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2016年11月28日 (月)

アメリカ社会は変ったのか(4) 「世界の警察官」は止める


アメリカ社会は変ったのか(4)

「世界の警察官」は止める

 

前回は、「僅差」でアメリカは良くなっていること、またそう考えている根拠をいくつか挙げておきました。「良くなっている」と表現しましたが、それは「力の支配」から「法の支配」へと基本的な価値観がシフトしていることを指すと言っても良いように思います。それも社会全体から見ると「僅差」でそんな状況になっていると言った方が正確かもしれません。前回のリストの6項目について説明することで、分って頂けると良いのですが――。

 

 総得票数では、クリントン勝利。

改めて指摘するまでもなく、民意を測るのであれば、総得票数が一番忠実に民意を反映しています。いやそれ以前の問題として、「民意」とは「国民の過半数の意見や考えていること」と定義すべきなのだと思います。さて、クリントン候補とトランプ候補とを比較して、クリントン候補の方が、力に依存しない立場、少なくとも、ヘイト・クライムやヘイト・スピーチを誘発する立場ではなかったことは認めざるを得ないと思います。しかし、それぞれ6,000万程の得票数中の200万票くらいの差ですから、「僅差」です。

              

Hillary_clinton_official_secretary_

               

 アル・ゴアも総得票数では勝っている。

これが2000年の選挙でした。しかし、その後の8年間はブッシュ大統領の時代になりました。アメリカの政治は保守一色に染められてしまったとも言えるほどだったのですが、その結果としてとまでは言えなくても、2008年には黒人のしかもリベラルなオバマ大統領が誕生したのですから、社会全体のリベラル傾向はブッシュ時代にも生き残っていたと考えて良いように思います。そして今回の選挙ではそれが反転した形になって現れました。つまり、アメリカ社会の中の保守的な勢力や差別を助長する価値観もオバマ時代を通じて生きていたのです。では、オバマ政権はどのような役割を果したのでしょうか。

 

 議会に阻まれて、100パーセントの成果は残せなかったが、オバマ政権の遺産は長く残る。

一つだけ、「オバマケア」と呼ばれる医療保険制度の改革を挙げておきましょう。先進国の中で、アメリカやカナダは国民皆保険制度のない国です。自前で健康保険に入るのですが、その結果、貧しい人々は経済的な理由で適切な医療を受けられないという現実がありました。これに対する救済措置として、高齢者のためのメディケア、低所得者のためのメディケイドという制度もあるのですが、複雑かつ民間の保険会社に依存する必要等があり、上手く機能していません。

 

「オバマケア」は、日本のような、国による保険ではありませんが、健康保険への加入率を増やして、低所得層にも医療を提供しようという画期的なプログラムです。それがようやく軌道に乗ったのが2014年ですから、まだまだ全ての人が恩恵を受けている訳ではありません。その効果は長期的に見て初めて理解されてくるのだと思います。しかし、人間の命より企業の利益を優先し続けてきた社会が、限られた形ではあっても、人間の命優先に舵を切り替えた事実は、社会全体を変えるためのエネルギーになり得ると思います。

 

 中でも、「原爆投下は正しかった」と考える人たちの数が減っていることは、その柱の一つ。

この点については「核先制不使用宣言(オバマ効果その3)でも触れていますが、アメリカが「世界の警察官」を自任して、「力の支配」構造のトップとして君臨してきた背景には、「パール・ハーバー」と「原爆投下」という、「勧善懲悪」のモデルがあります。

http://kokoro2016.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/3-b0b5.html

 

多くのアメリカ人にとっては「絶対零度」的な悪の象徴である真珠湾攻撃に対して、その下手人である日本を原爆によって懲らしめたことで、「原爆投下は正しかった」が「善なるアメリカ」の象徴になっていました。しかし、「原爆投下」を正当化する声が過半数を割ったことは、アメリカの世界観が大きく変わることを意味します。

 

その結果として、「世界の警察官」という立場の無謬性にも疑問符が付き、「力の支配」という原理で世界を考える傾向も変ってくるはずです。「力の支配」の信奉者であるトランプ氏が「世界の警察官」は止めると主張している理由は、経済的な負担ということが大きいのかもしれませんが、全く正反対の立場から、同一の解決策が出てくることも不思議です。それを皮肉だと考えるのか、より大きな真実が顕在化したと考えるのか分れるところですが、この方向そのものの正しさは疑う余地がありません。ですから次の結論になります。

 

 その結果として、「世界の警察官」は止めると考える方向は正しい。

第二次世界大戦後、アメリカが世界に君臨してきた枠組みとも言える考え方が崩れるのですから、これほど大きな変化はないと言うべきでしょう。しかし、トランプ氏の世界観は、今まで以上に「力の支配」を強調しているように見えます。折角のパラダイム転換がまた元に戻る可能性はないのでしょうか。オバマ大統領に象徴される世界像とトランプ流のそれとはどう違うのでしょうか。それが次の項目のテーマですが、長くなりましたので、次回に。

 

 さらにこれは人類史的な傾向の一部その傾向はSteven Pinker著の”The Better Angels of Our Nature” に詳述されている

 

 

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