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2016年11月26日 (土)

アメリカ社会は変ったのか(2) マイケル・ムーア氏の観察よりは「保守的」なのかもしれません


アメリカ社会は変ったのか(2)

マイケル・ムーア氏の観察よりは「保守的」なのかもしれません

 

前回は、「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」の導入部で、マイケル・ムーア氏が「文化戦争」で左派が勝ったと断定できる根拠として挙げている7項目の内五つを、世論調査の結果等を元に再検証しました。

 

7項目は次の通りです。

 ゲイやレスビアンの結婚は合法

 男女同一賃金

 人工中絶は合法

 より強力な環境保護法が必要

 銃規制はもっと厳しく

 マリワナを合法化

 社会主義者が22州で勝利

 ①「ゲイやレスビアンの結婚は合法」については、アメリカの50州全てで合法化され、同性間の結婚を合法化することに賛成する人が60パーセント、反対が37パーセントというギャラップ社の世論調査結果があります。長期的なトレンドを見ると、賛成の増え方は社会全般の理解が進んだ結果だと結論付けて良いように思えます。ムーア氏の観察と一致しています。


次に、②「男女同一賃金」ですが、圧倒的多数の人が、男女同一賃金を支持しています。この点についてもムーア氏の観察の正確であることが分ります。

 

三つめの③「人工中絶は合法」ですが、80パーセント近くの人が、中絶は合法だという考えの持ち主ですが、自分が中絶賛成派なのか、あるいは中絶反対派なのか、という問に対しては五分五分の回答になっています。長期的にもこの傾向は変わっていません。

 

具体的に中絶を合法化するための法律案が審議されている場合、その法案の中身によっては多くの人が支持する可能性は高いものの、法律案を出すのは選挙で選ばれた議員です。(日本の場合は地方議会でも、行政の提案がほとんどですが、アメリカは違います。) その議員を選ぶ際には、「中絶賛成」「中絶反対」という大きな括りでの選択になるでしょうから、事実上社会がどう動くのかを一つの指標にした場合には、「左派の勝ち」という結論にならない可能性もあるということになります。ムーア氏の観察は、一応「△」にしておきましょう。

 

次は④「より強力な環境保護法が必要」ですが、かつての7119に比べると、かなり後退して、5637になっています。ここ56年は環境保護派が巻き返している感があるものの、社会全体が内向きになってもその傾向が続くのかは心配になります。これも「△」ということにしておきましょう。

 

最後に⑤「銃規制はもっと厳しく」ですが、ピュー・リサーチ・センターの調査結果についての訂正をしておきます。初めの原稿では、グラフの解釈が逆でした。正しくは、2000年には銃規制派が3分の2あったのが、最近では過半数を割り、銃規制反対派が過半数を占めるまでに勢いを増しているのです。この点に関する限りムーア氏の観察は、ちょっぴり不正確なのではないかと思います。一応「×」です。

 

もう一つ、前回最後に掲げたグラフを再掲します。アメリカ社会を一つのグラフで表すとしたら、このグラフになる可能性も十分ある、所得格差を示すグラフです。赤は、高額所得のトップ10パーセントの人たちの所得、青は、大半の人が属するボトム90パーセントの人たちの所得です。

                  

Photo

           

 これと連動して考えたいのが、アメリカの大統領は共和党、民主党どちらの政党の政策を実現してきたかという点です。1980年のレーガン氏以降の大統領で見てみましょう。それは、アメリカ社会で貧富の格差が極端に大きくなった時期と重なっています。

 

Photo_2

民主党のビル・クリントン氏とバラック・オバマ氏の二人が大統領になっていますので、32という割合で共和党と民主党の政策が交互にアメリカを動かしてきたと考えるのが常識なのかもしれません。

 

しかし、実際はそうではないという考え方もあります。例えば、クリントン家とブッシュ家とは大変仲が良く、家族ぐるみの付き合いがあるそうですし、クリントン政権の政策のかなりの部分は共和党政権そのまま、あるいはそれ以上に問題があったことも指摘されています。それは例えば、アメリカの歴史学者ハワード・ジン教授の『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈下〉1901~2006』などに詳しく述べられています。

 

多くの事例から一つを挙げておくと、「Antiterrorism and Effective Death Penalty Act of 1996(反テロリズムと効果的死刑法)では、合法的な移民でも、過去に犯罪を一度でも犯していれば、それがかなり昔の犯罪でも、またアメリカ人と結婚して子どもたちもアメリカの市民である場合でも国外追放できる、という内容が盛り込まれているとジン氏は述べています。これはトランプ氏の非合法移民を国外追放するという考え方以上に、「移民」に取っては厳しい内容です。

 

同様に、オバマ政権でも議会は共和党にコントロールされていたのですから、大統領の意向がどうであろうと、多くの場合に共和党の政策が実現されてしまいました。でも、その責任は大統領にあるという主張も行われてきました。

 

どちらが鶏でどちらが卵なのかは良く分りませんが、アメリカ社会の中の不満は共和党の政策や議会そして行政のコントロールによって起きたとも考えらます。エスタブリッシュメントの基本的な考え方が30年以上、共和党に牛耳られていたのであれば、世論に反映される社会の価値観が保守的になっても不思議ではありません。あるいは社会の保守化が、このようなエスタブリシュッメントを実現させてきたのかもしれません。

 

このように長期的な保守化の傾向の行き着く先として、トランプ政権の誕生につながった、と見ることも可能です。しかし、その他の解釈も成り立つのは社会が複雑だからなのか、分析力が弱いのか、次回をお読み頂ければ幸いです。

 

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