« 恒例のゴールデン・ウイークBBQ | トップページ | 生前退位と憲法 »

2019年5月 3日 (金)

朝見の儀と憲法

[以下、憲法の枠組み内の話ですので、マスコミ等でよく使われる「天皇陛下」ではなく、憲法で使われている「天皇」と表記します。「総理大臣」等についても憲法の用語に従います。]

平成が終り、「令和」にった5月1日、「即位後朝見の儀」が行われました。この儀式には、憲法と深い関係があります。なぜなら、即位後朝見の儀とは、「即位された天皇陛下が,ご即位後初めて公式に三権の長を始め国民を代表する人々と会われる儀式」だからです。

そこでの天皇の「おことば」は、マスコミが全文を伝えていますので、ここではその中で憲法に言及している最後の部分に注目します。

「憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します。」

ここで、「憲法にのっとり」がどこに掛っているのかが重要ですが、それは、そのすぐ後の「日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い」の部分だけだと考えるのが自然です。その次にまで掛っていると解釈すると、「憲法にのっとり、世界の平和を切に希望します」となってしまって、そのような表現が絶対ないとは言えませんが大変、不自然だからです。

この点に気付いたのは、現上皇が、平成になってすぐ、1989年1月9日の朝見の儀での「おことば」を記憶していたからです。それは次の通りです。

「皆さんとともに日本国憲法を守り,これに従って責務を果たすことを誓い,国運の一層の進展と世界の平和,人類福祉の増進を切に希望してやみません」

ここで大切な点が三つあります。一つは、「日本国憲法を守り」と憲法遵守を明確に誓っている点です。そして、二つ目は、それを、つまり「日本国憲法を守る」ことを行うのは、「皆さんとともに」だということもハッキリ述べている点です。さらに、自ら「これに従って責務を果たすことを誓い」と、憲法を遵守するとの宣誓を行っていることです。この三つが重要なのは、憲法99条を読むことではっきりします。99条を引用します。

第99条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

第99条で憲法遵守義務を負わされているのは、天皇と摂政というグループ (天皇と略します) そして、総理大臣以下の国務大臣等の公務員 (これを公務員と略します) という二つのグループになります。そして、朝見の儀とは、新たに天皇になった立場、つまり第一のグループの人が、初めて第二のグループの人と顔を合わせる場です。そして憲法上、この二つのグループが一つの条項でともに義務を与えられているのはこの条文だけなのです。

190502

となると、現上皇による1989年の「おことば」は、憲法を遵守するという誓いを、国民を代表する公務員たちとともに行うという、ことによると憲法上もっとも重要な行為になるではありませんか。

対して、今年5月1日の「おことば」は、 「日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たす」ということにしか言及していません。これは第1条への言及が中心になっています。間接的には99条を守ることも含まれていると解釈できないわけではありませんが、「日本国憲法を守り」と言い切っていないのは何故かという疑問が生じます。

さらに、せっかく三権の長も含めて、「公務員」の中でもリーダー的な役割の人たちが集まった場ですので、一方的に天皇が憲法について発言するだけではなく、「皆さんとともに」憲法を軸にして未来を考える、あるいは確認する場にしても良かったのではないでしょうか。

こまで読まれて、これを現天皇批判だと受け止められている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、ここで批判をしているのは、「公務員」、特に内閣です。その理由は明白です。今回の朝見の儀は、「国事行為」であることが決められたのですが、憲法3条によると国事行為については、内閣が助言と承認を行い、かつその責任を負うことが決められているのです。天皇の発言も含めて、全ては内閣の責任であるという意味だからです。従って、ここでの批判は全て内閣批判なのです。(1989年の朝見の儀も、国事行為という解釈が成り立つようなのですが、法律による明示的な規定ではなかったと記憶しています。)

Photo_95

そして今回の朝見の儀に欠けてしまったのが、憲法99条なのです。その点は、既に述べた比較で十分お分りだと思いますが、内閣の責任という点から、1989年の朝見の儀における竹下総理大臣による奉答文と、2019年5月1日の安倍総理大臣による「国民代表の辞」それぞれの中の憲法に関連のある部分を比べてみましょう。

竹下総理大臣:   「国民一同、日本国憲法の下、天皇陛下を国民統合の象徴と仰ぎ、世界に開かれ、活力に満ち、文化豊かな日本を建設し、世界の平和と人類福祉の増進のため、更に最善の努力を尽くすことをお誓い申し上げます。」

安倍総理大臣:   「英邁なる天皇陛下から、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、日本国憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たされるとともに、国民の幸せと国の一層の発展、世界の平和を切に希望するとのおことばを賜りました。」

竹下奉答文では、「日本国憲法の下」、公務員も含めた「国民」が一つになって「お誓い申し上げます」と読むことが可能です。つまり、公務員の憲法遵守も視野に入れての言葉になっています。

安倍総理大臣の辞では、憲法の下りは天皇の決意を復唱しただけで、自分たちがどう憲法と関わるのかについては一言も言及していません。その他の部分を注意深くチェックしても憲法への言及はありません。つまり、憲法99条の憲法遵守義務について、「公務員」の立場から天皇とともにその義務を果すという決意も誓いも述べられていないどころか、言及さえされていないのです。

国事行為の中身を決定する内閣が、その意思を朝見の儀にどう表現したのかはもう御理解頂けたと思います。内閣が本来政治利用すべきではない儀式をどう扱ったのかを見る限り、安倍内閣は平成の竹下内閣に、憲法遵守という点でははるかに及ばないのです。

大分、長くなってしまいました。しかし、これだけではまだまだ不十分なのです。安倍政権による、天皇の発言に対する「介入」についてまで詳しく知らないと、事の深刻さは伝わりません。

[次回に続きます。]

 

 [2019/5/2 イライザ]

 [お願い]

文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。

広島ブログ
広島ブログ

 

 

« 恒例のゴールデン・ウイークBBQ | トップページ | 生前退位と憲法 »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

言葉」カテゴリの記事

歴史」カテゴリの記事

日本政府」カテゴリの記事

憲法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 恒例のゴールデン・ウイークBBQ | トップページ | 生前退位と憲法 »

2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31