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2017年8月 8日 (火)

被爆72周年原水爆禁止世界大会 第二分科会 ――大切な点だと思いますので補足です――

被爆72周年原水爆禁止世界大会 第二分科会

――大切な点だと思いますので補足です――

 

被爆72周年原水爆禁止世界大会のまとめで、今年は各分科会毎の報告が短かったような気がしているのですが、私が出席した第二分科会についての補足をしておきます。このブログでは何回かアップしている内容ですが、一回で読めるようにまとめておくことにも意味があるのかもしれませんので、私の発言部分を要約しておきます。「自分の喋ったことを大切だと思うのは誰でも同じ」という前提も踏まえてお読み下さい。

 

 核兵器禁止条約の成立は、歴史的出来事


 それにも比肩する「核廃絶に近付いた」出来事が31年前、1986年にあった。レイキャビックで開かれたレーガン・ゴルバチョフ会談で両首脳は、「全ての核兵器廃絶」に合意していた。

 

                   

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その合意は、軍産複合体や官僚組織の反対にあい、陽の目を見ることはなかったが、核廃絶の一歩手前まで行ったという事実は、核廃絶が不可能だという人たちへの反論になる。


 「絶対的」な力を持つと信じられているアメリカ大統領やソ連の書記長でも世界を動かすことができないことの証明になるのだか、では誰が世界を動かせるのか?


 それは、「世論」だ。

世界の核弾頭数を示すグラフを見ると、1986年をピークに右肩下がりの傾向がハッキリしている。1986年にレーガン・ゴルバチョフ会談が反映していたのは、世界の世論が核廃絶を望んでいたという事実で、その後の減少は世論の力の結果だ。

 

 

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 もう一つのグラフは、核実験数の推移を示している。1996年には包括的核実験禁止条約が締結された。しかし、アメリカ等の国々が批准していないためにまだ効力はない。にもかかわらず、1996年ころから、核実験数はほぼゼロになっている。これも世論の力だ。

 

 

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 この世論の力を背景に、核兵器禁止条約は作られた。市民運動ならびに志を同じくする国々が取った作戦は次のようなシナリオに沿って実行された。

(ア) 核兵器の非人道性をアピールし、人類の生存が最優先されるべきことをせかいに広める。そのための運動を市民の力で世界的に展開する。

(イ) その運動に公的・政治的力を与えるために、非核国が中心になって、国家のレベルでも世界の世論を盛り上げる。

(ウ) その結果として、核保有国が積極的に賛成しなくても核兵器(使用・保有・脅迫に用いること等)禁止条約締結の機運を盛り上げる。

(エ) 国連の組織の中に存在する、大国の拒否権が行使できないメカニズムを上手く生かして条約を作ってしまう。

(オ) 国際世論に押されて、核保有国も究極的には、消極的であっても条約に参加せざるを得なくなる。

 

 このシナリオ通り、国連総会の多数決による決定で、何の権限も持たない「国連公開作業部会」を作り、そこで市民社会の代表と志を同じくする国々が、核保有国や核依存国(その代表が日本)の妨害にもかかわらず、人類史的なレベルでの議論を行い、2017年に核兵器禁止条約締結のための多国間交渉をするという多数派を形成した。国連総会がそれを受けて、今年の3月から7月までの交渉を行い77日に条約の成文を採択した。


 核兵器禁止条約の持つ意味を何点か指摘しておく。

(ア) 前文で「被爆者」に言及したことは、被爆体験と被爆者のメッセージが世界的に共有されたことを意味する。

(イ) 条約によって核兵器が禁止されたことは、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者のメッセージの具現化である。それは、被爆者の「使命」である「核廃絶」実現への大きなステップでもある。

 「道徳」から「法律」へという高次元化の意味も大きい。それは、市民社会の活用出来る「語彙」を増やしたともいえる。つまり、核保有国や核依存国内で進められてきた核廃絶運動が新しい説得手段を手にしたことを意味する。そのロジックは、

1. 「核兵器は国際法違反」

2. 「法律違反を犯さないためには、条約を批准すれば良い」

3. 「国会議員に働きかけよう」

というもので、例えばアメリカ国内で、子どもたちが大人に働きかける上でも効果的な道具になる。

(ウ) 50か国の批准を必要とする「発効」は今回の採択に賛成した国が122あることから時間の問題だ。

(エ) 核保有国・依存国の批准も上記のロジックとその応用で時間の問題。

 

 核兵器禁止条約が成立した背景には、二つの大きな流れがある。それがあるからこそ、核保有国・依存国の参加も自信をもって予測できる。


 一つは、世界の非核兵器地帯条約。南半球は既に、全て非核兵器地帯だ。

 

 

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その詳細は次の通り。

1 南極条約 (1959) 2013年に50か国 

2 トラテロルコ条約 (1967)  中南米の全ての国33か国プラス核保有5か国批准 

3 ラロトンガ条約  (1986)  南太平洋の13か国・地域プラスロ、中、仏、英批准--米は署名のみ

4 バンコク条約 (1997) ASEAN諸国10か国――核兵器国は全て未署名 

5 ペリンダバ条約 (2009)  アフリカ諸国54か国中、28か国批准、仏、中、英が批准、米ロは署名のみ

6 セメイ条約 (2009)  中央アジア5か国  

7 モンゴル非核兵器地帯宣言(1992)と地位の確認(1998) 核保有5か国が、「モンゴルに協力する誓約の再確認」を発行(2000)

 

 もう一つは、市民運動の歴史だ。市民運動は世界の非暴力化のために大きな成果を残してきているが、1996年に国際司法裁判所が発した「勧告的意見」で、「一般的には」という制限が付いてはいても、核兵器の使用ならびに核兵器による脅迫は「国際法違反」という判断を引き出したのは、市民運動だと言っても良い。勧告的意見に至る歴史を振り返ってみると、次のようにまとめられる。


 まずは、南太平洋で核実験を繰り返していたフランスを国際司法裁判所に提訴して、核実験を止めさせたという実績がある。

(ア) 1966年から1974年までフランスはムルロア、ファンガタウファ環礁で44回の大気圏核実験を行う。

(イ) 民衆の不安と怒りが大圧力になる。

(ウ) 1973年1月、オーストラリア政府はフランスを「核実験は違法」の廉でICJに提訴すると警告

(エ) 1973年5月NZが、翌月オーストラリアもICJに提訴

(オ) 6月、ICJは、8対6で、NZAUSの立場を認める仲裁的意見を発表。

(カ) フランスは大気中核実験の中止を決定


 この成功を元に、「世界法廷プロジェクト」と呼ばれる市民運動が立ち上げられ、国際司法裁判所に勧告的意見を求める決議を国連総会ならびにWHOが採択し、1996年の結果に至る。

(ア) 1986年、元判事のハロルド・エバンズ提案

(イ) 1989年、IPB, IALANA, IPPNW, PGA等のNGOの間でWCPへの支持が高まる。

(ウ) 1993年5月14日、WHOが総会で、ICJに勧告的意見を求めるよう決議、9月に受理された

(エ) 1994年12月15日、国連総会はICJに勧告的意見を求める決議を採択、数日で受理される

 こうした運動を国家として受け止め、市民の声を代弁したのがニュージーランド。その中心にいたのがロンギ首相。彼の言葉を引用すると「もしニュージーランドのような国が核兵器に対してノーと言えないのならば、どのような国が核兵器に対してノーと言えるのか。もしニュージーランドのような国が核抑止論なくしては安全であり得ないとするならば、どのような国がそれなくして安全であり得るのか」

 日本政府は、ニュージーランド以上に被爆者ならびに市民の声を代弁すべきだ。特に「唯一の被爆国」という言葉を頻発しているのが日本政府であることの責任は取らなくてはならない。総理大臣ならびに関係大臣は

(ア) 自分が大臣であるときに核兵器禁止条約が採択されるなどということは、一世紀に一度あるかないかの出来事として、歴史的な意味を考え、

(イ) 唯一の被爆国日本の「大臣」としての責任を果すべき。

(ウ) それは、被爆者の悲願実現を最優先することであり、「ヒロシマ」そして「唯一の被爆国」としての世界的な位置付けを考えると、核兵器禁止条約を採択した世界の圧倒的多数の市民や国々への責任も果すべき、ということでもある。

(エ) そのためには、選挙民からの発信が一番効果的

 具体的なアイデアの一つとして、トランプ大統領を説得して、北東アジア非核地帯条約締結を推進すべきだ。

(ア) そのために、トランプ氏の選挙中の約束を再確認する。それは、

 北朝鮮と話をする

 「世界の警察官」は辞める

 日本と韓国に核武装を勧めない

(イ) これを元に、安倍総理大臣あるいは外務大臣がトランプ大統領に北朝鮮に乗り込んで次の合意を取り付けるようアドバイスすべし。

 アメリカが北朝鮮には核を使わないことを保証

 ロシアが日韓に対して核を使わないことを約束

 日本・韓国・北朝鮮は核兵器を持たない

 アメリカ・ロシア・中国はこれら三カ国に対して核兵器を使わないことを   保証

(ウ) これで、北東アジア非核地帯条約ができる。


 支持率が下がり、名誉回復の手段を模索しているトランプ・安倍組に提案する価値はある。

 

 

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コメント


核弾頭が減り、核実験はほぼゼロになったということ、
そしてそれがヒバクシヤそして市民の活動の世論によるということは大変素晴らしいことですが、
核実験が減ったというのは、コンピューターシミュレーションにより、改めて爆発させずとも充分な成果が得られるようになったということも大きいようですね。
英国はそのためのシミュレーターを購入したとのことですし、
http://businessnewsline.com/news/201707071753110000.html
中国は、日本は核実験なしでも、そうしたシミュレーションによりすぐにでも核開発ができ、米ロに次ぐ世界3位の核保有国になれる能力があると警戒しているそうです。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150812/1439363542
北朝鮮が核爆発実験を繰り返しているなんてことは、それだけ核に関する技術が遅れているという証明だともいえそうですね。
弱い犬がキャンキャン吠えるのと同じかもしれません。
そんなに目くじらたてるほどのことではないと思いますが、
でも噛まれたら痛いでしょうから、嫌ですね。

「シミュレーション」様

コメント有り難う御座いました。鶏と卵論争になるかもしれませんが、そもそも、実際には核実験をしないでシミュレーションで済まそうと考えた動機が、世論の批判をかわしたいからだった、という可能性もあるのかもしれません。

そして、地下核実験でもかなりのコストも掛りますので、コスト削減という全く別の理由もあるのかもしれません。

しかも、最近では、本当の地下実験なのか、シミュレーションなのかの区別が付かないようなシミュレーションもあるようですので、事はますます複雑です。

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