『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論』 (3) ――何故「数学書」として読みたいと思ったのか――
私が、憲法をあたかも「数学書として読む」試みをしたいと思ったのには、いくつかの理由があるのですが、それを一言で言い尽してくれている至言があります。心理学者アブラハム・マズローの言葉です。
もしあなたが金槌なら、世界は釘に見える。
同様に数学を勉強した人間にとって、世界は数学システムのように見えてもおかしくはないのです。
それを、他の言葉を使って説明しておきましょう。その結果として、「数学」とはどんな学問なのかが少しは見えてくるような気がします。
一つには、数学書では、書かれている言葉は素直にその通り読みます。例えば、「Nは整数である」と書かれていれば、「本当のところは、Nは無理数でも良いんだ」という読み方はしません。しかし、憲法については、例えば99条で、天皇や公務員には憲法を遵守する「義務」があると書かれてはいるのですが、その解釈についての定説では、これは「義務」ではなく「道徳的要請」なのです。それを素直に。「義務である」と読んだらどのような結果が生じるのか、知りたいとは思いませんか?そのように素直に読んでみた結果の報告が『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論』なのです。
次に、憲法には、「自衛権」という言葉は使われていません。数学書であれば、そこに使われていない言葉を引っ張り出してきて、それを根拠に定理を証明することなどありません。それと同じように、憲法の中には現れない概念や言葉は、憲法を解釈する上では使わないことにしたらどんな結果になるのか、その結論についての報告にもなっています。
さらに、数学書では、仮にNが整数であって、加えて、Mも整数だとすると、N+Mは整数になります。それは論理的な議論によって証明できます。それと同じような簡単かつ論理的な議論をすることで得られる結論もあります。例えば、このような論理的な読み方をすると、憲法は死刑を禁止しています。しかしながら、現実の世界では、「死刑は合憲である」ということが定説になっています。最高裁判所の判決があるからです。本当にそれで良いのか、敢て問題提起をすることも、『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論』では行っています。
その他の理由もありますが、それらをまとめて、なぜこの本を読むべきなのかをアピールしているチラシを法政大学出版局の方が作って下さいましたので、最後にそれを掲げて置きます。
[2019/7/12 イライザ]
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