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2018年7月30日 (月)

「アベノミクス」に騙されるな! ――経済も、原点に戻って考えよう――

 

「アベノミクス」に騙されるな!

――経済も、原点に戻って考えよう――

 

台風12号が上陸し、特に小田原から熱海を中心に太平洋側では大きな被害が出ているようです。お見舞い申し上げます。さて、予断は許されませんが、広島県内の被災地への影響は最悪のシナリオにはならなかったようで、少しホッとしています。でも、台風の進路には吃驚しました。Yahooの天気予報で台風を調べたのですが、29日の13時に、台風の中心は宮島の真上でした。そして管弦祭も中止になったとのこと、自然の力の大きさを認識せざるを得ない7月になりました。

 

               

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台風や豪雨災害による被害を最小にするため、政治の果す役割の大きいことは言うまでもありませんが、我が国の政治の最優先事項の一つとして災害対策を捉えるべきだ、という立場から「防災省」の創設を提案しています。

 

市民・国民・庶民の生命や生活には関心のない安倍政権が、世界の見方を一夜にして転換するとは思えませんが、それでも、私たちが少しでも説得力のある材料を見付けて、少しでも多くの人たちと共有し、マスコミの中に少数ながら残っている良識の持ち主たちとも協力して、何とか世論のうねりを作りたいと思っています。

 

そのためには、かなりの程度数値化ができる経済の面からの分析が有効だと思います。幸いなことに、私の身近な人たちの中には金融や経済の専門家も多く、このところ御紹介して来た森嶋通夫先生等、尊敬する経済学者の方たちからも学んできましたし、今で、経済の分野での気骨ある方々の発言には注目してきています。そして、天は私たちを見捨ててはいなかったのです。

 

たまたま目にした立命館大学の太田英明教授の論文は、経済学の基本的な部分と、原点から点検した「アベノミクス」の本質についての「目から鱗」としか表現できない素晴らしいものだったのです。大田先生は広島市の出身で、東大の経済学部を卒業後、ケンブリッジ大学を経て、国連工業開発機関や野村総合研究所、シンガポールの経済研究所、愛媛大学等で国際経済を中心に世界的な研究・調査活動を行い、現在は立命館大学の教授として活躍されています。被爆二世として政治にもずっと関心を持ち続け、専門分野を離れてでも、日本の政治と経済を立て直すという使命に駆られての活動も続けて来られています。

 

それは、2007年に愛媛大学の法文学部論集に掲載された論文「所得格差および税制と経済成長 ――中長期的影響:分配なくして成長なし――」というタイトルにハッキリと示されています。略して「大田論文」、さらに略して「論文」と呼びましょう。勉強の好きな方には、この論文をお勧めします。

 

「アベノミクス」と経済学の基本とを結び付けるために、官邸のホームページから出発しましょう。そこには「アベノミクス」を説明するための、簡単な図式が掲載されています。

 

 

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つまり、「アベノミクス」が目指している「持続的経済成長」のためには、「消費の拡大 ⇒ 企業業績の改善 ⇒ 投資の拡大 ⇒ 賃金の増加 ⇒ 消費の拡大」という、良い循環が作られなくてはならないという、基本が描かれています。

 

それに対して「大田論文」では、所得格差を切り口として、ここに掲げられている4つの項目が、残念なことに上手く回っていないことを示しています。「大田論文」で取り上げているのは、2006年までの日本経済なのですが、それからの10年余りの傾向も基本的には同じだそうですので、説得力のある数字やグラフ、図表等は「論文」からお借りします。

 

論文ですから、短い言葉の中に内容を圧縮し、かつ論理的な議論を展開しています。論文を読むことに慣れていないと、最初の一二行で諦めてしまう人も出てきます。私が一緒に、少し寄り道をしながら、「解説」といった形で「はしがき」の趣旨をお伝えできればと思います。

 

「はしがき」

 

 日本社会における「所得格差」や「経済格差」は悪化しています。まず、所得分配が平等かどうかを示すジニ係数は一貫して「不平等」の方向に悪化しているのです。―― (ここでジニ係数の説明をしたいのですが、長くなりますのでまたの機会にします。大切なのは、この係数は01の間の値を取り、この値が0に低いほど、平等に近い所得分布になっているということです。一人の人だけに所得があり、その他の全ての人は、全く所得がない場合、ジニ係数は1になります)

 その理由としては色々な説明がされています。例えば、(a) 終身雇用制度の崩壊 (b) 正規雇用者と非正規雇用者やパートの間の賃金格差 (c) 高齢所帯の増加 (d) 若者のフリーター層の増加等です。

 しかし、それら以上に説得力のある説明は税制の影響です。税と経済成長についての因果関係については、論文中で検証されます。しかし、経済成長に関係付けるのと同時に、一人一人がどれだけ豊かな生活を送っているのかも大切です。税の面でお金持ちが優遇され、中間層以下の人たちには、そのしわ寄せが押し付けられている事実をしっかり把握することも大切です。

 お金持ちほど、税金の面で優遇されており、その結果足りなくなる分は、中間層以下の人たちの税負担で補っているということを具体的に見てみましょう。

 (a) 80年代から本格化した所得税の累進制緩和によるフラット化の流れがありました。 (b) それに加えて、1989年には逆進性の強い消費税が導入されました。 (c)しかも、その税率は当初の3パーセントから、1997年には5パーセントに引上げられました。(その後、2014年には8パーセントに引き上げ)られました。 (d) 2007年以降本格化する所得控除廃止措置等によって、中間層以下への負担が増加していることが挙げられます。

 それに対して、富裕層は最高所得税率が37 2007年度より40%),地方税は13%(同,10%),合計50%と80年代初の90%程度に比べ大幅に負担が軽減されています。

 こうした施策を正当化するために、「トリクルダウン」理論という、とんでもない考え方が使われてきました。つまり、お金持ちが自由に使えるお金が増えると、「金持ちは沢山お金を使う ⇒ それが段々下にまで落ちてきてさらなる消費につながる」から社会全体が潤うという構図で、経済が活性化されるというものです。

 しかし、こんなことは起こらないということが学界の定説になっていますし、アメリカでは父ブッシュ大統領がこれは、「原始的宗教の信仰に類する理論」だと一蹴したことでも知られています。

 結局、「経済学的に考察すると,国民経済全体からみれば,富裕層の消費は大きな波及効果は望みにくく,大多数を占める中低所得層の可処分所得の拡大に伴う消費拡大なくして安定的な成長は望めない」というのが結論です。

 そして「アベノミクス」では、この考え方とは正反対の施策を展開してきた、ということが問題なのです。

 

「アベノミクス」については次回以降も続きますが、私たちにも読める著書の一つに『IMF(国際通貨基金) 使命と誤算』(中公新書)がありますので紹介しておきます。

 

[2018/7/29 イライザ]

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