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2016年12月21日 (水)

『ある家族』 12年前の『文芸ひろしま』掲載作品です


『ある家族』

12年前の『文芸ひろしま』掲載作品です

 

DVD『風よ吹け!未来はここに!!』の上映会と講演会で、中島環君の御家族のお話を伺いながら、12年前、たまたま目にしたエッセイが縁で胸に刻まれることになったもう一つの家族の記憶が蘇りました。広島平和文化センターが公募し、その中から選ばれた作品が掲載される文芸誌『文芸ひろしま』のノンフィクション部門で2位になった作品です。実はその当時、「春風夏雨」と名付けたメルマガで紹介したのですが、再度皆さんに御披露させて頂きます。佐々木家の皆さんがお元気でいらっしゃることを祈りつつ――。

 

           

Photo_2

                 

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メルマガ「春風夏雨」原稿――第23

 

200442

秋葉忠利

 

 

『ある家族』

 

「春風夏雨」も23回目になりました。書き始めてからほぼ一年経った訳ですが、ひろしま市政のあり方や今後の方針等について理解する上で少しはお役に立ったでしょうか。今後とも、役に立つだけではなく、分り易く楽しいコラムを目指したいと思います。

 

さて全くの偶然なのですが、『文芸ひろしま』も今年3月に、堂々第23号を発行しました。財団法人広島市文化財団が、詩・短歌・俳句・川柳・小説・随筆・ノンフィクション・シナリオ・児童文学の9部門の作品を市民から公募し、入選作を一年に一度発表する場として発行し続けてきた文芸誌です。(次回からは二年に一度の発行)

 

毎年、感動的な作品に出会えることを楽しみにしてきましたが、今年も皆さんに是非読んで頂きたい作品がいくつもありました。全部紹介できると良いのですが、スペースがありませんし、それよりは『文芸ひろしま』そのものを手に取って頂きたいと思いますので、ノンフィクション部門で二席になった『ある家族』一つに絞って紹介したいと思います。

 

作者は佐々木志穂美さん。その内容は、選者の言葉を借りると「障害児三人を抱えた、肝っ玉ママと呼べばいいのか、もっぱら明るい」お母さんの「ほんのささやかな独り言」(この部分は佐々木さんの言葉)です。

 

私がこの作品を皆さんに勧める第一の理由は、文章内容共に新たな発見があり、読み始めたら最後まで止められないほどの引力があるからです。言文一致という言葉がありますが、話し言葉がそのまま文章になっているだけではなく、言葉にはならないけれども作者の頭の中に浮かんでくるイメージや思いがそのまま文章になっている面白さが、私には魅力的でした。その文章が右に行ったり左に行ったりしながらの臨場感溢れる記録なのですが、長男の洋平君が生まれてから14年間の佐々木家、特にお母さんの思いや成長振り、佐々木家の周囲の人々とのやり取りが、鮮やかに描かれています。

 

第二番目の理由は、その14年間を描くに当って、事実をもって語らしめている点です。例えば、「水分やどろどろにつぶした食事をひとさじずつ口に運ぶ作業に、長い日で一日八時間だっこしていた。知識もなく、どう育てたらいいのかわからなかったのだ。」という箇所があります。愚痴でも恨みやつらみではありません。淡々と事実があるのみなのですが、その一秒一秒の意味を考えずにはいられない一節です。

 

また、自分自身の心の動きを表現する際にも、語り手である作者はその対象になる自分自身を客観的に捉え、いわば第三者として突き放した上で、事実としての心の動きを追っています。演歌に象徴される自己憐憫の世界にはならないのです。とは言え、作者の視点は一行毎と言って良いほど変わります。いや、一つの言葉が二つの視点からの意味を伝えている箇所さえあるのです。しかし、どちらの場合でも、作者つまり観察者としての立場と観察される対象としての立場が上手く溶け合い、私には佐々木家のエネルギー源の一つになっているように思えました。少し大袈裟に表現すれば、人間の持つ可能性を信じられる箇所でもあるのですが、別の読み方も当然あるはずです。

 

第三の理由は、素直さです。外国の実話を元にしたテレビドラマの中で、ダウン症児の母が語ったという言葉を佐々木さんは引用しています。

 

「卒業旅行で、自分の乗った飛行機だけオランダに着いてしまった。みんなは、今、イタリアで何をしているだろう、そればかり考えて、今、自分の目の前にひろがっているチューリップ畑や風車のすばらしい風景を私は見てなかった。」

 

「そのとおりだと思った。――中略-―だけど、今思えば、当時はとてもそうはできてなかった。」と佐々木さんは書いています。しかし、現実を受け入れ、喜怒哀楽の全てを素直に受け止めひたむきに生きる素質が、元々、佐々木さんにはあったのか、あるいは14年という時間を経て身に付いたのか、恐らくその両方だと私は思いますが、『ある家族』を書いている佐々木さんはとても素直です。『ある家族』の清々しさは、ここに由来しています。

 

欲張っているかも知れませんが、次も期待しています。例えば、夫のヒロシさんならこの家族をどう描くのか、違った視点からの『ある家族』を読めたら素晴らしいと思っています。

 

以上、個人としての感想ですが、保育所や学校等の役割や、そこで働く職員、そして保護者等との関係、連携等についても改めて考えさせられました。『ある家族』だけでなく『文芸ひろしま』からも幾つかのヒントを得ることができました。この点については次回までにまとめて見たいと思います。

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 『文芸ひろしま』では、今も作品の公募を続けています。詳細は、こちらのサイトを御覧下さい。

 

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