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2016年12月 8日 (木)

安倍総理とオバマ大統領の真珠湾訪問 国家のリーダーには、もっと大きな「歴史」を創る責任があるのでは

安倍総理とオバマ大統領の真珠湾訪問

国家のリーダーには、もっと大きな「歴史」を創る責任があるのでは

 

1941128日の真珠湾攻撃の日から75年経とうとしている5日、今月の2627両日に安倍総理とオバマ大統領がともに真珠湾を訪問することが発表されました。日米間の戦争が始まった真珠湾攻撃と原爆投下がアメリカ社会の依って立つ価値観の二本柱であることは何度も指摘してきた通りですが、オバマ大統領が広島を訪問し、安倍総理大臣が真珠湾を訪問することで、日米間に横たわる、多くの場合深層意識に沈み込んでいる大きな溝にも、徐々に光が差し真の和解への道が開けることを期待しています。

             

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 戦争の犠牲者の慰霊を行うことは大切ですし、今回の訪問にも賛成です。しかし、60年近く日米の間に立ち位置を決めて身をもって両国の関係を体験してきた立場から見ると、残念でならないことが何点かあります。安倍総理、そして安倍政権に期待することそれ自体が「無い物ねだり」だとは思いますが、日本という国家そして世界の未来をデザインする責任を持つ若い世代の人たちには何かの参考になるかもしれませんので、書き残しておきたいと思いす。

 

最初に問題にしておきたいのは、物事の順序です。仮に喧嘩をした後、仲直りをしたいと思った時、常識としては先に殴った方が先に謝ります。オバマ大統領も安倍総理も「謝罪」はしないので、「謝る」は当て嵌まりませんが、それがいつかは実現することになるだろうと考えるとその先鞭を付けているのですから、精神としては同じ原理が適用できます。日本の総理大臣がなぜ先に真珠湾に行かなかったのでしょうか。

 

それをもう少し敷衍すると、安倍総理以前の総理大臣が真珠湾に行っても問題はなかったはずですし、もし何人かの総理大臣がの自発的に真珠湾を訪れていたとすれば、アメリカの大統領の広島訪問はもっと早くなったのではないでしょうか。何年、何十年も前から「総理大臣は真珠湾を訪問すべきだ」と私たち市民レベルでもっと大きな声を上げるべきだったのかもしれません。しかし、市民の声を無視し憲法の解釈改憲までする為政者の最低限の責任として、国家レベルの責任を自発的に果すことくらいは期待しても良いように思います。

 

さらに、我が国の中には総理大臣の真珠湾訪問についての反対論は存在しないに等しいことを考えると、もっと早い時期の真珠湾訪問は実現可能なことでした。そして、然るべき方法で日米戦争についての責任を表明し謝罪することも可能だったはずです。米国の議会で真珠湾に言及するのと、真珠湾その場で責任を明確にし謝罪することとの間には大きな差があります。

 

オバマ大統領も謝罪しなかったから安倍総理も謝罪しなくて良い、というバランス論もあるようですが、状況が全く違います。アメリカ社会には、「広島に行くこと自体謝罪だ」とまで主張する大きな反対論がありました。その反対論に潰されずに広島訪問を実現するためには「謝罪はしない」ことを明言して、いわば「小を捨てて大を取る」という現実的妥協が必要だったと考えて良いでしょう。

 

しかし、安倍総理の真珠湾訪問については、「訪問反対」の声もありませんし、「謝罪するな」あるいは「真珠湾に行くこと自体謝罪だ」と主張する人もいません。妥協が必要ではなかったのです。誰かに、あるいは何かに遠慮する必要のない状況で、「自発的」「積極的」に謝罪はしないという決定をした意味を私たちは考えなくてはなりません。

 

もう一点、「謝罪」について重大な視点が抜けていることを指摘しなくてはなりません。真珠湾攻撃の結果、被害を受けたのは、攻撃で直接に亡くなった米兵だけではないという点です。

 

真珠湾攻撃の結果、アメリカでは「宣戦布告もしない卑劣な奇襲攻撃」として、日本ならびに日本人全体を「卑劣」というイメージで捉えることが定着しました。それは、アメリカ国籍を持つ日系アメリカ市民に対しても同様でした。強制収容所に隔離され差別され生命財産まで奪われた悲劇も思い起こさなくてはなりません。彼ら/彼女らの犠牲に対しては、そんな非道なことを行ったアメリカ政府にも責任はありますが、そのアメリカ政府は1988年にこれらの日系米人に対する補償法を制定し、謝罪しています。しかし、その原因となった真珠湾攻撃そして日米戦を始めた日本政府にも当然、責任があります。そして謝罪することも必要です。

 

こうした犠牲を無視して、日米間の関係が良好なのは日米同盟があり、かつ総理である自分とオバマ大統領の功績であると言わんばかりの記者発表でしたが、「卑劣な日本」というイメージと闘い、それを覆して日本のそして日本人のイメージを改善したのは、多くの日系アメリカ市民であり、それに加えて例えば、かつては「安かろう悪かろう」の代名詞だった日本製品を質的に改良し、アメリカ市民と直に接することで良い関係を作り、電気製品や車等の工業製品を広めた人たちです。さらには、日本映画をはじめとする芸術、留学生や研究者、戦争花嫁等々、例示をして行けばキリがありませんので、あとは皆さんにお任せしますが、こうした多様で無限にも見える市民レベルでの交流こそ、現在の関係を作り上げてきたのです。

 

日本政府、特に外務省は、こうした大きな負の遺産を日米両国の多くの市民に負わせました。そのことにこそまず謝罪すべきですし、その後の市民の努力によって日米間の平和な関係が作られてきたことについても安倍総理そして日本政府は深甚なる感謝の意を表すべきだと思います。

 

政治家や官僚等の貢献があったことも無視すべきではありません。しかし、1980年に出された「原爆被爆者対策基本問題懇談会」の意見に述べられている政府の見解は、「およそ戦争というその国の存亡をかけての非常事態の下においては、国民がその生命・身体・財産等について、その犠牲を余儀なくされたとしても、」「全て国民がひとしく受忍しなければならない」という為政者の基本的なスタンスを示しています。それが大前提となって動いてきた日本の政治を考得ると、犠牲になった国民の立場こそ、もっともっと強調されなくてはならないことは明白だと思います。

 

  

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ネットのニュースサービス「BuzzFeed」によると「安倍首相の真珠湾訪問「現職初」ではなかった 各紙間違えたけど、実はあの人が」という見出しで、1951年9月12日(現地時間)に吉田茂首相が真珠湾を訪ねていることが報じられています。

私は、12月6日の朝日新聞のトップ記事の見出し「現職として初」を信用して今回の原稿は書きました。お詫びして修正します。修正の詳細とこの点からさらに見えてきた意味は、明日取り上げたいと思います。

BuzzFeedのURLは次の通りです。
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/first-time-ever?utm_term=.suD8zz2jlW#.vujX994rm0

今年も真珠湾攻撃記念日を迎え米各紙がこぞって Remember Pearl Harbor を特集する中、トランプ大統領の誕生に大きく貢献した保守派のジャーナリスト Bill O'Reilly の著書 Killing the Rising Sun が大ヒットしています。
 このタイトルにある the Rising Sun とは Japan のことで内容は真珠湾攻撃で始まり原爆投下で終わった戦争のことであり原爆投下は「多くの米兵と同時に日本の一般市民の命を救うための苦渋の選択であった」という従来からの米国の姿勢を貫いています。
 その主張はともかく「長崎の次は東京であった」や歴代大統領のその後の考え方などなかなか良く調べて書かれた内容であり今なお半数近い米国民に支持されている考え方として頭に入れておく必要はあると思いました。

投稿: Japanese | 2016年12月 8日 (木) 12時54分 

「Japanese」様

コメント有り難う御座いました。我々の世代も、歴史学者やジャーナリストの追う「パール・ハーバー」そして「原爆投下」をフォローしてきました。時代的な背景もあり、それなりの理解ができたと思い込んでしまっていることに改めて気付かされました。

御指摘のように、「今」という時代からの歴史の検証の大切さを、今の時代を生きる若い世代の皆さんと共有しなくてはならないと思いました。有難う御座います。

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ネットのニュースサービス「BuzzFeed」によると「安倍首相の真珠湾訪問「現職初」ではなかった 各紙間違えたけど、実はあの人が」という見出しで、1951年9月12日(現地時間)に吉田茂首相が真珠湾を訪ねていることが報じられています。

私は、12月6日の朝日新聞のトップ記事の見出し「現職として初」を信用して今回の原稿は書きました。お詫びして修正します。修正の詳細とこの点からさらに見えてきた意味は、明日取り上げたいと思います。

BuzzFeedのURLは次の通りです。
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/first-time-ever?utm_term=.suD8zz2jlW#.vujX994rm0

 今年も真珠湾攻撃記念日を迎え米各紙がこぞって Remember Pearl Harbor を特集する中、トランプ大統領の誕生に大きく貢献した保守派のジャーナリスト Bill O'Reilly の著書 Killing the Rising Sun が大ヒットしています。
 このタイトルにある the Rising Sun とは Japan のことで内容は真珠湾攻撃で始まり原爆投下で終わった戦争のことであり原爆投下は「多くの米兵と同時に日本の一般市民の命を救うための苦渋の選択であった」という従来からの米国の姿勢を貫いています。
 その主張はともかく「長崎の次は東京であった」や歴代大統領のその後の考え方などなかなか良く調べて書かれた内容であり今なお半数近い米国民に支持されている考え方として頭に入れておく必要はあると思いました。

「Japanese」様

コメント有り難う御座いました。我々の世代も、歴史学者やジャーナリストの追う「パール・ハーバー」そして「原爆投下」をフォローしてきました。時代的な背景もあり、それなりの理解ができたと思い込んでしまっていることに改めて気付かされました。

御指摘のように、「今」という時代からの歴史の検証の大切さを、今の時代を生きる若い世代の皆さんと共有しなくてはならないと思いました。有難う御座います。

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