日本政治を蘇生させるために ――改竄公文書と憲法――
日本政治を蘇生させるために
――改竄公文書と憲法――
[まずはお断りです。「改ざん」と書く代りに、漢字を使って「改竄」と表記しているのは、「竄」という字の持つオドロオドロしさ、異様さを通して、今回の危機的状況を表せればという思いからです。]
ようやく国会に対して改竄を認めた財務省ですが、国民の怒りは極限に達しています。にもかかわらず、これまでその怒りが国民的な倒閣運動にまで至っていないのは、「怒り」を言語化する役割をマスコミが放棄し、知的リーダーたちがその役割を十分には果せていなかったからであるような気がしています。
そして、ある程度の知的訓練を受け、物事を言語化しその共有を可能にし政治的エネルギーに変える役割を負っていたはずの私も怠慢でした。その反省を込めて、言語化、そして国民的エネルギーによって政治の生命を蘇生させる一翼を担いたいと思います。
勿論、財務省による公文書の改竄事件は未曽有の政治スキャンダルです。改めてこれが如何に国民を蔑ろにしているかについて多言する必要はないと思いますが、とにかく腹の立つこと夥しい問題です。それでは不十分なほどの怒りが主権者の側にはあるのですが、それを表現する第一歩として、ちょっと感情的になりますが、私なりに簡単にまとめた思いを、特にその中でも憲法との関連についての言及が少ないので、その点から始めたいと思います。焦点を合わせるのは、どこが改竄されたか以前の問題として、元々の文書に何が書かれていたのかです。以下、腸の煮えくり返る思いだけでも受け止めて頂ければ幸いです。
まず憲法の引用です。
By Wiiii (Own work) [GFDL
(http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY-SA 3.0
(https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons
憲法前文 「主権が国民に存することを宣言し」
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
私人である安倍昭恵総理大臣夫人の名前が、公的な売買契約関連文書に記載されていること自体異常です。その文書は、森友学園つまり籠池夫妻に、国有地を大幅に値引きして払い下げることを決めています。
この点が異常なのは、官僚的文書の作り方の慣例から逸脱しているからです。その慣例、あるいは「法則」とさえ言って良いのだと思いますが、それはミニマリズムです。つまり最小限主義です。少し親切に、一言加えておけば、はるかに分り易くなるのにという場合でも、私の知る限りの国家官僚たちは、必要最小限の言葉しか使いません。口頭でもそうなのですが、ましてや文書となれば、それが何倍にも増幅されます。
ですから、ただ単に昭恵夫人が名誉校長だったからその事実を書いたという説明ではとても納得が行きません。それは、これまでの私自身の経験からハッキリと分ります。納得が行く説明とは、例えば、森友学園についての諸決定を滞りなく進めるために、これが総理案件だということを省内に周知する必要があったということにならなければなりません。そして、総理案件が最優先されるのは、安倍内閣では人事を首相官邸が完全に掌握していたからに他なりません。首相官邸の主が総理大臣であることは、言うだけ野暮ですね。
となると、これは第15条の2項違反でしょう。つまり、全体への奉仕ではなく、森友学園そしてそれに関与している一私人の利益のために官僚が動いたことになるからです。そして、その事実を改竄し、隠蔽し、嘘を吐いてまでして国民の目に触れさせなかったことは、国民主権という民主主義の大前提を踏みにじっています。同時に、国会に対して隠蔽、虚偽の説明をするなどということは、国会を「国権の最高機関」と定めている憲法41条違反でもあります。
さらに、重要なのは、憲法では公務員に対して遵守義務を負わせていることです。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
天皇にも課されている憲法遵守義務を (天皇の権威を日頃から主張し、「元首」にまで持ち上げたいと活動している人たちの集団、国民会議やその影響下にある人たちの価値観を元に表現すれば) 一介の国会議員や官僚が簡単に踏みにじって何の呵責も感じないなどということは許されません。
これだけでも、森友問題についての財務省の対応が如何に人を馬鹿にしているものなのか、傲慢かつ無礼なものなのかは明らかなのですが、財務省がそれほど大きな態度を取るためには、とんでもなく大きな存在が背後にあると考えなくては理屈に合いません。戦前の軍隊なら、軍事力がありますから、それが説明になります。今の時代にそれに匹敵するほど大きな力とは何でしょうか。それが何かを考えるためには、もう一つの事実も視野に入れなくてはなりません。
[次回に続きます]
[2018/3/13イライザ]
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コメント
3/4 アカデミー賞授賞式→主演男優賞→発表前
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を...』の1シーンが。
「私が責任をとる」←C 「本当に?」←側近らしき人
「あたり前だ!」「そのために首相の座にいるのだ」←C (もちろん字幕)
このシーン→タイミング絶好なのに宣伝に使われることは、まず、ない。(;´д`)
「されど映画」様
コメント有り難う御座いました。
誰に対して責任を取るのかという点が現政権・与党には存在しないことも大問題です。それが独裁者のメンタリティーではあるのですが、主権者として独裁政治を止めさせなければ、今の状態は続いてしまいます。
改竄というより、私は隠蔽だと思います。消して隠しているんですから。
隠蔽するために改竄してと。
マスコミやメデイアの程度が酷すぎます。
多くの国民は、新聞に書かれていることやテレビで報道されている内容に左右されます。
それに安倍内閣になってから、テレビには政治批判を強くする人は殆どでなくなりました。
全ての行政組織の上位に内閣があるのは、何故なのか。
その理由だけで、麻生外務大臣は罷免されるべきです。安倍総理は内閣解散でなく辞任すべきです。
「やんじ」様
コメント有り難う御座いました。
政治の私物化を目論む、モラルの欠如した政治家たちのために人命が複数失われている事態になった今、内閣総辞職、そして安倍議員は、言葉通り議員も辞職すべきでしょう。
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3/4 アカデミー賞授賞式→主演男優賞→発表前
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を...』の1シーンが。
「私が責任をとる」←C 「本当に?」←側近らしき人
「あたり前だ!」「そのために首相の座にいるのだ」←C (もちろん字幕)
このシーン→タイミング絶好なのに宣伝に使われることは、まず、ない。(;´д`)
投稿: されど映画 | 2018年3月14日 (水) 08時57分
「されど映画」様
コメント有り難う御座いました。
誰に対して責任を取るのかという点が現政権・与党には存在しないことも大問題です。それが独裁者のメンタリティーではあるのですが、主権者として独裁政治を止めさせなければ、今の状態は続いてしまいます。
投稿: イライザ | 2018年3月15日 (木) 12時30分
改竄というより、私は隠蔽だと思います。消して隠しているんですから。
隠蔽するために改竄してと。
マスコミやメデイアの程度が酷すぎます。
多くの国民は、新聞に書かれていることやテレビで報道されている内容に左右されます。
それに安倍内閣になってから、テレビには政治批判を強くする人は殆どでなくなりました。
全ての行政組織の上位に内閣があるのは、何故なのか。
その理由だけで、麻生外務大臣は罷免されるべきです。安倍総理は内閣解散でなく辞任すべきです。
投稿: やんじ | 2018年3月19日 (月) 08時01分
「やんじ」様
コメント有り難う御座いました。
政治の私物化を目論む、モラルの欠如した政治家たちのために人命が複数失われている事態になった今、内閣総辞職、そして安倍議員は、言葉通り議員も辞職すべきでしょう。
投稿: イライザ | 2018年3月20日 (火) 13時51分