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2016年12月23日 (金)

『1984年』を読もう


1984年』を読もう

 

[問題]  最初に問題です。「数」という言葉も「数学」という単語も使わずに、「数学は難しい」あるいは「数学は難しいか」というタイトルで、400字以内で説明して下さい。時間の制限はありませんが、仮に10分としておきましょう。

 

さて、この問題、難しかったでしょう。でも、何とか解答できた方がいらっしゃれば、「コメント」として結果をお送り下さい。先着5名の方に「お歳暮」代りの粗品を差し上げます。難しかった理由の一つ、いや恐らく最大のものは、対象としている物の名称が使えないからです。もう少し一般化すると、名前の無い物や事柄について批判したり褒めたり、そもそも話題にすることさえ不可能に近いということです。

            

Photo

                 

 最近とみに悪くなっている政治には怒りを感じていますが、それに対する批判があまりパッとしない理由の一つはこの辺にあるのではないでしょうか。韓国ほどではなくても、もっとメリハリのある批判が増えて、しっかりとした世論が政治に影響力を持って欲しいと願うのは私だけではないと思います。そのためには、政治の「現状」を的確に示す言葉が必要ですし、それを改善するためには何が必要なのか、目標とする姿はどのようなものなのかを記述する言葉も必要です。

 

最近の「ヒット」は「息を吐くように嘘をつく」でしょうか。129日には「タウンNEWS ヒロシマ平和大通り」でも大きく取り上げられていましたし、「気まぐれ辛口」さんも取り上げていたトピックです。にもかかわらず、そして、その嘘の中身も、酷いものなのですが、ことによると余りにも「堂々と」し過ぎている「嘘」であるために、私たちが「嘘だ」と断定してもその重みが伝わらないような社会になってしまっているようにさえ思います。

 

工場長さんの指摘している「自民党はTPPに反対」と辛口さんが取り上げている「ええっ~  これが不時着?や「私の記憶には定かではない」もあります。他にもまだまだ沢山あります。例えば、心太でも作るように右から左へと「強行採決」をし続けている自民党の阿部総裁が「1955年の結党以来、強行採決をしようとしたことはない」と国権の最高機関である国会で発言したり、カジノを総合型リゾート、海外派兵は国際平和支援だったりと限りがありません。これほど酷い嘘や誤魔化しに対して、世間一般で何故もっと厳しい批判が生まれないのでしょうか。

 

一つの可能性は、かつての「大本営発表」を唯々諾々と受け入れていた私たちの親や祖父母世代のDNAの一部がどこかに残っていて、それが芽を出しているということかもしれません。「撤退」を「転進」と呼び、「全滅」は「玉砕」と美化する報道、戦績の水増し等、官僚体制の体質なのか、軍隊の宿命なのか、政治の本質と関わりがあるのか、その全てなのかも考えなくてはなりませんが、かつての過ちを正視した上で「過ちを繰り返さない」決意とそのための具体策が大事なのだと思います。

 

「正視」する上で役立つのが、こうした状況を一つのストーリーとして理解することです。歴史も壮大なストーリーだなのですが、その全てが有機的に関連していますので、全貌を一掴みに理解することは難しい場合もあります。それに対して小説の場合は、読む楽しさとともに、コンパクトにまとめられた内容は、より大きな社会の全体像の特別な一面を切り取って、真実のポイントを分り易く描き出してくれます。

 

そこで、現在の政治状況を理解するために、年末から年始にかけて皆さんにお勧めするのがジョージ・オーウェルの『1984年』です。

 

1984

 

1948年に書かれたこの小説では、1950年に起きた核戦争により、世界は3分割され、物語はその内の一つ、オセアニアの都市ロンドンを中心に繰り広げられます。「ビッグ・ブラザー」と呼ばれる独裁者の下、「党」による一党支配が行われている国です。

 

その党のモットーは三つのスローガンが表しています。

 

 戦争は平和である (WAR IS PEACE)

 自由は屈従である (FREEDOM IS SLAVERY)

 無知は力である (IGNORANCE IS STRENGTH)

 

(つまり、平和というのは戦争をしていることだ。自由とは奴隷になることだ。そして無知であることが力を持つことなのだ、という意味です。知らず考えず疑問も持たず、言われた通りに権力に隷属し戦争も拒否しないでいれば、それが幸せなのですよ、ということでしょう。)

 

オセアニアは4つの官庁が国全体を統治しています。戦争継続を担当する平和省、欠乏状態にある食料の配給等を担当する豊富省、歴史の改竄や情報の管理を行い、新聞等のメディアも管理して常に党の方針が正しいと思わせるような環境を作る真理省、そして個人の思想統制、監視や逮捕、拷問による思想の矯正を行い、反党行為をした人間を党の方針を信じるまで洗脳した後、処刑する任務も持つ愛情省です。

 

また言語は「ニュースピーク」と呼ばれる新しい言語に作り直され、語彙を減らすことと言語構造を簡略化することが主目的になっています。

 

物語は、39歳の真理省の役人、ウィンストン・スミスが「憎悪週間」中に出会った26歳の同僚のジュリアと恋におちる。違法とされる逢瀬を続け、その後、禁書とされる文書を手にして、二人ともかねてから疑問に思っていたオセアニアの裏側も知ることになる。しかし、密告によって二人は捕えられ、拷問により「心から」党の方針を信じるようになり、処刑される日を待つ。

 

これだけではあまりにも悲惨なのですが、小説の後に「追記」があります。その後オセアニアの辿った歴史を未来から見ての記述ですが、こうした独裁制度が終焉を告げたことが分ります。それはどのように達成されたのかは、私たちに与えられた宿題です。

 

さて、この小説を読むことで好いことが少なくとも四つあります。

 

 小説として、20世紀のベスト100に入るくらいの評価を受けている作品ですので、楽しめます。

 二つ目に、今の日本の状況をどう表現したら良いのかの具体例がたくさん盛り込まれていますので、それを使って自分の思いを言語化できます。そんじょそこらのコメンテーターや評論家には到底真似のできない発言ができるようになること請け合いです。

 小説ですので、状況が単純化されています。その枠組みの中で、このような政治を変えるためのヒントを得ることが可能です。

 そして、この小説を他の人に勧め、また政治・社会状況についての自らの感想も添えることで、効果的に世論を広げることができます。

 

2017年、政治をそして社会を変えるために、『1984年』から始めましょう。まず自分の意識改革ができれば、目標は目の前だ、と言っても過言ではありません。

 

[お読みになった感想を、「コメント」としてお寄せ下さい。締め切りは115日ですが、こちらも先着5名の方にささやかな「お年玉」を差し上げます。]

 

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[数学は難しいか]

教科ということで言うと、覚えることが最も少ない科目です。つまり、これは考えることが最も多い科目であるということです。それが、苦手な人にとっては難しいと思える理由であり、得意な人にとっては面白いと思える理由ではないでしょうか。

記憶力より思考力が必要とされるため、圧倒的に記憶力が重視される受験勉強が人生を左右されるような社会では苦手な人が多いのかも知れません。

受験を最大の目的とする学習では教えられた通りに覚えることが一番であり、考える力は二の次になるように思います。かつて秋葉市長のもとで創設された広島型教育の新しい教科のようなものが全国的にも必要なのだと思います。

また、理解を確実に積み上げていかないと先に進めないことも難しいと感じる原因かも知れません。前の段階で理解が不十分なまま次の段階に行くと「さっぱり分からない」ということになり、各段階での理解不足、習熟不足が後で致命的になります。

「工場長」様

「数学は難しいか」について、早速の御投稿有り難う御座います。「数」や「数学」という言葉を使わずに、という条件を付けましたが、にもかかわらず分り易い論考で「難しかったでしょう」と上から目線で決め付けてしまったこと、反省しています。しかも長さは396字、大学入試の小論文だとしたら間違いなく、ダントツの「合格」です。

お歳暮代りの粗品は近い内にお届けします。

改めて、有難う御座いました。

「数学は難しいか」

それは形や順序や継続性を推理するからだと思います。
推理小説には最後に解答がありますが、自分の推理は自分で証明しなければいけないのです。
ピタゴラスの定理はトイレのタイルを見て発見されたと聞いたことがありますが、自分でもトイレのタイルでやってみると、ピタゴラスの定理を見つけることができます。でも見つけたとしてもそれが真実であると証明するのは簡単ではないのです。正しいということはできても、否定できない証明は難しいのです。

権力者やマスコミは、かっては賄賂を「裏献金」と言い、今は、差別・脅迫・窃盗・強奪を「いじめ」としています。
批判されにくい言葉を使うことで、意味でなく表現で嘘がつきやすくなっているように思います。

「やんじ」様

「数学は難しいか」について、早速の御投稿有り難う御座います。ピタゴラスの定理の発見秘話からの論考と政治を関係付ける視点は深みがありますね。考えさせられました。

お歳暮代りの粗品は近い内にお届けしたいと思いますので、送り先を「コメント」としてお知らせ頂けますか。公表はしませんので。

改めて、有難う御座いました。

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[数学は難しいか]

教科ということで言うと、覚えることが最も少ない科目です。つまり、これは考えることが最も多い科目であるということです。それが、苦手な人にとっては難しいと思える理由であり、得意な人にとっては面白いと思える理由ではないでしょうか。

記憶力より思考力が必要とされるため、圧倒的に記憶力が重視される受験勉強が人生を左右されるような社会では苦手な人が多いのかも知れません。

受験を最大の目的とする学習では教えられた通りに覚えることが一番であり、考える力は二の次になるように思います。かつて秋葉市長のもとで創設された広島型教育の新しい教科のようなものが全国的にも必要なのだと思います。

また、理解を確実に積み上げていかないと先に進めないことも難しいと感じる原因かも知れません。前の段階で理解が不十分なまま次の段階に行くと「さっぱり分からない」ということになり、各段階での理解不足、習熟不足が後で致命的になります。

「工場長」様

「数学は難しいか」について、早速の御投稿有り難う御座います。「数」や「数学」という言葉を使わずに、という条件を付けましたが、にもかかわらず分り易い論考で「難しかったでしょう」と上から目線で決め付けてしまったこと、反省しています。しかも長さは396時、大学入試の小論文だとしたら間違いなく、ダントツの「合格」です。

お歳暮代りの粗品は近い内にお届けします。

改めて、有難う御座いました。

「数学は難しいか」

それは形や順序や継続性を推理するからだと思います。
推理小説には最後に解答がありますが、自分の推理は自分で証明しなければいけないのです。
ピタゴラスの定理はトイレのタイルを見て発見されたと聞いたことがありますが、自分でもトイレのタイルでやってみると、ピタゴラスの定理を見つけることができます。でも見つけたとしてもそれが真実であると証明するのは簡単ではないのです。正しいということはできても、否定できない証明は難しいのです。

権力者やマスコミは、かっては賄賂を「裏献金」と言い、今は、差別・脅迫・窃盗・強奪を「いじめ」としています。
批判されにくい言葉を使うことで、意味でなく表現で嘘がつきやすくなっているように思います。

「やんじ」様

「数学は難しいか」について、早速の御投稿有り難う御座います。ピタゴラスの定理の発見秘話からの論考と政治を関係付ける視点は深みがありますね。考えさせられました。

お歳暮代りの粗品は近い内にお届けしたいと思いますので、送り先を「コメント」としてお知らせ頂けますか。公表はしませんので。

改めて、有難う御座いました。

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