「独立」 = 「平和」
「独立」 = 「平和」
「国連非自治地域リスト」、つまり―――いまだに植民地であり、できるだけ早く独立すべきである、またはその代替的な措置で自決権が行使できるようにすべきだと国連が認めている地域のリスト―――には2013年にフランス領ポリネシアが復帰しましたが、現在合計17の地域が載せられています。例えば、バミューダ諸島とか、バージン諸島、グアム、フォークランド諸島等、良く知られた地域もたくさんあります。そのほとんどは、イギリス、アメリカそしてフランスの「海外領土」です。これらの地域が独立あるいは自治権の拡大を目指しているのは勿論ですし、1960年12月14日に採択された植民地独立付与宣言では、「単独での主権独立国家」「独立国家との自由な連合」「独立国家への統合」の内の一つを実現するよう、統治国にも強く働きかけています。また、このリストには載っていなくても、世界には独立を求めている地域が多くあります。
まず、リストに載っている地域ですが、皆さんも良く御存知のグアムがあります。私も行ったことがありますし、観光のために多くの日本人が訪れています。『琉球新報』の電子版(2016年4月2日)によると、今年、グアムで独立を問う住民投票が行われます。
米国グアム準州のグアム政府脱植民地化委員会は1日、11月にもグアムの独立などの是非を問う住民投票を実施することを決めた。同委員長のエディ・バザ・カルボ知事が公表した。グアム住民は米大統領選に投票できず、米連邦下院の代表者に議決投票権がないなど、民主主義の制度が制限された「米国の属領」的地位に、住民の不満が募っていた。グアムの米軍基地拡大計画も、グアム住民の意思に関係なく、米政府、米連邦議会が決定してきたとして、先住民のチャモロ人らから強い反発がある。
グアムには在沖米海兵隊約4千人の移転が決まっており、日米両政府は2013年10月に移転を20年代前半に開始することで合意している。カルボ知事も基本的には移転に賛同している。
投票する際の選択肢は「完全独立」「自由連合国」「米国の州」の三つ。「自由連合国」は、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島のように、内政権、外交権を持っているが、軍事権は米国が持つ国のことで、国連には加盟できる。
住民投票は、国連憲章で自己決定の原則を宣言した第1条(2)と第55条を根拠に実施する。
このように、植民地の独立には必ず「軍隊」をどうするのかが関わってきますが、それは植民地そのものが軍事力によって抑えられた結果できたことを考えると、本質的な問題であることはお分かり頂けると思います。
しかし、植民地ではなくても、「独立運動」には軍事と外交が関わっていることはスコットランドの例がはっきり示しています。
2011年にスコットランド議会の議場で開かれたNGO主催の核廃絶のための国際会議
2014年9月18日にイギリスから独立するか否かを決める住民投票が行われ、僅差で独立派が負けたのですが、スコットランド独立の目的についてはほとんど報道されませんでした。
イギリスの正式名称は「United Kingdom of Great Britain and Northern
Ireland」で、「連合王国」と呼ばれることもあり、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの王国から成り立っています。長いので、略して「イギリス」を使いましょう。中でもウェールズやスコットランドはかなりの自治権を持っています。1999年にはスコットランドは、自前の議会を持つまでになり、首相を選出しています。
自治権の幅は広く、内政のほとんどがそれに含まれますが、欠けているのは、予算・外交・防衛です。独立するとこの三つもスコットランドが持てることになりますが、予算の分野では、それなりに「連合王国」からの配分がありますので、相対的な改善が期待されています。対して外交や防衛の面では、ドラスティックな変化が起こります。
スコットランドが独立すると、まず、軍事同盟であるNATOからは離脱することが公約として掲げられています。そして、ファスレーンという基地にある核兵器を廃絶することも公約です。実はイギリスの核兵器はここにしかありませんので、スコットランドが独立すると、イギリスは「非核保有国」になってしまいます。そしてスコットランドはEUには残ります。
つまり、スコットランドの独立運動の目的は、核廃絶であり、非軍事国家になることだと言っても過言ではありません。今年6月23日の国民投票でイギリスがEU離脱することになりましたが、スコットランドはEUに残りたいのですから、前提条件が変わった今、再度住民投票が行われることになるでしょう。その結果、今度は独立派が勝利するという予測が行われています。ですから、イギリスのEU離脱は、核廃絶という視点から考えると素晴らしい可能性を開いているのです。
限られたスペースの中で、単純化した議論しかできませんが、こうしてタヒチ、グアム、スコットランドの独立運動を見てくると、「独立」 = 「平和」= 「核兵器反対」という等号が成立するではありませんか。となると、沖縄の問題を解決するための有力な候補として「沖縄独立」も考えるべきなのかもしれません。
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