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2016年6月18日 (土)

戦争と暴力はどう「正当化」されて来たか (ヒロシマ演説を読み解く――その7)

戦争と暴力はどう「正当化」されて来たか

(ヒロシマ演説を読み解く――その7)

 

オバマ大統領のヒロシマ演説を取り上げています。演説の文章を参照したい方は、[参考資料] を別のウィンドウで開いて頂ければ幸いです。なお、「変革のための4原則」の番号との混乱を避けるため、演説の段落はローマ字に変えました。

 

記憶をリフレッシュするため、「変革のための4原則」を再度、掲げておきます。

 ①変革のための力は私たちの中にある。歴史的な文脈を踏まえた上での私たちであり力である。

 Life」が基本。生命・日常生活・人生・人類--身近なところから始めて、多くの人と共鳴し、人類が一体となって行動する。

 変革は未来の世代・子どもたちのためにする。

 こうした変革を行う上で、古い枠組みに捉われない勇気あるリーダー、同時に、”Better Angels of Our Nature(私たちの中にある最善のもの)を引き出すことのできるリーダーが必要。

 

オバマ大統領のヒロシマ演説は、なぜ広島を訪れるのかという問が中心になっていることは、前回述べました。それは私たちの持つ力をどう発揮するのかという問とも重なり、その私たちの力とは何かを確認するために「私たちは誰なのか、そしてどこに行くのか」を問うことになりました。そして、これこそが広島訪問の意味なのだという点も重要です。

 

「どこに行くのか」を考える上で、「どこから来たのか」も最低限お浚いしなくてはなりません。それが歴史的な文脈を設定し歴史を振り返ることでした。その結果、前回は第二次世界大戦まで辿り着くことが出来ました。

 

こう考えて来ると、ヒロシマ演説は、私たち一人一人がそして人類が生きる上での基本的な問である「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」への答を示そうとしていることも分ります。

 

Paul_gauguin__dou_venonsnous

ポール・ゴーギャン『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』

 

淡々と戦争の歴史を振り返った先には、世界各地に戦争の惨禍を示す施設、「墓地」に相当するものがあります。戦争の悲惨さの象徴だとも言える施設ですが、それは広島だけに限られたものではないことは、段落⒞で既に指摘されています。広島の特徴があるとすればそれは、伝統的に教えられてきた歴史の中に、人類が抱え込んでしまっている矛盾のあることを示していることだ、というのが次の展開です。

 

その矛盾とは、戦争や暴力を正当化すするために使われてきた口実のリストと言っても良いでしょう。それは、全ての「人工」物に代表される、人間が自然を征服できると信じて行動してきた傲慢さです。

 

次の点は再度検証し直したいのですが、オバマ氏は宗教もこの「人工」的産物の中に入れているのかもしれません。それはともかく、宗教という名の下に暴力が正当化され戦争が起こされたこと、国家という権力が偉大な成果を生んではいるけれども同時に戦争を含む人権蹂躙の手段としても使われたこと、最後に科学技術の力が人類を破滅に導く現実的可能性を作り出してしまったことが、典型的な「人工」物です。

 

段落(j)では、「これこそ私たちが広島を訪れる理由です」(毎日訳では「これが」になっていますが、「が」が重なることと、意味としてここは強調すべき点ですので、「これこそ」に変えておきました)と総括しているのは、それまで(e)から(h)までに指摘し、その矛盾を解消する必要があるという主張を実現するためだということになります。「矛盾を解消する」と言ってしまえば簡単なのですが、これは私たちが持ち続けて来た世界観を変えることに他なりません。これを表現するのに「パラダイムの転換」という言葉も使われます。

 

世界観を変えると口では言えても簡単にできることではありません。しかし、その重要性を次の段落(k)で強調することで、つまり、慰霊碑の言葉「過ちを繰り返しませんから」を言い換えた「このような苦しみを再び繰り返さないため」の責任があり、その責任を共有してきたことに言及して、オバマ大統領は、決意を表明しています。

 

その決意は次の段落(l)で、被爆者の声やメッセージを私たちが記憶し続けることで「道義的」な想像力の向上、それは前に矛盾に満ちた「世界観」として把握されていますので「世界観の転換」と言い換えても良いと思いますが、が可能になる、つまり私たちが、慰霊碑の言葉を実現する力を持っていることを再確認しています。

 

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