、皆さんの勇気、善意、愛が、その道を永遠に照らすのです。」

 

これは正論なのですが、彼の二項対立は、一方で虐げられ職を奪われ貧しくも果敢に生きようとする「国民」対、口ばかりで何もしない、でも利益だけはしっかりと受け取って富んでいる腐った政治家たちです。

 

でも、もう一つ彼の認識で決定的に欠けていることがあります。アメリカ社会の貧富の差です。それも政治家が作り出したのだから、政治家の責任だとも言えるのですが、「小さい政府」つまり政府は口を出すな、という方針を突き付けて金の力で自分たち、それは富んだ個人や企業なのですが、超富裕層を一層富ませることに腐心してきた、たったの1パーセントのスーパーリッチな人々と、その陰に隠れてしまった90パーセント以上の国民との格差こそ問題だとも考えられます。


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当然、トランプ大統領は、赤で示されたトップの1パーセントに属するのですが、就任演説ではそのことへの言及は全くありませんでした。

 

もう一つ目立ったのは、選挙中からのテーマである「アメリカ・ファースト」です。単純化すると、アメリカはアメリカだけを考える、他の国も自分の国のことだけを考えれば良い、と言い換えられますが、世界がようやく寛容の精神を元に平和な状態を作れるまでに進化してきたことは全く無視しての言葉です。

 

子どもでも幼稚園や小学校で学ぶ最初のことの一つが、この世の中には自分だけではなく他の人たちがいる、その人たちのことも考えることで「社会」が成立している、ということです。「自己中」からの解放が大人への道なのですが---。

 

でも、この就任式では共和党も民主党も、上院議員の代表として簡潔ながらきちんとしたスピーチのできる人を選びました。共和党は就任式準備委員会委員長、ロイ・ブラント上院議員でしたし、民主党はチャールズ・シューマー上院議員です。二人とも、アメリカの歴史だけではなく、民主主義と世界平和の基礎を子どもにも分るくらい平易にそして格調高く語ってくれました。その結果、就任式はこの二人が先生になったトランプ学校の始まりのような形になりました。

 

その他に気付いたことは、新大統領のスピーチ中にオバマ、ブッシュ両元大統領が苦笑いしているような映像が流れたことですし、大統領就任の宣誓直後から雨が降り出したことです。

 

それでも諦めずに、ヒロシマの心を伝え続け、アメリカの心につながるよう努力する価値のあることを再認識できた一時になりました。

 

 

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コメント

アメリカファーストは、何処の国のトップも同じじゃないでしょうか?
口に出すか出さないかだけです。
自国の国民の多くが職がなく貧困で喘いでいるのは、それには何もせずにカッコよさだけで他国の事を語るのは、戦争で儲けるリッチな人の為ではないでしょうか。
物作り産業は多くの雇用を生み出しますが、ITは生活を豊かにはしますが、一部の人達だけが儲けることができても、大多数の収入は増えません。
トランプ大統領は、スーパーリッチだから、今までの大統領のように身勝手なスーパーリッチな太いヒモもが付いていないのは、良いことではないでしょうか。
密入国してる犯罪者や違法滞在している人達が、国民の安全安心に悪影響なことは間違い無いと思います。
トランプ大統領の事を日本でも批判してますが、彼のやろうとしている事は、日本の現状だと思います。

トランプ大統領の就任演説を日本に当てはめると、ワシントン=東京、エスタブリッシュメント=マスコミ&大企業&高級官僚=年収1500万円以上の人たちということで、東京から地方に富を分配し、孫正義のような特別な創業者は別として学歴や生まれだけで高収入を得ている人たちの都合ばかりではなく、年収300万円以下で暮らしている多くの国民に富=仕事を与え、千億円単位のばら撒き外交をやめて国内政策に振り向けるということではないでしょうか。

一方で怖いのは親露・嫌中が明確に出ており経済だけでなく軍事的にも危うい発言もあり安倍政権が米国からの圧力を利用して軍備を増強すし「軍事的自立」に向かうことです。

「やんじ」様

コメント有り難う御座いました。オバマ大統領まで含めて、これまでのすべての大統領がスーパーリッチの代弁者だったと言うのは少し違うと思います。例えばオバマケアは、反対する人たちとの妥協の結果ですが、保険業界の意向を考えるだけなら、旧態依然とした制度で良かったわけですから。

それとトランプ大統領の場合、ヒモが付いていないのではなくて、ヒモそのものが大統領になってしまったと言った方がより正確なのではないでしょうか。スーパーリッチな人たちの既得権を取り上げるようなことはしないと思います。

「カーズ」様

コメント有り難う御座いました。

御指摘のような見方もできると思います。

実体としてもう一つ記憶しておくべきことは、共和党やビジネス界の主張してきた「小さな政府」とは裏腹に、大企業の多くは、連邦政府との契約で膨大な利益を上げてきているという事実です。トランプ氏のネットワークの中にはそのような利害関係者がゴロゴロしていますし、その人たちの既得権にまで手を伸ばさなければエスタブリュッシュメント改革は難しいでしょうから、前途は多難だと思います。

それ以前の問題として、レトリックとしての発言と本気で実現したいと思っている政策との関係も重要だと思います。

2017年1月 4日 (水)

オバマ大統領への手紙 最後まで諦めずに


オバマ大統領への手紙

最後まで諦めずに

 

昨年の一大イベントだったオバマ大統領の広島訪問後ずっと考えていたのですが、どのようなアプローチが良いのか、あるいは無駄な努力になるのか等、考えあぐねてなかなか行動できなかったのですが、秋になって、とにかく諦めずにできることは全てして見ようと決心して、オバマ大統領宛の公開状を送ることにしました。

 

オバマ大統領への「公開状」は、郵送とe-mailでホワイト・ハウスに、同様に東京のアメリカ大使館にも、大統領に転送して欲しいと要請、さらにニュー・ヨーク・タイムズ紙への投稿という形で採用して貰えればと思いe-mailで原稿を送りました。ニュー・ヨーク・タイムズ紙は、他に投稿したり発表したりしたものは採用しないとのことでしたので、ブログでは公開しなかったのですが、2017年になりもう採用されることはあり得ないと思ってこのブログにアップします。でも、どこかで誰かの目に触れた上で、そこから道が開けてオバマ大統領個人に読んで貰えればと、最後まで諦めずにプッシュし続けています。

            

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オバマ大統領への手紙

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拝啓  オバマ大統領殿

 

   貴職が在職中に広島を訪問して下さったことに、前広島市長として感謝申し上げます。被爆者そして広島市民だけではなく、全国民挙げて貴職の訪問を歓迎したことは、共同通信の調査ではっきり示されています。98パーセントの人が貴職の訪問を歓迎しています。

個人としても、貴職の広島スピーチに心から感動し感謝しています。それは2009年のプラハでの歴史的なスピーチをさらに敷衍し包括的にしたものでした。プラハスピーチに応えるために、200986日、平和宣言の中で、貴職の広島訪問は謝罪なしでも大歓迎であることを現職の市長としてお伝えしました。またルース大使を通じて秋にも同様のメッセージを発信し、2010年にはホワイト・ハウスで直接、広島への御招待の意を表明させて頂きました。

また、アメリカ国民の原爆投下についての考え方が、貴職のスピーチならびに広間訪問によって大きく変化したことも重要です。1945年にギャロップ社の行った「原爆投下は正しかった」かどうかという問に対して、正しいと答えた人は85パーセントだったのに対して、YouGov社が2016年に行った世論調査では、それが45パーセントにまでなりました。貴職のお陰で、アメリカにおいてこれほど劇的な変化が起きたことに感謝したいと思います。近い将来、このことが世界情勢に大きな変化をもたらすであろうことは確実です。

さて私は数学を勉強しましたので、貴職の広島スピーチの中で集合論的視点から気になったことを指摘させて頂きたいと思います。スピーチの中で貴職は広島を訪れる理由を説得力ある形で説明されています。「私たちが広島に来るのは亡くなられた方々の慰霊をするためです。その中には10万人以上の日本人の男女そして子ども、多くの韓国・朝鮮人、そして12人のアメリカ人捕虜も含まれます」

ここで貴職が例示されている方々に対しての優しい思いは世界中の皆さんに共有され感謝されていますし、私もその一人です。しかし、このリストから漏れているアメリカ市民のいることを申し上げたいのです。原爆投下時の広島にはアメリカ国籍を持つ日系のアメリカ人がかなりの数在住しており、彼らも被爆したのです。

米国に帰国してから、彼らは米国政府から医療の面での支援が欲しいと働きかけを行いましたが、この願いは実現されておりません。現在では、彼らは日本の「被爆者援護法」によって医療的な援助の一部をカバーされていますが、今もなお、アメリカ政府が彼らの存をが認めることになるよう願っています。

この手紙を書いているのは、貴職のスピーチや広島訪問の意図を批判するためではありません。そうではなく、私の指摘が、最終的には「隠された幸せ」になることを祈っています。貴職がアメリカ市民である被爆者に声を掛け、彼らの体験を聞くことによって一石二鳥の効果が期待できるからです。一つには、広島では時間的制約のために聞くことのできなかった被爆者の体験を貴職がゆっくり詳細にわたって聞けること、そしてもう一つは、彼らの存在を「公式」に認めることができるからです。

 

敬具

 

前広島市長

秋葉忠利

 

 

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コメント

秋葉先生、

本日は兵庫教育大学でのご講義ありがとうございました。最後に「報復ではなく和解を」の先生のご著書を持って北朝鮮について質問させていただきました一般の者です。

核兵器の廃絶は理想論としては理解できるが、現実性がないものとずっと思いこんでいた私にとって、ご著書の内容と、1986年のレイキャビクの米ソ首脳会談でレーガン氏とゴルバチョフ氏との間では署名寸前までいっていたこと、それ以降、核弾頭が毎年減っていることを知り、実現性があるのだということを知りました。

また、本ブログで知りましたが、さっそくオバマ大統領にも公開状を発表するなど、地道に確実に活動をされることを知り、本当に頭が下がる思いです。秋葉先生にとって、報復の代わりに和解、そして核廃絶とその先の世界平和実現がライフワークになっておられるのではと感じています。

核廃絶に関して、小生でもお手伝いとしての何か行動できればと思います。もし、リコメンドいただけることがあれば教えてください。

取り急ぎ、お礼とご報告まで。

(図書館の本しか持っていなかったので、あれからすぐに、ご署名いただければと思い、神戸駅地下の書店に買いに行きましたが残念ながら在庫がございませんでした)

松島様

コメント有り難う御座います。また兵庫教育大学での講演会に御出席下さり有難う御座いました。

理想を実現するための心の持ち方として、いろいろな人が勧めているのは、理想が実現した状態やその時の自分自身の姿を頭の中に映像として具体的に思い描いて、それを現実にするために努力する、ということですので、大きな目標をいくつかの小さい、より具体的なものに分けて、それが実現したときの映像を思い浮かべるようにしています。効果の挙がる時もありました。

行動の提案は、このブログでもさせて頂くことがありますし、その他、何か想い付くことがあれば、お願することになると思います。その際には、宜しくお願いします。

2016年12月10日 (土)

12.8不戦の誓いヒロシマ集会


12.8不戦の誓いヒロシマ集会

194112月8日(ハワイ時間12月7日)未明、日米開戦のきっかけとなった真珠湾攻撃が行われた。その日の朝、ラジオから繰り返された「大本営陸海軍部発表」「帝国陸海軍は南太平洋上において米英両国と戦闘状態に入れり」は人々の心に勝利の美酒を味合わせたが、国民の多くはその一方で大変な波が押し寄せてくる不安を感じていた。

 

その日から75年目を迎えた昨日、沖縄から高里鈴代さんを迎えて12.8不戦の誓いヒロシマ集会が開催された。高里さんは那覇市議会議員を長年勤めた後、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」・「オール沖縄会議」の共同代表を務めている。米兵による女性強姦事件の救援活動、米軍基地撤廃運動、そして普天間基地の辺野古への移転阻止、高江に建設が強行されようとしているオスプレイパッド阻止闘争の先頭に立って闘っている女性である。

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集会は主催者を代表して広島県原水禁共同代表の秋葉さんの挨拶から始まった。秋葉さんは、「安倍首相が真珠湾を訪問する」という発表があったことを取り上げ、「安倍首相の訪問は決して両国民の和解につながるものではない。オバマ大統領来広で安倍首相が目論んだものは日米安保強化であった。しかしこの目論見は成功したとは言えなかった。真珠湾訪問は平和を求めて心からの謝罪や和解ではなく戦争への道に一歩進む安倍首相の狙いがある」と断じた。また、トランプの大統領当選で揺らぐヨーロッパ・アメリカでマイノリティへの差別・拝外の動きに抗して「ピン」をつける運動が拡がっていることを紹介してくれた。私たちが子どもの頃、安全ピンと呼んでいたものである。このピンを付けることによって私はマイノリティへの差別・拝外主義に反対するという意思表示を行い、「ああ、このバスには私の味方がいる」と弱者に安心してもらう効果があるという。日本でもヘイトスピーチが横行している。「ピン」運動を拡げていきたいなと思って今日の外出にはさりげなく付けていった。

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高里さんは辺野古(海)と高江(森)で現在、何が起こっているのかわかり易く話してくださった。高江の森では、巨樹が何の許可も取らず切り倒され無法に自然が破壊されていること、ジュゴンのふるさと辺野古の海が埋め立て工事で荒らされていること。オスプレイパッド建設への反対の動きが強まるにつれ全国から機動隊を動員し、住民への弾圧が強化され、リーダーを無法に逮捕し未だに拘留を続けているという。その中で発生したのが大阪の機動隊員による「土人」発言である。この発言について鶴保庸介沖縄担当大臣は「差別発言とは断定できない」「言い換えもしない」と開き直り、以前であれば大臣の更迭が行われる事態だがそのまま居座っているという状況に危機感を抱いたのは私一人ではないだろう。 こうした状況の中でオール沖縄の結束は一段と強化されていることを聞いて

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私を含む本土の無責任さを痛感した。「あなたたちは何をしているのですか」と怒りの矛先が私たちに向いて当然だと思うのに連帯を呼びかける高里さんに甘えてはならないと自らを戒めた。

 

   1995年、小学生への暴行事件を受けた県民大会に8万5千人が集まった。そのうねりを受けてSACOが発足したが、「基地軽減どころか日米軍事同盟の強化が現実である。辺野古への普天間基地の移設はどうやら日本側からの提案らしい。最近、当時のモンデール駐日大使は辺野古への基地の移設について言及していないと明らかにしたそうだ」高里さんから次々と飛び出す言葉は予想していたとはいえ政府がどこを向いて誰のための政治を行っているのかキリキリと胸が痛む。怒りがこもっての痛みである。

 

 「日本国土面積の0.6%に過ぎない沖縄には在日米軍施設の74%があり、日本全国の米軍基地関係者5万人のうち2万5千人が在沖している。私たちは平和憲法のもとに復帰を望んだ。平和な入り口に入ったはずだったが、振り向いてみれば日米安保下に組み入れられていた」

 

 この高里さんの言葉こそ沖縄県民の無念の思いであり怒りの原点であろう。

 

 講演の後半、米軍の沖縄本島上陸から米兵による女性への性暴力が始まった歴史をつぶさに記録した資料を見ると強姦・殺人が頻繁に繰り返され、小学生や赤ちゃんを抱える母親まで被害を受けている。その記録をよく見ると「詳細不明」や「不明」「訴えず」の文字がよく目に付く。それが1945年から現在に至るまで続いている。高里さんはこれが日米地位協定の実態だと語ってくれた。

 

ベトナム戦争後、女性の性暴力と絞殺事件が相次いだ。ベトナム戦争の住民虐殺を行った米兵は自分が殺されるという悪夢にうなされたという。悪夢の中で妻を絞殺しかけたという米兵はそれ以後寝室を別にしたという。戦争は加害者の精神をも蝕んでいくことも高里さんは紹介してくれた。

 

基地と民有地を区別するオレンジ色の境界線。日本側は許可された者しかこの境界線を越えて基地に入ることはできない。しかし米兵は自由に出入りし犯罪を起こしている。これが日米地位協定の実態を端的に表しているという。

 

女性への性暴力の歴史を読む高里さんの体には人権蹂躙を許さないという怒りと決意がこもっていた。住民の怒りは頂点に達している。軍隊の撤退こそが女性や子どもの安全と人権を護る唯一の道という言葉はずしりと重かった。

 

現在、基地は沖縄の経済の5%を支えているに過ぎないそうだ。昔、沖縄の教職員と交流した際に経済特区構想を厚く語ってくれた人がいた。私もそれに夢を感じた。日本の捨て石として使われた鉄の暴風の歴史を繰り返させないために米軍基地、自衛隊基地を撤廃するために沖縄と本土で共闘していきましょう。

(中谷悦子)


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2016年12月 8日 (木)

安倍総理とオバマ大統領の真珠湾訪問 国家のリーダーには、もっと大きな「歴史」を創る責任があるのでは

安倍総理とオバマ大統領の真珠湾訪問

国家のリーダーには、もっと大きな「歴史」を創る責任があるのでは

 

1941128日の真珠湾攻撃の日から75年経とうとしている5日、今月の2627両日に安倍総理とオバマ大統領がともに真珠湾を訪問することが発表されました。日米間の戦争が始まった真珠湾攻撃と原爆投下がアメリカ社会の依って立つ価値観の二本柱であることは何度も指摘してきた通りですが、オバマ大統領が広島を訪問し、安倍総理大臣が真珠湾を訪問することで、日米間に横たわる、多くの場合深層意識に沈み込んでいる大きな溝にも、徐々に光が差し真の和解への道が開けることを期待しています。

             

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 戦争の犠牲者の慰霊を行うことは大切ですし、今回の訪問にも賛成です。しかし、60年近く日米の間に立ち位置を決めて身をもって両国の関係を体験してきた立場から見ると、残念でならないことが何点かあります。安倍総理、そして安倍政権に期待することそれ自体が「無い物ねだり」だとは思いますが、日本という国家そして世界の未来をデザインする責任を持つ若い世代の人たちには何かの参考になるかもしれませんので、書き残しておきたいと思いす。

 

最初に問題にしておきたいのは、物事の順序です。仮に喧嘩をした後、仲直りをしたいと思った時、常識としては先に殴った方が先に謝ります。オバマ大統領も安倍総理も「謝罪」はしないので、「謝る」は当て嵌まりませんが、それがいつかは実現することになるだろうと考えるとその先鞭を付けているのですから、精神としては同じ原理が適用できます。日本の総理大臣がなぜ先に真珠湾に行かなかったのでしょうか。

 

それをもう少し敷衍すると、安倍総理以前の総理大臣が真珠湾に行っても問題はなかったはずですし、もし何人かの総理大臣がの自発的に真珠湾を訪れていたとすれば、アメリカの大統領の広島訪問はもっと早くなったのではないでしょうか。何年、何十年も前から「総理大臣は真珠湾を訪問すべきだ」と私たち市民レベルでもっと大きな声を上げるべきだったのかもしれません。しかし、市民の声を無視し憲法の解釈改憲までする為政者の最低限の責任として、国家レベルの責任を自発的に果すことくらいは期待しても良いように思います。

 

さらに、我が国の中には総理大臣の真珠湾訪問についての反対論は存在しないに等しいことを考えると、もっと早い時期の真珠湾訪問は実現可能なことでした。そして、然るべき方法で日米戦争についての責任を表明し謝罪することも可能だったはずです。米国の議会で真珠湾に言及するのと、真珠湾その場で責任を明確にし謝罪することとの間には大きな差があります。

 

オバマ大統領も謝罪しなかったから安倍総理も謝罪しなくて良い、というバランス論もあるようですが、状況が全く違います。アメリカ社会には、「広島に行くこと自体謝罪だ」とまで主張する大きな反対論がありました。その反対論に潰されずに広島訪問を実現するためには「謝罪はしない」ことを明言して、いわば「小を捨てて大を取る」という現実的妥協が必要だったと考えて良いでしょう。

 

しかし、安倍総理の真珠湾訪問については、「訪問反対」の声もありませんし、「謝罪するな」あるいは「真珠湾に行くこと自体謝罪だ」と主張する人もいません。妥協が必要ではなかったのです。誰かに、あるいは何かに遠慮する必要のない状況で、「自発的」「積極的」に謝罪はしないという決定をした意味を私たちは考えなくてはなりません。

 

もう一点、「謝罪」について重大な視点が抜けていることを指摘しなくてはなりません。真珠湾攻撃の結果、被害を受けたのは、攻撃で直接に亡くなった米兵だけではないという点です。

 

真珠湾攻撃の結果、アメリカでは「宣戦布告もしない卑劣な奇襲攻撃」として、日本ならびに日本人全体を「卑劣」というイメージで捉えることが定着しました。それは、アメリカ国籍を持つ日系アメリカ市民に対しても同様でした。強制収容所に隔離され差別され生命財産まで奪われた悲劇も思い起こさなくてはなりません。彼ら/彼女らの犠牲に対しては、そんな非道なことを行ったアメリカ政府にも責任はありますが、そのアメリカ政府は1988年にこれらの日系米人に対する補償法を制定し、謝罪しています。しかし、その原因となった真珠湾攻撃そして日米戦を始めた日本政府にも当然、責任があります。そして謝罪することも必要です。

 

こうした犠牲を無視して、日米間の関係が良好なのは日米同盟があり、かつ総理である自分とオバマ大統領の功績であると言わんばかりの記者発表でしたが、「卑劣な日本」というイメージと闘い、それを覆して日本のそして日本人のイメージを改善したのは、多くの日系アメリカ市民であり、それに加えて例えば、かつては「安かろう悪かろう」の代名詞だった日本製品を質的に改良し、アメリカ市民と直に接することで良い関係を作り、電気製品や車等の工業製品を広めた人たちです。さらには、日本映画をはじめとする芸術、留学生や研究者、戦争花嫁等々、例示をして行けばキリがありませんので、あとは皆さんにお任せしますが、こうした多様で無限にも見える市民レベルでの交流こそ、現在の関係を作り上げてきたのです。

 

日本政府、特に外務省は、こうした大きな負の遺産を日米両国の多くの市民に負わせました。そのことにこそまず謝罪すべきですし、その後の市民の努力によって日米間の平和な関係が作られてきたことについても安倍総理そして日本政府は深甚なる感謝の意を表すべきだと思います。

 

政治家や官僚等の貢献があったことも無視すべきではありません。しかし、1980年に出された「原爆被爆者対策基本問題懇談会」の意見に述べられている政府の見解は、「およそ戦争というその国の存亡をかけての非常事態の下においては、国民がその生命・身体・財産等について、その犠牲を余儀なくされたとしても、」「全て国民がひとしく受忍しなければならない」という為政者の基本的なスタンスを示しています。それが大前提となって動いてきた日本の政治を考得ると、犠牲になった国民の立場こそ、もっともっと強調されなくてはならないことは明白だと思います。

 

  

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コメント

ネットのニュースサービス「BuzzFeed」によると「安倍首相の真珠湾訪問「現職初」ではなかった 各紙間違えたけど、実はあの人が」という見出しで、1951年9月12日(現地時間)に吉田茂首相が真珠湾を訪ねていることが報じられています。

私は、12月6日の朝日新聞のトップ記事の見出し「現職として初」を信用して今回の原稿は書きました。お詫びして修正します。修正の詳細とこの点からさらに見えてきた意味は、明日取り上げたいと思います。

BuzzFeedのURLは次の通りです。
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/first-time-ever?utm_term=.suD8zz2jlW#.vujX994rm0

今年も真珠湾攻撃記念日を迎え米各紙がこぞって Remember Pearl Harbor を特集する中、トランプ大統領の誕生に大きく貢献した保守派のジャーナリスト Bill O'Reilly の著書 Killing the Rising Sun が大ヒットしています。
 このタイトルにある the Rising Sun とは Japan のことで内容は真珠湾攻撃で始まり原爆投下で終わった戦争のことであり原爆投下は「多くの米兵と同時に日本の一般市民の命を救うための苦渋の選択であった」という従来からの米国の姿勢を貫いています。
 その主張はともかく「長崎の次は東京であった」や歴代大統領のその後の考え方などなかなか良く調べて書かれた内容であり今なお半数近い米国民に支持されている考え方として頭に入れておく必要はあると思いました。

投稿: Japanese | 2016年12月 8日 (木) 12時54分 

「Japanese」様

コメント有り難う御座いました。我々の世代も、歴史学者やジャーナリストの追う「パール・ハーバー」そして「原爆投下」をフォローしてきました。時代的な背景もあり、それなりの理解ができたと思い込んでしまっていることに改めて気付かされました。

御指摘のように、「今」という時代からの歴史の検証の大切さを、今の時代を生きる若い世代の皆さんと共有しなくてはならないと思いました。有難う御座います。

2016年12月 4日 (日)

「原水禁学校」第3回 「法の支配」とアメリカ


「原水禁学校」第3

「法の支配」とアメリカ

 

高校生平和大使の感動的なプレゼンの後は、原水禁学校の講演。「核兵器廃絶と日本の役割」がテーマでした。内容はこのブログで何度も取り上げてきたものですが、まとめて読んで頂く意味もあると思いますので、アウトラインだけを簡単に拾っておきたいと思います。

                

Photo

             

   

大テーマは、世界が「法の支配」という方向に動きつつあり、それは市民の声、またその集まりとしての世論を反映していることです。地球の未来に希望を持って良いということなのですが、具体的には二つの分野について考えることになりました。一つは、アメリカの動きです。トランプ氏が大統領選挙で勝ったことで、オバマ大統領の影が薄くなっていますが、長期的にはオバマ大統領によってアメリカが根本的かつ良い方向に変わりつつあることを再確認しました。

 

 国連の第一委員会で採択された画期的な決議、つまり、核兵器禁止条約締結に向けての多国間交渉を来年2017年に始めることについて、これが世界レベルでの「法の支配」という新たな時代に踏み込んだことを示しています。それ踏まえて、第二次世界大戦後、「法の支配」が国際的にも広がりつつある歴史を振り返りました。特に、今回の大統領選挙とアメリカ社会についても、同じ文脈で考えることが重要です。

 そのためにも、オバマ大統領のプラハ演説と広島訪問の果たした役割が如何に大きいのかを再確認しました。出発点はアメリカ社会の基本的な価値観を支える二本柱です。

 それは、パール・ハーバーが「絶対悪」であり、それを「善の権化」のアメリカが原爆よって懲らしめたというシナリオに基づいた「勧善懲悪」の価値観です。

 その価値観が、オバマ大統領のプラハ演説と広島訪問で劇的に変りました。「原爆投下は正しかったか」という問に対して、1945年には85パーセントのアメリカ人は「Yes」と答え、その後も2009年には67パーセントだったのが、2015年には56パーセント、2016年にはついに過半数を割って、45パーセントになったのです。改めてグラフを御覧下さい。

  

1945200920152016

 

 これを「オバマ効果」と呼ぶならば、今回の大統領選挙でのトランプ氏の処理の結果として全米で起きているヘイト・スピーチやヘイト・クライムは「トランプ効果」と考えられますが、長期的には「オバマ効果」が勝つであろうと予測できます。

 その理由として、アメリカ社会の「現実」とその現実を市民がどう捉えているのかという「認識」の間にあるギャップです。それを示している二つのグラフですが、一つは、1994年以降アメリカ社会では犯罪が減っていることを示しています。もう一つは、にもかかわらず、普通の人は、犯罪が増えていると思い込んでいるということを示しています。このギャップが、トランプ候補の支持者を増やすことになったと考えられます。

 

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Photo_3

  

前の年より犯罪が増えていると考える人の割合

 

 しかし、今回の大統領選挙でも総得票数ではクリントン候補が勝っていたこと、また、オバマ大統領のプラハ演説と広島訪問が、アメリカの価値観の基本を揺るがすほど大きかったこと、それが具体的に社会の表面に出てくるまでには時間か掛かるかもしれないこと、さらにオバマ大統領が実現した「オバマケア」その他の改革の効果やその結果社会全体が「良くなっている」ことを自覚するのにも時間が掛かるであろうことも踏まえると、長期的には「トランプ効果」より「オバマ効果」の影響の方が長く続きそうだと考えられます。

 

長くなりましたので、国連の第一委員会の決議とそれに反対した日本政府の言い訳を改めて検証した部分は次回に回したいと思います。

  

 

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コメント

原水禁学校を初めて受講しました。交通機関の関係で、途中、退席をしなければいけなかったのが残念です。歴史をどうみるかその都度、学びかえさなければなりません。自戒します。商業新聞はこんなたいせつなことをなぜ掲載しないのか?いえ❣自分が知ろうと努力が足りないことと、視点の基軸を常にどこへ置くのか…深く反省です。ありがとうございました。やすみ\(;゚∇゚)/

「やすみ」様

コメント有り難う御座いました。また遠くからお越し頂き、感謝しています。ブログでもしっかり伝えたいのですが、やはり直接、時と場を共有することで伝わることもあるような気がします。

これからも頑張って行きましょう。またスター・ライターのお一人としての活躍も期待しています。

2016年12月 1日 (木)

オバマ大統領への手紙 (2) 日系アメリカ人被爆者のことも忘れないで下さい


オバマ大統領への手紙 (2)

日系アメリカ人被爆者のことも忘れないで下さい

 

お読み頂ければ分りますが、かつては1000人くらいの方が属していた在米被爆者協会という組織のお手伝いをしていたことがあります。その後、長い間会長や理事として活躍されていた倉本寛治さんや中野健さんもお亡くなりになりましたが、御健在の方も多くいらっしゃいます。しかし、オバマ大統領のヒロシマ・スピーチでは言及がありませんでした。できれば在任中にお引き合わせができないものかと、ホワイト・ハウス(郵送と電子メール)、東京のアメリカ大使館内ケネディー大使、ニューヨーク・タイムズ等に手紙を送りました。どなたかの目に触れ、大統領の手に渡ることを祈りつつ。

 

             

Photo

ホワイト・ハウスのホーム・ページから

 

 
 

オバマ大統領閣下

 

現職のアメリカ合衆国大統領として広島を訪問して下さったことに対して、前広島市長として改めて御礼申し上げます。被爆者そして広島市民だけでなく、全国民が貴職の広島訪問を歓迎しました。共同通信の調査では、全人口の98パーセントが素晴らしかったと評価しています。

 

個人的には、貴職の広島でのスピーチに感動し感謝しています。それは、2009年のプラハでのスピーチをさらに広げた内容になっています。そのプラハのスピーチに応える形で、2009年の平和宣言では謝罪抜きで広島に来て頂きたい旨の意思表示をしていますし、秋には広島に来られたルース大使にもきちんとお伝えしています。また、2010年には、ホワイト・ハウスで、広島にお出で頂けないかと直接お願いをさせて頂きました。

 

また、貴職のスピーチと広島訪問の結果、「原爆投下は正しかった」と考えるアメリカ人が、1945年の85パーセントに対して、今年2016年には45パーセントになったというYouGov社の世論調査結果も注目すべきだと思います。これほど劇的な変化がアメリカで起きていることは、今後、世界により大きな影響を与えるはずであり、これほど大きな貴職の功績に感謝の意を表します。

 

私は数学を勉強しましたので、それ故に貴職の広島スピーチ中の集合論的な瑕疵に気付きました。スピーチの中で、何故広島に来るのかについて、貴職は説得力ある説明をされています。「私たちが広島に来るのは、ここで亡くなった人たちの霊に祈りを捧げるためです。その中には、10万人以上の日本人の男性、女性そして子どもたち、何千人の韓国・朝鮮の方々また、捕虜として拘束されていた12人のアメリカ人も含まれます。」

 

ここで明示された方々への貴職の配慮は世界の多くの人たちから歓迎されました。そして私も心からそれに賛成しています。しかし、このリストから漏れているアメリカ人がいます。原爆投下時に広島にはかなりの数の日系アメリカ市民が住んでいました。彼ら/彼女らは、その結果被爆者になりました。

 

その後、アメリカに帰国した彼ら/彼女らはアメリカ政府からの医療補助を求めましたが、その願いは未だに実現していません。医療費は、日本政府の制定した「被爆者援護法」が賄っていますが、アメリカ政府に彼ら/彼女らの存在を認めて貰う必要はなくなってはいません。

 

この手紙を認めているのは、貴職を批判するためではありません。実は、このことは今考えると、マイナスの衣を纏った祝福なのかもしれないからです。それは、貴職が日系アメリカ人被爆者をホワイト・ハウスに招待して彼ら/彼女らの話を聞くことが、一石二鳥になるからです。貴職にとっては、広島では時間の都合で実現できなかった被爆者の体験を詳しく聞くことができるという結果になります。そして日系アメリカ人被爆者の存在を、貴職が「公式に」認めたという結果ももたらすからです。

 

 敬具

 前広島市長   秋葉忠利



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2016年11月29日 (火)

アメリカ社会は変ったのか(5) [オバマ効果] > [トランプ効果] ?


アメリカ社会は変ったのか(5)

[オバマ効果] > [トランプ効果] ?

 

かなり長いシリーズになりましたが、続けて読んで頂ければ幸いです。

 

前にも「オバマ効果」と銘打った記事を何度か書きましたが、改めて「オバマ効果」をまとめると、次のようなことになると思います。

      (1)自ら持つ「絶対性」を使って

(2) アメリカ社会の持つ信念の「絶対性」、つまり「原爆投下は正しかった」という命題の権威を否定し、

(3) 一人一人の人間の持つ内なる声、”the better angles of our nature”を引き出した

(4) 結果として、プラハ演説で自ら掲げた目標を、プラハ演説によって実現した。

 

対して「トランプ効果」とはその逆で、

(1) 多くの人たちの持つ「本音」、それも心の中では否定したい気持ちもある「本音」を、大統領の持つ「絶対性」で「絶対化」し、

(2) 「本音」で発言し行動しても良い、というメッセージを「絶対化」して発信し、

(3) 「怒り」「憎しみ」「暴力」といったマイナス面を引き出した。

とまとめられるのではないかと思います。となると、残された疑問は

(4) The Better Angels of Our Nature」はどこへ行ったのか?

になります。 


The Better Angels of Our Nature」は健在です。ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授の著書「The Better Angels of Our Nature」は、何回か取り上げていますが426日の記事が最初です

その後、731日にも再度取り上げました。そこにも引用したのが、1946年以来の世界が平和になっていることを世界情勢に照らして説明しているリストです。重複を厭わずに再度掲載しましょう。

  

「平和」を示す戦争関連の歴史的事実 (1946年以降)

 

l 核兵器は使われていない

l 冷戦で対立した二つの国が戦争はしなかった

l 「大国」間の戦争もなかった(中国が大国になったのは、朝鮮戦争後と解釈)

l 1953年から数えて、紀元前2世紀のローマ以来、最も長い期間、大国間での戦争がなかった時期

l 西ヨーロッパの国同士での戦争もなかった

l 1人当たりの所得が最も高い44か国の間での戦争はこの間、1956年のハンガリーへの侵略を除いてゼロだった

l 先進国が、他国を侵略して領土を拡張することもなかった

l 多くの国が独立した

l 国際的に認められていた国が侵略により独立を失うこともなかった

 

アメリカ国内に限って犯罪率を見ても、1994年以来、ハッキリ減少傾向を示しています。

                  

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 60年代から上昇した背景は別に分析が必要ですが、最近の傾向は「非暴力的になっている」です。しかし、世論調査の結果を見ると、多くの人が「犯罪は増えている」と信じているという結果になっています。

 

仮に「本音」として表現されているのは、誤った認識によって多くの人が持つに至った不安だと考えられるなら、犯罪率が減っているという「事実」が広まることによって、「本音」も現実を反映したものになるのではないでしょうか。つまり長期的には「オバマ効果」が「トランプ効果」に勝つという傾向です。その結果、社会がより非暴力的になり、世界が平和になるというシナリオもあり得る、いやそうなるだろうと予測するのは楽観的過ぎるでしょうか。

 

 

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