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2017年7月19日 (水)

核兵器禁止条約に至る道 ――世界法廷プロジェクト⑥ 市民によるロビー活動・(3)――

 

核兵器禁止条約に至る道

――世界法廷プロジェクト⑥ 市民によるロビー活動・(3)――

 

以下、『数学教室』連載”The Better Angels”20154月号から転載

 

前回まで説明してきた諸々の活動は立派な「ロビー活動」ですが、具体的な内容は千差万別です。どのような可能性があるのか、できるだけ具体的な活動が分るように、WPCのメンバーがどのようなことをして来たのかを整理した形で説明しましょう。

 

例えば、NGOのメンバーがかなりのレベルの専門家(A氏と呼びましょう)で、B国の国連代表部の新任の軍縮担当官で関心は持っていても軍縮については抽象レベルでの知識に留まっているC氏と話をしたとしましょう。これまでのWCPの活動を説明するだけではなく、フランスの核実験から始まる歴史や、これから国連内で予定されている活動等を説明することになるはずです。話の内容から表現すると「教育活動」と言っても良いでしょう。

 

一方、A氏とは様々な場で同席した経験があり自分自身も核廃絶のために努力してきたベテランの外交官D氏との会談は、これから他の国を交えてどのような会合が開かれるのか、その会合ではどの国がどんな主張をするのか、最終的にスケジュールはどうなり、「勧告的意見」実現のためにそのスケジュールが役立つのかどうか、そのように時間的制限の中でのこれからのD氏の動きはどうなるのか、といった内容になっても不思議ではありません。となると、これは、「戦略会議」だと言うと分り易いはずです。

 

それだけではありません。ある国Eが、核兵器についてはこれまで決まっていた方針に従って国連では活動してきたとして、世界情勢が変わってきたので、それに合わせて国連での動きを元にE国の方針を微調整すべきか、あるいはかなり大きく変えるべきなのかといった判断に迫られることもあります。そのE国の担当者F氏と日頃から情報の交換をしているA氏に、情勢判断の基礎になる最新情報の提供を依頼することも稀ではありません。その際に大切なのは、その情報が客観的なものであり、手に入り易い公開情報であることです。

 

しかし、核廃絶とは反対の立場をとる人たちも、自分たちに有利な情報を提供するはずです。その際に、矛盾する内容をどう解釈するのかまで、十分な勉強をしていないと、役に立ちません。善意があり熱意があり、知的にも体力的にも優れている人がボランティア活動に飛び込んだとしても、NGOとしての実質的な活動を続けるためには、人並み以上の勉強が必要なのです。

 

また、複数の国を対象にセミナーを開いたり、複数の国と共に文字通りの「作戦会議」を開いたりということも必要です。核廃絶には反対している国からの妨害活動について市民への情報提供をし、市民の力を借りて反論したり、マスコミを通してきちんとした対応をすることも時には必要です。

 

また逆に、エキスパートである外交官や学者、政治家等からから専門的な知識やそれぞれの立場の人たちが持っている深い知識についてのレクチャーを受けることになる場合もあります。

 

もう一つ、ロビー活動で大切なことがあります。これも人を説得する仕事をしたことのある人たちの間では常識なのですが、説得するのは、目の前にいる人だけではないのです。前に挙げた、C氏やF氏に戻れば、C氏やF氏は説得できたとしても、次にはC氏やF氏の上司や本国の担当者の説得をする必要があります。本国の大統領の説得が必要になることもあります。その説得をするのはC氏でありF氏です。その際に役立つ情報や説得のための材料を提供することで、何歩も前に進めるという点も大切です。

 

NGOの仕事の中には、活動費、有能なスタッフに助けて貰うための人件費を含む事務所の維持費等の資金を調達する仕事、そのための準備等も必要ですし、NGO内部での方針決定やそのための会議、多くの市民との間の連携の仕事、マスコミとの連携や広報等々、まだまだ多くの仕事があり、それらの総体が、「結果」として現れるのです。

 

こうした活動を何年か続け、多くの国の支持を取り付けた結果が、WHOや国連総会での、市民の声を反映した決議になりました。1993年5月14日、WHOが総会で、ICJに勧告的意見を求めるよう決議、9月にはICJに受理され、次いで、1994年12月15日には、国連総会はICJに勧告的意見を求める決議を採択、数日で受理されました。

 

WHOの付託した問題については、33か国が陳述書を提出、国連総会の付託した問題については、28か国が陳述書を提出、1995年10月30日から11月15日まで、22か国および、WHOICJの法廷で口頭陳述--歴史的多数の陳述だったのですが、日本からは、政府だけではなく、広島・長崎両市の市長が陳述したことには既に触れました。

 

日本ではあまり報道されなかった、NGOの努力とその具体的姿の一端、そして勧告的意見の持つ意味について、少しでもお伝えすることができたでしょうか。

 

改めてここでお伝えしたかったことを二つに整理しておきたいと思います。一つは、核兵器の廃絶にしろ、地雷の禁止にしろ、国際的な場で政治を動かす仕組みの中で、市民としてどのような活動ができるのかを少しは具体的に知って頂きたかったのです。国際政治を動かすことは可能ですし、成功した事例から、それがどのような活動の結果なのかを知って頂きたかったのです。もう一つは、このような地道な活動の結果として、例えば国際司法裁判所での感動的な陳述が行われたのですが、その舞台を作る仕事があって初めて、それが可能になったことにも注目して欲しいのです。特に若い人たちには、この舞台作りの場で活躍して欲しいと思いつつ、今回の報告を行った積りです。

 

最後に、時期的には2005年とWCP後の活動ですが、NPT再検討会議の際の「ロビー活動」の写真をアップしておきます。最初はオノ・ヨーコさんに銀の折り鶴の贈呈をしました。そして国連の本会議場での写真です。

 

           

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